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【蔦谷重三郎×喜多川歌麿】画本虫ゑらみ① 序(鳥山石燕/宿屋飯盛)

喜多川きたがわ歌麿うたまろの絵に狂歌を添えた歌合せです。出版は蔦屋つたや重三郎じゅうざぶろう、序文を鳥山とりやま石燕せきえん(浮世絵師)と宿屋やどや飯盛めしもり(狂歌師)が書いています。

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出典:国立国会図書館デジタルコレクション『画本虫ゑらみ

心に生をうつし筆に骨法を畫は画法にして、今門人哥麿が著す虫中の生を写すは是心画なり。哥子幼昔物事に細成か、たゝ戯れに秋津虫を繋きはた/\蟀蟋を掌にのせ遊ひて、余念なし。即、其生をむさほらんことを恐れてあまたゝひいましめしに、今の筆策誠に業の徳をかゝやかせしと。

※ 「哥麿」は、喜多川歌麿。
※ 「細成か」は、こまかくなるが。
※ 「秋津虫」は、蜻蛉とんぼの古名。あきつむし。参考:『大日本国語辞典 巻1(あきつむし)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「はた/\」は、バッタのこと。螇蚸はたはた。参考:『大日本国語辞典 巻4(はたはた)』(国立公文書館デジタルアーカイブ)
※ 「蟀蟋」は、きりぎりす。蟋蟀。参考:『倭名類聚鈔 5(蟋蟀)』(国立国会図書館デジタルコレクション)


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『画本虫ゑらみ

玉虫のつやをうはひ古画を辱て、車に向ふ蟷螂の鎌かりて、蚯蚓の土を穿ち、そのさひはつをたゝさんと棒ふりのふりよき圖にくらき初心、蛍の光りに此道をてらし、蜘の巣の糸口をとけと、諸君の狂哥合にたより、彫巧藤一宗が刀は、桜木にものして其起をことわりせよと乞ふにまりせてし。

天明七ひつしの冬 鳥山石燕 書

※ 「うはひ」は、うばい。
※ 「辱て」は、はずかしめて。
※ 「蟷螂」は、かまきり。
※ 「蚯蚓」は、みみず。
※ 「棒ふり」 参考:『日本風俗史 下(棒ふり)』『大日本国語辞典 第5巻 修訂(ぼうふり)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「蜘」は、蜘蛛くも
※ 「狂哥合」は、狂歌合せ。
※ 「藤一宗」は、浮世絵版画の彫師。
※ 「天明七ひつし」は、天明七年ひつじ。西暦1787年。

けふなん はつき十四日の夜 野辺にすたく虫の声きかんと 例のたはれたる友とち かたみにひきゐて 両国の北 よしはらの東 鯉ひさく庵さきのほとり 隅田のつゝみに 氈うち敷て をの/\虫のねたんつけの たかきひくきをさためんとす 故ありて酒と妓とをいましめたれは わきめより はしはむしのゑんとや いふへき なにかしの寺のねふちの声 むしの音にましりて ほの

※ 「はつき十四日」は、葉月はづき十四日。旧暦八月十四日。
※ 「すたく」は、すだく。
※ 「友とち」は、友達ともどち
※ 「かたみに」は、かたみにと思われます。互いに、かわるがわる。
※ 「氈」は、毛氈もうせん。けむしろ。
※ 「ねたんつけのたかきひくきをさためんとす」は、値段ねだんけの高き低きをさだめんとす。
※ 「わきめ」は、わき
※ 「ねふちの声」は、念佛ねぶちの声と思われます。参考:『ことばの泉 : 日本大辞典(ねぶち)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「ましりて」は、まじりて。


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『画本虫ゑらみ

きこゆるなと かのくえんしの建立ありし 姫宮の持仏堂も 思ひやられて あはれなり されは 朝市のふるものあつかひよと 人いふめれと たゝにやはとて 長𠳀子のえらひ給へる 諸虫歌あはせの跡を追て 戀のこゝろのされ歌をのはへ侍るに とかくして 夜もふけ 待し 江山風月常のあるしなけれは 地しろをせむる大屋もあらねと 草のむしろのまらうとゐはなく虫こそあるしなれとて つゆけき方に うちむかひて ねもころに ぬかつきて立ぬ これなん三百六十のひとつなかまのいやなりけらし

宿屋飯盛しるす

※ 「きこゆるなと」は、聞こゆるなど。
※ 「江山風月常のあるしなけれは」は、蘇軾そしょく東坡とうば居士こじ)の詩に「江山風月 本無常主」という行があります。
参考:『菜根譚 巻之下』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「地しろ」は、地代じしろのことと思われます。借地料のこと。
※ 「虫こそあるしなれ」は、虫こそあるじなれ。
※ 「つゆけき方」は、つゆけきかた。露に濡れて湿っぽいあたり。つゆけし。参考:『群書類従 : 新校 第七巻』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「ねもころ」は、ねもころ。心をこめて、熱心に。
※ 「ぬかつきて」は、ぬかきてでしょうか。ひたいを地面につけてお辞儀する。

※ 参考:『喜多川歌麿(六大浮世絵師決定版)』『喜多川歌麿 後編』『江戸芸術論』(国立国会図書館デジタルコレクション)



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