【語源】日本釈名 (39) 雑器(器・土産・盃・団扇・末那板(まないた)・琴など)

器
「うつほもの」也。「ほ」と「は」と通ず。其内うつほなるもの也。「うつほ」とは、其内空しく何もなき意なり。
※ 「うつほ」は、空。中が空であること。
財
「ちから」也。金銀米穀多ければ、萬の用をかなへて、人のちからとなるなり。故に財力と云。
櫃
「いつ」なり。入置たる物いづる也。「い」と「ひ」と通ず。

棺
「ひつ」は「人」也。「と」ゝ「つ」と通ず。「死せる人の入木」也。『順和名』に「ひとき」と訓せり。
車
「くる」は「轉する」意。「いとをくる」などいふがごとし。「ま」は「まはる」意。
※ 「轉する」は、転する。
※ 参考:『文法論と国語学』(国立国会図書館デジタルコレクション)
箸
「はし」は、鳥の「くちはし」をかり用たる詞也。
土産
「みやこより持来る笥」也。「笥」は食物など入る器也。「みやこのつと」ゝ云がごとし。「いゑつと」ゝも云。「家より持来るつと」なり。又、「家にもちかへるつと」也。
苞
「つ」とは「つゝむ」なり。「と」と「つと」通ず。「む」を略す。又「あらまき」とも云。「わらまき」なり。
杓
「ひさご」也。「こ」と「く」と通ず。いにしへは「なりひさこ」のほそながきを以て水をくみしなり。今も賤民はしかせり。水をくむ所大にして、手にとる所ほそきひさご有。わざとつくれる「ひさく」のごとし。
※ 「なりひさこ」は、生り瓢。瓢箪のこと。
※ 参考:『古事類苑 第46冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
盃
「さか」は「酒」也。「つき」とは飲食をもる器也。「坏」なり。「酒をもるつき」也。
土器
「かはら」は「瓦」也。土にてやきたるを云。「け」は「笥」也。飲食をもる器を「け」と云。

槖■ (■は竹+合+冂+卄)
「ふきかは」也。風を入て、ほそきあなより吹出させ、火をおこす器也。皮にて作る。
縄
「なをき」なり。縄はすぐなる物なり。匠人の木をけづるも、すみ縄を引て正くするなり。
※ 「すぐなる」は、直ぐなる。
團扇
「うち」は「うつ」也。「わ」は「輪」也。まるき意。「うちて風をいたすわ」なり。
※ 「團扇」は、団扇。
嚢
「ふくろ」は「ふくるゝ」也。物を入れば、ふくるゝなり。「る」と「ろ」と通ず。
※ 「ふくるゝ」は、膨るる。
鍥
「なぎがたな」也。「彎刀」ともかく。
坏
土器也。「と」と「つ」と通ず。是、音を用て和語とせり。此類も亦ためしあり。
鏡
我おもてを「かんがへ見る」なり。
筬
「苧をさす」也。又「おほくさす」なり。
末那板
「末那」は「魚」の梵語也。「魚をきる板」なり。
ますみの鏡
「真澄鏡」也。まことにすみて、明かなる也。「ますかゝみ」とは「み」を略せり。
綱
「つな」は「つなぐ」なり。
鞠
「丸」なり。其形まるし。「ろ」と「り」と相通ず。

針
「ほり」也。「は」と「ほ」と通ず。物を「ほりうかつ」也。又云、「は」は「ほそき」也。「ほ」と「は」と通ず。下略也。「り」は「とがり」也。上略なり。「ほそくとがる」也。
御幣
「み」はたうとぶことば。「て」は「手」也。「くら」は「座」也。わが手にもちたる幣は、神のやどる座也。
※ 「たうとぶことば」は、尊ぶ言葉。
席薦
「たゝみかさぬる」意なるべし。『日本紀』第二神代巻下に「八重たゝみをしきて」とあり。上古より有し物なり。
※ 「八重たゝみをしきて」は、八重畳を敷きて。
揷頭
「かみにさす」なり。
笄
「かみさし」也。
御統
「み」はたうとふことば。「す」は「つ」と通ず。「つらぬく」なり。玉をつらぬきて、其かたちまるき也。
琴
「こゑいと」なり。中を略す。「聲あるいと」也。此ゆへに「琵琶」は「びは」のことく云、「筝」はさうのごとく云。「琴」はきんのごとく云。世にひくは筝こと也。琴はまれにあり。みじかし和琴は「やまとごと」と云。
※ 「聲」は、声。
柱
「ことのぢう」也。「ぢ」は「柱」也。「う」を略せり。「琵琶」にては「柱」と云。「こと」にては「ことぢ」と云。「和琴」にては「つく」と云。
※ 「柱」の読み「コトヂ」は、和琴や筝の胴の上にたてて弦を支えて音の高低を調節するもの。琴柱、箏柱。
筆者注 ●は解読できなかった文字、□は欠字を意味しています。
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