【蔦屋重三郎×喜多川歌麿】絵本百千鳥(1)鷹×百舌・燕×雉子・鶉×雲雀など
江戸時代後期に出版された喜多川歌麿の絵に狂歌をつけた歌合せです。序文は狂歌師の宿屋飯盛(石川六樹園)と思われます。出版は蔦屋重三郎。
🐦

この鳥つくしは とりかなく あつまに名たかき 鳥山なにかしか 弟子なる歌麿かゑかきたるなりけり をりから人々 きあつまりて これかかたへに 歌かきつけてん たゝし 常さまなるは めつらしからす 恋のこゝろに よみてましとて とり/\うち案しけるか とみにおかしき すかたともをそ ひねりいたしつる これにもれたる鳥ともゝ おほかれは 猶すき/\に 繪のならんに したかひて ものせましとて おの/\あかれて たちさりぬ これかはしつくりのなきを こゝろもとなかる人 あれは けにときこそと いひて あやめもわかぬ 宵やみに かはほりのつはさ うちひろけつゝ 鳥つくしのはしめに 筆をそとりぬる 六樹●
※ 「あつま」は、東。
※ 「鳥山なにかし」は、鳥山某。江戸時代中期の浮世絵師、鳥山石燕のこと。
※ 「歌麿かゑかき」は、歌麿が絵描き。喜多川歌麿のこと。
※ 「これかかたへ」は、これが片方。
※ 「これかはしつくり」参考:『浪速叢書 第1』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「あやめもわかぬ」は、文目も分かぬ。暗くて物の区別がつかない様子のこと。
※ 「かはほりのつはさ」は、蝙蝠の翼。
※ 「六樹●」は、江戸時代後期の狂歌師、石川六樹園(石川雅望、宿屋飯盛)のことと思われます。参考:『先哲像傳 第4冊(石川雅望)』(国立国会図書館デジタルコレクション)

鷹
鷹ならは うき名の外に はつとたつ
小鳥もをのか ゑにしなるへき
赤松金雞
百舌
ひからびし 思ひは百舌の 草くきの
つつかけものに なるそくやしき
百喜齊
※ 「ゑにし」は、餌と縁の掛け言葉でしょうか。
※ 「百舌の草くき」は、百舌の草潜。百舌が草のあいだにくぐり入ること。参考:『大日本国語辞典 巻2(草潜)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「つつかけもの」は、突掛物(投げ捨てられて顧みられない物)と 突掛者(人を頼みにして物事を投げやりにしておく者)の掛け言葉でしょうか。参考:『大日本国語辞典 巻3(突掛者)』(国立国会図書館デジタルコレクション)

燕
つはめにも 身をかへてまし 下紐を
ときはになかく ねんと思へは
酒月米人
雉子
あふときは けんもほろゝな 返事して
いひ出ん事の はねもすほめり
桐一葉
※ 「ときはになかく」は、解きには長く(下紐) と 時には長く(寝る)の掛け言葉でしょうか。
※ 「けん」は、雉子の鳴き声のケン と けんもほろろの掛け言葉になっています。

鶉
うつらふの またら/\と くとけとも
粟の初穂の おちかぬる君
つふり光
雲雀
大空に おもひあかれる ひはりさへ
ゆふへは落る ならひこそあれ
銭屋金埓
※ 「うつら…粟の初穂」 粟が熟する晩秋に鶉が群れをなしてやってくることを「粟鶉」といい、歌や絵の題材にされたそうです。参考:『蔬果と芸術(鶉と粟の縁)』『妙技花鳥画譜(粟鶉)』『東山画集 第1 花鳥』(国立国会図書館デジタルコレクション)

ゑなか
人の手に かはれよとて ちきらしな
たとへゑなかの ゑにつきるとも
籬菊丸
めしろ
口舌して おし出されし みつふとん
つらきめしろの 鳥はものかは
田原舩積
※ 「口舌」は、ここでは男女の痴話げんかを指していると思われます。くぜつ。
※ 「みつふとん」は、三蒲団。江戸時代に最上位の遊女が用いた三枚重ねの敷蒲団のこと。

鷄
かけ香の 丁子の口は とつれとも
まかせぬけさの 鷄の舌
宿屋飯盛
頬白
色ふくむ 君かゑくほの ほう白に
さしよる恋の とりもちもかな
芦邊田鶴丸
※ 「かけ香」は、調合した香を小袋に入れたもの。掛香。
※ 「鷄の舌」は、鶏舌香。丁子の類の薫香の名前。

四十雀
四十からと 君に見えてや いたゝきの
色にはちよと つらき御返事
寶野敦丸
こまとり
こまとりの 名のみこまなる 思ひかな
恋の重荷を やるせなき身
麓近道
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖
