【観音霊験記 西国巡礼】第七番大和岡寺/長門国の少女

『観音霊験記 西国巡礼第七番大和岡寺 長門国の少女』

觀音靈驗記 西國順禮 第七番大和岡寺
けさみれば 露おか寺の 庭のこけ
さながら瑠理の ひかりなりけり
※ 「露おか寺」は、朝の露を「置く」と「岡」寺がかけられています。
※ 「瑠理」は、瑠璃。

長門國の少女
本尊は、弘法大師入唐の時、風波の大難を免れたる灵佛なり。
貞享のはじめ、長門國青野といふ處の某の娘、西國順禮をふかく意して、ひそかに家を出、男女三十余人乗合の舩に乗たるところ、海上にて難風に舩を砕かれ、乗合の人數残らず溺死せしが、此少女のみ、ふしぎと其浦ちかき伊嵜といふ所にあがりて、漁父に助けられて、親の家に送られければ、両親よろこび、其逐一を尋ねければ、

娘こたへけるには、
「難風に舩をくだかれて、死する覚悟して心にうかぶまゝ
今朝見れば露おか寺
と念ずる折節、帆柱に取つきけり」といふ。
かの送りたる漁父のいふには、
「吾その暁、寝て居たる戸をたゝきて、誰ともしらねど、『魚の集あり、急ぎ磯へゆけ』とありしかば、磯へゆきて見るに大風にて、魚はなく、此娘を見つけたり」と語るがゆへ、
愈、仏力を尊び、漁父に礼物を与へて帰せり。

誠に觀音の灵驗著く普門品の内
若為大水所漂稱 其名號即得淺處
もし たいすゐのために たゞよはゞ そのめうげうを
となへよ すなはち あさき ところをえん
とあるに、少しも違はざりけり。
※ 「灵驗」は、霊験。
※ 「若為大水…」は、観世音菩薩普門品(観音経)の一節。
※ 参考:『西国・秩父・坂東百観音霊験廻拝記』『西国三拾三所観音霊験記図会』『西国三拾三所観音霊験記図会』『西国三拾三所観音霊験記図会』(国立国会図書館デジタルコレクション)
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