【語源】日本釈名 (18) 人品(頭・鼻・心・脾・肺・腎など)

頭
「かう」は「上」なり。身のかみにあり。「へ」はやすめ字也。「しりへ」などの「へ」と同じ。
※ 「しりへ」は、後方。
形
『直指抄』曰、「かたち」は「かたまる」義也。
姿
すへてのかたち也。面體にかぎらず、惣体を「すかた」と云なり。
※ 「面體」は、面体。
魂魄
「たま」は「玉」也。貴重の意。「しひ」は「霊」也。人の神霊をいふ。
腹
「はら」は「はる」也。食すればはる也。
背
「しりへ」也。「背」はうしろなれば「しりへ」と云。「りへ」の返しは「れ」也。「しれ」の返しは「せ」也。二重返し也。
頬
「つねにあらはるゝ」也。
鼻
「はやくなる」也。人物のはじめて生ずる時、先 はなのかたちよく生ずるもの也。故に「はやくなる」と云意也。下を略す。一説、初名の意。是又上の説ににたり。「鼻」と云字を「はじめ」ともよむ。「鼻祖」と云も「元祖」の事也。又、はじめの穴と云意か、九竅の内にては、鼻はいとはやく生ず。
※ 「鼻祖」は、物事を最初に始めたひとのこと。
※ 「九竅」は、人の体にある九つの穴のこと。口、両眼、両耳、両鼻孔、尿道口、肛門。

目
「め」は「見」也。「みる」の意。「め」と「み」と通ず。一説に「みへ」也。「みへ」の返しは「め」也。
髪
「上」也。かうべの上にある也。
額
「ひたえ」也。あらはれて日にたゆる也。又、「ひた」は「常」也。「い」は「出る」也。常にいづるなり。
咽喉
「のむ戸」也。
手
「て」とは「いで」也。「いつる」也。
足
『直指抄』云、「あし」は「あしき」也。身の内のあしくきたなき所也。篤信謂、是は「はし」也。身の端也。「は」と「あ」と通ず。又、「あし」は「うしろ」也。坐する時うしろにあり。「あ」と「う」と通ず。「ろ」を略せり。『刘熙釈名』の説も亦同じ。
※ 「篤信」は、『日本釈名』の著者、貝原益軒の名。
※ 「刘熙釈名」は、後漢の劉熙が著した辞書『釈名』のこと。劉熙釈名。
掌
「手の心」也。「て」と「た」と通じ、「の」と「な」と通ず。心は中を云。手の中也。古語に「池心」といへるも、池の中をいふ。

肩
「かたき」也。堅固なり。身のかたき所也。『刘熙釈名』にも「肩は堅也」とあり。
肝
「きも」は「木」也。肝は木に属せり。「も」は助字也。一説、木の本也。
心
「こゝろ」は「こゞる」也。「る」と「ろ」と通ず。心は凝定してうごかざるを本とす。心の蔵は、こゝろのある所也。「こころふ」とを「凝草」とかくも、此意なり。「こゞるくさ」也。
※ 「凝草」は、てんぐさ(天草)の別名。
※ 「こころふ」は、ところてんのこと。心太。
※ 参考:『和漢三才図会 巻之38(ところてん)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
脾
「脾」は「水穀」をうけて制する蔵なれば、けがるゝ故「よこし」と云。「けがす」を「よごす」と云。
※ 参考:『和漢三才図会 巻之1-20(脾 よこし)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
肺
肺は気をつかさどる蔵なれば、「吹」といへる也。「ふくぶく」とかさねたるは、気のやまざる意。「し」は助字也。
※ 「フク/\シ」は、ふくぶくし。
※ 参考:『ことばのその 4のまき(ふくぶくし)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
腎
「むらと」は「しゝむらの門」也。或曰、「むら」と「もる」と通ず。「と」は「所」也。精のもるゝ所也。
※ 参考:『ことばのその 5のまき(むらと)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
眼
目中也。「ま」と「め」と通じ、「か」と「こ」と通ず。
眸
目のしり也。
眉
目上也。「うゑ」のかへしは「ゑ」也。「ゑ」と「ゆ」通ず。
白髪
「しらかみ」也。「み」を略す。
唇
「くちべり」也。「ひる」と「へり」と通ず。刘熙が『釈名』にも「唇は縁也、口の縁也」とあり。

齒
「はさむ」也。中下を略す。上下のはにて、はさみくふ故也。
牙
「かみ歯」也。「かみ」の返は「き」也。物をかむ歯也。
髭
「秀毛」也。「ひで」は、かくれなくすぐれたるを云。身の内にてひいでたる毛也。
指
「ゆび」は「およひ」也。さし出して物におよぶ也。『順和名』には「ゆび」を「および」と訓ず。「よ」と「ゆ」と通ず。
※ 「順和名」は、平安時代中期に源順によって編纂された『和名類聚抄』のことと思われます。
腮
「あき」は「あげ」也。物をかめば、上にあがる所也。又「あき」は「開」也。「と」は「戸」なり。「あく戸」也。
※ 「腮」は、あごのこと。あぎと。
筋
「す」は「すぐ」也。「ち」は「みち」也。「すぐみち」也。「筋」は、すぐにして人の行道のごとし。
腰
「こし」は「こはし」也。中を略す。身の内にて、こはき所也。
※「こはき」は、強き。
膝
「ひさ」は「ゐざる」也。膝を以、ゐざりゆく故也。「ゐ」と「ひ」と通ず。「る」を略せり。
腨
両足の「はぎ」のうしろを「こふら」と云。「こふら」は「小腹」也。「は」と「ふ」と通ず。腹のごとくにして小也。又、俗に「つと」と云。いふ意は「ものつゝむつと」の如し。
※ 「つと」は、苞萱。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション
『倭漢三才図会 上巻』
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