【水害記録】安政風聞集(2)風神

風神
夫、天地の間には肉眼の見ること能はざるもの多きが中にも、風のみは実に其形を知らず。然るに、風に神有とや。
『普書注』に云「飛廉は風伯なり、箕星は風師也」とあり。其星は北方の宿星の門にて、風を司といふては衆人の知る所也。又、飛廉神の影形を説て、身は鹿に似て、頭は雀の如く、角有、蛇尾豹文と有が故に、こゝに其図を顕はせども、実は習成ものならならんか。
※ 「飛廉」は、風の神のこと。
※ 「箕星」の読みは、きせいと思われます。
※ 参考:『妖怪学講義 第1巻』『和漢三才図会 巻之1-20(風)』(国立国会図書館デジタルコレクション)

又、北国筋、寒国には「鎌閉太知」と称へるよし。辻風に逢ふ時は、果して其人傷を蒙る。更に其形を見ず。彼の雷獣は地に落て、人に取れし事もあるより、夫に等しきものならんこと、画家が作意に鼬の体にて牙を生はせしものを見る。是、「かまへたち」を聞誤り「かまいたち」と傳聞より、如斯図をば書顕し、童蒙の目を驚かせしものならんと思はるのみ。
※ 「北国筋」は、江戸時代の行政区画のひとつ。
※ 「傳聞」は、伝聞。
※ 「童蒙」は、幼少でものごとの道理に蒙い者のこと。参考:『大日本国語辞典 巻3(童蒙)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
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