見出し画像

【観音霊験記 西国巡礼】第五番河内藤井寺/藤井安基

出典:国立国会図書館デジタルコレクション
観音霊験記 西国巡礼第五番河内藤井寺 藤井安基

觀音靈驗記くわんおんれいげんき 西國さいこく順禮じゆんれい だい五番 河内藤井寺
  まゐるより たのみをかくる 藤井寺
    花のうてなに むらさきのくも

藤井安基ふぢゐやすもと
安基は、大和國やまとのくに賀留かるさと人にて、放埓はうらつ邪見じやけんものなり。或時あるとき河内かはちの平石ひらいしへんにて、鹿しかかり(■は犭+䑕)、その山のだういつて、佛具ぶつぐ俎板まないたたきゞとして、そのしゝむらくらひしが、にはかして、火車くわしやのり地獄ぢごくせめにおちいりしところ、童子どうじ一人あらはれて、これすくはんとする。

獄卒ごくそつども「かれ仏道ぶづだうけがせし逆罪ぎゃくざいの者ゆへのがるべからず」と。

※ 「しゝむら」の読み「しゝむら」は、肉叢ししむら。肉の塊のこと。

火車に乗
地獄の責におちいりし

童子かさねて「罪人つみびとといへども、かれ一度ひとたびわがすむ 長谷寺あhせでら再建さいこん材木ざいもくを引たる善根あり。すみやか閻浮ゑんぶにかへし給へ」ときこへしかば、とみいきかへり、それより改心かいしんして南都ならのぼり、行基ぎやうぎ菩薩ぼさつ弟子でしとなりて、長谷観音をきざみたる灵木れいぼくあまりをもつて、此尊像そんぞうつくりたるを、聖武帝しやうむてい、安基が因縁いんえんにて藤井寺といへども實は金剛寺といふ。まことに不思ぎの灵驗思見るべし。

※ 「獄卒ごくそつ」は、地獄で死者を責める鬼のこと。
※ 「閻浮ゑんぶ」は、人間界のこと。閻浮提えんぶだい
※ 「灵木れいぼく」は、霊木。
※ 「實は」は、実は。


※ 参考:『西国・秩父・坂東百観音霊験廻拝記』『西国三拾三所観音霊験記図会』『西国三拾三所観音霊験記図会』『西国三拾三所観音霊験記図会』(国立国会図書館デジタルコレクション)



筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖