【女大学宝箱】(25)白粉/頬紅/お歯黒/黛(まゆずみ)/笄(かんざし)

女の白粉をつくるはじめは、殷の紂王と申帝の后 妲己といひしが、鉛粉をかざりとするといへる。即、此「おしろい」也。
わが朝には、持統天皇六年、沙門観成といへる人「鉛粉」をつくれるがはじめなり。
※ 「鉛粉」 参考:『故事成語大辞典 四版(鉛華)』(国立国会図書館デジタルコレクション)

もと白粉には水銀を釜に入てやく。その家を「釜本」といふ。
おしろい、京をもとゝするゆへに「京白粉」と称ず。袖岡越中を第一といふ。つねに「白粉」とは男ことばなり。女は「おしろい」といふべし。白粉もあしきは、土にてつくるなり。
※ 「沙門観成」 参考:『事物原始一千題(鉛粉)』『衣服と流行(白粉)』『男女必携容儀之栞(臙脂白粉起原及び其使ひ方)』『日本書紀 30巻 [15]』(国立国会図書館デジタルコレクション)

女の燕脂をつくることは、これも妲己、燕といへる所の紅花をとりて脂となして、面をうるはしくせる故に「燕脂」を名とせり。
頬紅は、呉の孫和といふ人、鄧夫人といふ美女をてうあひせしに、水晶の如意をとりあつかふとて、あやまりて頬にあてゝきづつきて見えたれば、醫師、白獺髓を膏にしてつけたり。そのきずの痕あかくのこりて、うつくしかりけるを、よの女まねて紅をつけたるよりはじまれりとぞ。
末摘花といふは、紅花のことなり。
※ 「てうあひ」は、寵愛。
※ 「きづつきて」は、傷つきて。
※ 「獺」は、カワウソの別名。
※ 「白獺髓」は、白いカワウソの骨髄のこと。参考:『故事熟語辞典(白獺髓)』『広文庫 第7冊(頬紅)』(国立国会図書館デジタルコレクション)

五倍子、鉄漿に和して歯を染ること、その初しれず。東夷の風にて、身を文にし、歯を黒くすることあり。其遺風ならん。しかれども、ふしかねは、歯をかたくするくすりなれば、あしからざるべし。
又、眉をそりて黛をつくること、もろこし秦の代に始るとなり。又、唐の玄宗皇帝の時、『十眉の図』とていろ/\のもやうあり。
櫛笄をさすも、女媧の女、竹を笄とするに初りて、其のち堯舜の時に、銅、象牙、玳瑁を以て、こしらへけるといへり。今世にその品多くなれり。
※ 「十眉の図」 参考:『日本画談大観 上・中・下編(十眉)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「女媧」は、三皇五帝の三皇のひとり女媧氏のことと思われます。参考:『十八史略読本 巻1』『十訓抄詳解 上巻』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「玳瑁」は、ウミガメの甲羅、べっこうのこと。
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