豆腐の工
豆腐の工

豆腐の工 附 豆腐皮造法 六條造法
豆腐は我邦中世に始り、今毎家雑菜日用の品たり。普通、一釜二十挺仕込みとす。即ち、大豆四升より五升●、水三斗五升より四升許り。(水は尚ほ多きを嫌わざれども、過量なれば豆腐締ま●●)塩滷汁五六合許を適量とす。(多きに過れば豆腐硬し)
先づ大豆を「カゲ桶」(豆を■す桶 [■は氵+區] )に入れ、水適宜に澆で(大抵豆面を被ふこと一寸許)、廿四時間許り漬置き、能く膨張して軟かに成りたるを候がひ、石碾に磨く。碾は、豫て木臺の上に按し。「挽輪」(碾に套る底無き桶の名)を装ひ「カゲ桶」を碾の側らに置き、木臺の下貫の上へ「豆漿桶」を載せ、碾より垂れ落る豆漿を受入しむ。

イ カゲ桶 ロ 挽輪 ハ 石碾 ニ 木臺 ホ 豆漿桶 ヘ 小銅𣏐
而して、銅𣏐を以て豆と水を適宜に 掬 て碾に入れ宛磨けば、豆漿、糊の如くに成り滴て 桶 中に溜る。(此際だ一人竈の下を焚く。是を釜前と云)を盡く磨終て釜中に移し入れ、水二斗許り注ぎ入れて煎沸せしめ、泡沫の高く生ずるに至り。
先づ冷水一二杓を釜中に澆ぎ、次に油垽一二滴と洗箒(或は棒)に點て撹拌せば、泡自から消るべし。蓋を覆ひて煎沸し、再び泡の起るを候ひ、亦油垽を點ずること前の如くし。(此時速くに火を減ずべし、否らざれば焦着也)

銅柄杓を持て其濃汁を布袋に盛に「箱漏斗」(其製図の如し、裡に棧有て釜の縁に掛り辷り動くを防ぐ)を袋の口へ半ば挿し、豆汁の袋外へ溢れ出るを防ぐ。酌んで袋に充れば、釜中へ銅柄杓にて水六七升許汲入れ撹拌し、再び 竈下 を焚き、其煎沸するの際だに、袋中の豆汁を「換出桶」へ搾り出すこと図の如し。

ニ 箱漏斗 カエダシカシ 長一尺横五寸縁幅二寸 ホ 筏


又、豆汁を汲入て搾り、次いで水(前同量許)を釜中へ注ひで煎沸し、搾ること前の如くなれば、豆汁は盡く桶中に出て滓は袋の中に残る。(●謂雪花菜也、菜の用に充べし)●此の時桶内の豆汁未だ凝らず。

即ち熱に乗じ塩滷汁一合許を小柄杓にて注入し、 棹 を以て ■ (長二尺二三寸許)徐々に 撹 ぜ(「口張」布名)を覆せ霎時置き、又二合許入て撹ぜ、次で亦二三号許入れ「口張」を覆せ置き、稍ゝ凝固んとする時、「湯汲蘿」(通常の亀甲笊なり)を豆汁の面に載せ、適宜の小石を重に置ば、蘿の漸やく壓入するに従ひ、豆汁の餘水、蘿の中に渗入するを両三回汲去り、次に桶を稍斜めにして蘿を入れ、尚●餘の水を汲去て後ち「搾匣」に移し入る。

其装置は先づ「搾匣」の上へ框を按し、匣中に「敷布」を敷き、布の四辺を匣の外に餘して垂し置き、銅杓 にて豆汁を框の面ら迄汲入れ、垂たる布にて四方より包み、其上へ「竹簾」を敷て「棧蓋」を載せ、重石を置けば、「搾匣」の周囲に設けたる小孔より、豆汁尚ほ含む●の水、注出するに隨ひ、棧蓋は漸々に框の面より下に陷入べし。
此に於て「棧蓋」を外し框を去り、匣の両端に 「 定木 」を置き、又「棧蓋」を載て搾ること前の如くし、蓋の棧「定木」と平均するに至り蓋を取り除け、「搾匣」を「大水槽」の中に移し入れ、先づ匣を脱き去り「敷布」は暫次水中に置き、豆腐の稍や冷るを待て開放き取れば、即ち技●全く成り。豆腐の匣の底に面したる部、自から條を生ず。此條に従つて包丁(黄銅製刃なし)にて切れば二十挺と成る。

〔豆腐皮造法〕
豆腐を製する時、釜中の面上に皮膜を凝結こと、檀紙の如くにして黄色なり。毎に是を取れば則ち豆腐佳ならざる故に、頻りに釜中を撹回して膜の結らざるを要する也。若し豆腐皮を製すせんと欲するには、方形の鍋を 竈 に掛け、豆腐汁を入れ、|塩滷汁《にがしほ》を投じて煮れば、速かに皮膜を結ぶべし。是を剥し取れば隨つて亦膜を結ぶ。
数回 斯の如くして膜、数枚を取て盡るに至り、鍋底に焦着きたる豆腐を刮げ取る。之を膜屑と云。(又煮て賤食とす。滷汁多く、毒有て宜しからず)豆腐皮を油に揚て食ふ。味美にして生膜に優る。

〔六條造法〕
夏土用中に生豆腐一箇を取り、切て六つとし食塩を■[■は米+参]し、晴天に曝し乾かせば其色、黄白色と成て硬きこと木片の如し。毎に是を貯はへ羹汁の上に入れば、其味花鰹に劣らず。最も僧家の佳肴なり。但し製し曝す時、雨に逢へば忽まち腐る。故に晴天を候つて乾かすべし。膜を取たる鍋底の硬き豆腐を以て、偽り製したる者は、滷汁多くして毒あり。食ふ可からず。
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Photo by mominaina
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