『料理綱目調味抄』(12) 雜の部(潮煮/定家煮/阿蘭陀煮/杉焼/織部豆腐/芹焼など)

雜の部
潮烹
甘湯、塩仕立。にへ立て、酢を少加ふる事、氣味出てよし。漿不 用。酒の過たるも悪し。鯛は切目、小鯛をも。鱸、鰈、鰹、鮭、きすご、ゑび、鯛の摺身。取合、紫そ、めうがたけ、水松。吸口、柚、木のめ、葱、青山椒。
一書、鯛のうしほ煮、うす白水に、だし、酒、塩を加ふべし。鯉には、菊の葉か、柿の若葉加ふべし。何れも液たすべし。
※ 「雜」は、雑。
※ 「氣味」は、気味。ここでは、香りと味という意味と思われます。
※ 「白水」は、白米のとぎ汁のこと。参考:『大日本国語辞典 巻2(白水)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「漿」は、醤油。
※ 「めうがたけ」は、茗荷竹。
※ 「水松」は、海藻の一種。海藻ミル。水松。海松。

船場煮 熬とも
大略、うしほ煮のごとく、多は塩魚に大根、ふき等を加。鯛、鱸、鰹、鮭、鱒、鱪、鱈、鰤。吸口、右のごとし。
准麩 熟鳬
漿仕立にて、鳬にかぎらず、何鳥にも焼麩、牛蒡、茸類を加模したる也。
※ 参考:『俚言集覧 中巻 明治32こ−に増補(准麩汁)』『日本農民史料聚粋 第6巻(熟鳬)』『あられ酒(熟鳬)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
熬鳥
雁、鴨の油皮を酒にていり出し、たし漿にて加減し、身は後に入て烹過ざるよし。取合、葱、芹、割山椒。
醬熬
一書、雉子、又、何鳥にても身をかう色にあぶり、白水にて摺のべ、みそに用て、汁に ● べし。
※ 「かう色」は、香色。黄色みを帯びた薄赤色。
鹿煮
雁、鳬の身斗を生漿(酒少加)にて煎、無 加味。おろし大根か、さんせうのこ、葱、にんにく、刻て上にも置。
※ 「斗」は、ばかり。
※ 「さんせうのこ」は、山椒の粉。
定家烹
鳬の料理、骨ともに切を云。調味はおなじ。
蒸鳥
鳬の骨わたをぬき、其跡へ魚の摺身をこめ、能 縫合せ、丸ならよくむし、糸をぬき、筒に切り、山葵みそ掛る。平皿物。
※ 「能」は、よく。
阿蘭陀煮
鯛 如常洗、丸ながら、油あげにして後、酒斗にて久しく煮れば、骨も 如綿 なる。後、漿にて加減。取合、葱、粒胡椒。
※ 「如綿」は、綿の如く。
杉焼
杉の箱、又、●● にも。和皷にどぶろく加事もあり。鯛。取は、鱸、鯒、鮭。取、葱、能 茹て、又後、卵、餅を入煮。
※ 参考:『発句案内:四季部類(杉焼)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「和皷」は、和味噌。袱紗味噌みそ。二種の味噌を合わせた合わせ味噌のこと。
※ 「どぶろく」は、濁酒。清酒と同じ方法で造った醪の滓をこしとっていないもの。白く濃厚な濁り酒。参考:『大日本国語辞典 巻3(どぶろく)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「取」は、取合。
※ 「能」は、よく。
鍋焼
調味、右におなじ。杉の板を入て煮れば、杉焼に似る。何れも吸口、柚、割さんせう。
※ 「割さんせう」は、割山椒。

貝焼
茶碗焼 てんほ焼
漿仕立。だし、酒、加。卵はり仕様、加味の初を先にしるにて ●煮、具に入、又、にじるにて卵をとき、跡より具に入る。
茶碗(但蒸)焼も、てんほ焼も同前。生鳥、魚、同摺身、蚫、蚶、たいらぎ、みるくひ、かき、ゑびの類。取、くわへ、山のいも、木くらげ、やきふ、焼くり、ぎんなん、葱、芹、ふきのたう、割山椒。蚶焼は、蚶のからにて蚶の血を加ふ。
※ 「てんほ焼」は、伝法焼のことと思われます。焙烙に葱を敷いて、鰹や鮪などの刺身を並べて焼いたもの。参考:『大日本国語辞典 巻3(傳法焼)』
※ 「くはへ」は、慈姑のこと。
※ 「みるくひ」は、みる貝のことと思われます。
穀焦
粘味噌也。鯛は造り重ねても。取、石茸、ぎんなん、焼栗、摺身は火取、花蚫、花いか、蚶、蛤、鰻 は焼て、鯉、鮒。精進は焼麩、焼たうふ、にんじん、山のいも、くわへ、かぶら、茸類、きくらげ、笋、牛蒡、蓮根、割山椒。
※ 参考:『日本料理法大成(コクシヤウ)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「火取」は、火であぶること。
糟煮
鰤、たら(塩)、塩鯛、塩鮭、塩ます、しゐら、いはし、こにやく、つまみ●あけ、水な、ひりやうす。
※ 「ひりやうす」は、飛竜頭のことと思われます。
織部豆腐
豆腐一挺、四に切、焼、中を■子にて割め付る。丸焼は、一挺の角をとりて丸くして、こがし焼にする。木口より筒に四つに切る。だしに、酒、漿、うすき加減に汁多く、釜に中蓋し、炭火にて久しく煮る。後に加減、花かつほ、くるみ、山葵、からし、擦大根か。[■は扌+夕]
※ 「■ [■は扌+夕] 子」は、杓子。
※ 「割め付る」の「め付る」は誤読しているかもしれません。
湯豆腐
湯に薄く葛を引てよし。世世商家に有。箱たうふ、よせ豆腐よし。あんをよくすべし。わさび、からし。
※ 「世世」は、代々。世世。
饂飩豆腐
葛湯を炭火にて能たゝせ、豆腐ほそく切、人数ほど ●入、浮るをあみ■子にて椀に入、あつきゆをさして出す。又、汁にうすく葛引。[■は扌+夕]
※ 「能」は、よく。
※ 「あみ■子」は、網杓子。

皷煮豆腐
皷をすり、先豆腐をうすく切り、漬置、暫して、炭火にて煮立れば、いつ●も柔にて ●● になくみてよし。
釣豆腐
薬灌豆腐とも云。小き田楽にして焼き、やくかんに入れ、炭火にて久しく煮、あつき漿を掛る。からしか、おろし大こん。
※ 参考:『仙台方言音韻考(やくはんどうふ)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
■豆腐 [■は月+竜]
近世、商家に有。おぼろとうふをだし醤油、酒の加減。しるをにへたゝせ入、にたてを出す。山葵、おろし大根。
麩
錦麩、土佐麩、相良麩、柔か麩、世年商家なる物、皆よし。煮様は前に註。生麩の通りよし。
※ 「世年」は、誤読しているかもしれません。
芹焼
地を堀り、石をならべ、其上にて火を焚、焼石の上に芹を置、上を ●、蒸焼にし、漿に油酢を加かくる。
煎菜
水菜は、かふの大なる物也。上かはになりたる茎を二通り斗むしり取。中側の ● に細き斗を二三寸に切、湯をたゝせ打込、其まゝ上てたし、酒、漿の汁をにへたゝせ、茹たる水な打入、かき廻し其まゝ出す。水なは、正二日用。鶯菜 江府の笠井なは、かふともに、一度酒にていり置、汁をにへたゝせ、菜を打入て、そのまゝ用。からしかけてよし。
※ 「かふ」は、蕪でしょうか。
大根
ふろ吹は、切て釜に立に詰て、大根をおろして間々へ入れ、則ゆで汁とす。漿、葛入、又、あんか、みそあんもよし。
右は大様 羹にして、煮物、煮肴に可 用也。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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