【職人図鑑】彩画職人部類(16)扇(あふぎ)

扇 あふぎ
『事物紀源』云 黄帝内傳 有 五明扇ノ之 起
今以 招 涼凬 者 周武王 所 玉 也
※ 「事物紀源」は、宗の高丞が編纂した類書。参考:『新刻事物紀原』(国立公文書館デジタルアーカイブ)
※ 「涼凬」は、涼風。

其品数多ありといへども、就中、神功皇后三韓を責たまふ時、かはふりの羽を見て、はじめて扇を作らしめ給ふは、我朝の濫觴にして、代々官家に檜扇あり。
※ 「就中」は、なかんずく。
※ 「かはふり」は、かはほり(蝙蝠)のこと。
※ 「濫觴」は、物事の始まり、起源のこと。らんしょう。

光源氏、五条あたりの夕顔も、惟光が取あへぬ用となせり。斑女が閨のかこちぐさ。やんごとなき悪路にも、都しのぶほどのゆかしさ、涼風は勾蝠にして、男をふるの中にもわりなき姿ならずや
※ 「光源氏、五条あたりの…」は、光源氏が夕顔と出会ったときのエピソードです。
※ 「斑女が閨」は、捨てられた女の寝室のこと。帝の寵愛を失った班婕妤が、わが身を秋の扇にたとえて作った詩「怨歌行」に由来する故事。はんじょがねや。
※ 「かこちくさ」は、託種。恨んだり嘆いたりするもと。
参考:『義太夫本 : 懐中浄瑠璃 3編』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「悪路」は、誤読しているかもしれません。
※ 「勾蝠」は、蝙蝠でしょうか。蝙蝠扇は夏に用いられる扇。
参考:『国史大辞典 [本編](カハホリ)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「男をふる」 参考:『倭訓栞 : 増補語林 下(ふるす)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
扇について
公家では、男性は檜扇、蝙蝠扇、女性は衵扇を用いたそうです。



※ 参考:『新脩歳時記 夏の部(アフギ)』『言海 : 日本辞書 第1-4冊(ひあふぎ)』『日本商品学(扇)』『有職故実辞典(あふぎ)』『国史大辞典(あふぎ)』『日本社会事彙 上(アフギ)』『日本辞林(ひあふぎ)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
『源氏物語』夕顔について
光源氏が病に伏している五条の乳母の家を見舞いに訪れた際、白い夕顔の花が咲く小さな家に目が留まります。そこから女童がでてきて、扇にのせた夕顔の花を従者の惟光に差し出しました。
光源氏と夕顔の物語のはじまりです。


『源氏物語図 夕顔』
※ 参考:『源氏物語 夕顔(與謝野晶子訳)』(青空文庫)
筆者注 ●は解読できなかった文字、□はパソコンで表示できない漢字を意味しています。新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖
