【語源】日本釈名 (22) 人事(甦・儺・罪・喪・天晴・面白など)

甦
「よみ」は「ゆみ」也。「やみちよりかへる」也。『萬葉』に「黄泉」とかきて「よみぢ」とよめり。
咳
「しば/\ふく」なり。
交
男女交接の事を云。「と」は「戸」也。前陰を云。「つぐ」は相つゞくを云。一説に、「と」は「鳥」也。「つぐ」は「告」也。「とりつぐ」也。伊弉諾尊に「にはたゝき」と云鳥のとつぎの道をおしへつげし意也。「帰」の字を「とつぐ」とよむはいぶかし。婦は夫の家を以て家とする故、女子のよめ入するを「帰る」と云。「帰」は「交接」の意にはあらず。
※ 「伊弉諾尊」は、いざなぎのみこと。
※ 「にはたゝき」は、セキレイのこと。嫁教鳥。
※ 「伊弉諾尊に「にはたゝき」と云鳥のとつぎの道をおしへつげし」は、伊弉諾尊と伊弉冉尊の二神に夫婦の交合を教えたというエピソードのこと。
※ 参考:『広文庫 第4冊(交接)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
從
下につきて、心にかなふなり。
叛
「そとへむく」也。
嫉
「そばよりねたむ」也。
積
「あつむ」也。上略なり。「つもる」は「あつむ」也。「もる」の返しは「む」なり。
祈
「いのる」は「いなふる」也。「いな」は「否」也。罪の云分をして、神に謝する意也。
病
『神代直指抄』に「やまい」とは「やむ」と云義也。身に病あれば、百事皆止なり。眼をやめば、見る事やむの類也。

厭
「おそふ」は「物に襲はるゝ」也。又、物におさへらるゝ意。おそはるゝは、気ふさがりて通ぜざる也。おさへらるゝが如し。又、狐狸などのきたりて、むねをおさへてをそはるゝ事もあり。おほくは、のどに痰ふさがりておそはるゝものなり。
療
「薬」より出たることば也。
剃
「髪をそる」は「去」也。「さ」と「そ」と通ず。
儺
「おに」は「陰」也。陰邪の気を云。世俗、夜叉をもはら鬼と云。さにはあらず。「やらひ」とは「やる」也。「追やる」を云。『日本紀』に「やらひやる」と有。「鬼やらひ」とは、家にある陰邪の気を追やる也。又、神社に「儺追」と云事有。是も「おにやらひ」也。儺の字のこえ也。
※ 「こえ」は、ここでは漢字の音のことと思われます。
※ 参考:『益軒全集 巻之1』(国立国会図書館デジタルコレクション)
兆
うらなひの體形也。
※ 「兆」の読み「うらかた」は、占形(占方・卜兆)。
※ 「體形」は、体形。
罪
「つみ」は「積」也。悪は小なりとてなすべからず。小悪をつみて、大なる禍となる。易に云、悪つもらざれば、身をほろぼすにたらず。

健
「すく」は「直」也。つよき者は、かゞまらずしてすくに立もの也。「やか」は形容の詞也。「こまやか」「ゆるやか」の「やか」のごとし。
控
「引」より出たる言也。「ゆる」は助語也。
喰
「はむる」也。入を云。口にはむる也。鳥の「はむ」を「ついばむ」と云は、鳥の餌をはむは、くちばしにてつきてはむゆへなり。
募
告のる也。「のる」も「つぐる」意也。
樵
「こる」は「きる」也。木をきる也。
菑
荒たる野を、はじめて田畠となさんとて、たがへしてあらくわる也。「き」と「く」と通ず。あらきばり、あらきわり、両説あり。
※ 「たがへして」は、耕して。「田返す」の意。
※ 「あらきばり」 参考:『増続大廣益會玉篇大全 寅 巻二 三晝 上』『読本字引』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「あらきわり」 参考:『日本農民史料聚粋 第2巻』(国立国会図書館デジタルコレクション)
喪
「も」は「ものおもひ」也。上下を略せり。一説、古は水葬多し。其親、水底に有て、子の心やすんせず。藻を取て身にまとふ。藻は水草なれば也。両説よし。

天晴 阿那 面白
天照大神の磐戸を出玉ひし時、高天原、及、● 原の中つ國、あきらかなる事を得たり。此時、天初めてはるゝ故、「あはれ」と云。「あはれ」とは「天晴」也。今時の世俗、物をほめんとて「あつはれ」と云は、これなり。
「あな」とは、古語に事の甚切なるを「あな」と云。今の俗は「あら」と云。
「おもしろ」とは、天照大神、岩戸にこもり給ひし時はやみとなりしが、岩戸を出給ひてもろ/\の人の面明白になる故なり。『𦾔事記』第二巻、又、『古語拾遺』に見えたり。
※ 「●原の中つ國」は、葦原中国。
※ 「𦾔事記」は、古事記。
※ 「古語拾遺」は、平安時代に編纂された神道祭祀に関する資料。
参考:『古語拾遺節解:4巻【全号まとめ】』(国立国会図書館デジタルコレクション)『古語拾遺』(国立公文書館デジタルアーカイブ)
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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