【生月島捕鯨】勇魚取絵詞(9)生月御崎納屋場羽指躍圖
生月御崎納屋場羽指躍圖


羽指等が髪のさま、圖のごとく、常人にかはりて、をりはけ共に最長し(をりとは曲の事を方言に然いふなり)。そは、鯨捕をり、海底にかづき、とかくして浮出るに困じて、舩に乗べき氣力なきに、形勢を見、舩上なる者、髪の束房をとりて、引揚ることあればなり。
此者共、羽指躍りとて、一部浦の組出前、御崎浦の正月九日の夜の組出祝、おなじき組上りの時、通計、三度舞●る佳例なり。こゝに載たるは、組上りの時の躍の体なり。
※ 「●る」の読み「かなづる」は、奏づると思われます。昭和初期に出版された『日本化学古典全書』では『乞る』と翻刻されています。参考:『日本科学古典全書 第11巻 第3部』(国立国会図書館デジタルコレクション)


一番親父をはじめ、三千人の羽指等順に立並び、太鼓を打囃し立れば、同音に羽指唄をうたふ。其詞に、
納屋の轆轤につなくりかけて
大背美巻ノニヤ ひまもない
イヨ ひまもない
子持まくノニヤ ひまもなや
(前後略之)
など謡ながら、「ろくろをどり」とて輪廻し躍るなり。


いづれも、相撲取を欺ばかりの益荒男が手巾を採額にし、大手をひろげ、大足を踏て舞かなで、くさ/\の祝事をいひはやし、鯨捕をりのありさまなど、まねび出たる、いといかめし。これにも定れる曲節ありて、堪能、不堪能、おのづからにやわかるらん。
あまたよりつどいて、物見する蜑のこらが、なにはのよしあしいひさだし、およびさし、目くはしゝて、さへづりあふぞ、おかしきや。
※ 「益荒男」は、強く勇ましい立派な男性のこと。ますらお ⇔ 手弱女。
※ 「くさ/\の」は、種々の。
※ 「堪能」は、深くその道に通じていること。


※ 参考:『日本科学古典全書 第11巻 第3部(生月御崎納屋場羽指躍圖)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
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