【絵本野山草】(26) 牡丹花(ぼたん)


牡丹花
三月中、花咲。花に大白、大紅有。紫、うす紫有。うす紅、そこ紅、口紅、其外、万々有。牡丹は、惣躰を九品に分て見るべし。
九品といふは、一位・二形・三色・四重・五実・六蘃・七葩・八葉・九木、也。一に、位といふに四等の分有。一位未見。二位、三位をよしとする。四位は有ふれたるとぞ。
※ 「蘃」は、蘂。
※ 「有ふれたる」は、ありふれたる。

葩ヒラ内外トモ モトヨリクマ
二に、形と云に五様あり。富貴、艶麗、厳格、乱雜、枯槁なり。富貴艶麗をよしとす。
※ 「枯槁」は、草木が枯れること。
三に、色に二種有。咲出あかみたる様なるは「珠玉咲」也。青みたるやうなるは「碧玉咲」也。珠玉咲はつや有て、碧玉咲は花につやなし。又、是にたがへるも有べし。醉あり、しみ有。醉しみあるは、上花の外なるべし。
四に、重有。五ツ葩より十五葩に至て「一重」とす。廿葩より四十葩有を「八重」とす。四十五葩より百葩までを「千重」とす。百葩の外「万重」とす。「八重」「千重」をよしとす。

地ニクシキ ウスワウド カゲ エンシクマ
木ハ子ツミグ スミカスリ 朱スミ クマ
五に、実に形容大小高下赤白有。白に黄白有。銀白、青白有。赤に薄赤、木瓜色、濃赤、薄紫、こい紫、黒色あり。形、小瓶子有。実のかしら、五つにわれ、七つにわるゝあり。白は銀白、紅は濃有。小瓶子をよしとす。芥子実、鈴実ともいふ。
六に、蘃有。すべて黄なり。淡濃・多少・長短あり。黄にして小をよしとす。
七つに、葩は厚圓薄缺有。揑縮あり。ひらめく、つぼむ。厚圓にしてつぼむをよしとす。
※ 「圓」は、円。
八に、葉に大小・長短・頗縮・弱垂・圓尖あり。其いろ、紫、碧、淡濃あり。細長にしてつよきをよしとす。兼たる色をよしとす。
九、木に強直なるもあり。弯曲なるもあり。のびやかに、ほそく直なる有。すなおにのびやかなるをよしとす。

賈躭が『花譜』云、牡丹 唐人 謂 之を木芍藥と 。
※ 「賈躭」は、唐の政治家。
※ 「花譜」は、賈躭が編纂した『百花譜』のことと思われます。参考:『花と芸術』(国立国会図書館デジタルコレクション)

花苞 ハナツボミ
歐公が『牡丹譜』に、有 九十餘種 。又、易州進奉十九種、今時は則名類 又 多。坡云、看 牡丹を 法 當 在べし 午前に 過ときは 午を 則 離披す。此花分て接、 當 於 秋九月に 移植、當 於 開花の時に 舒元輿 有 『牡丹賦』 丘璿 有 『牡丹榮辱志』
※ 「歐公が牡丹譜」は、北宋の欧陽修が編纂した『洛陽牡丹記』のことと思われます。もしくは、南宋の陸游が編纂した『天彭牡丹譜』のことかもしれません。参考:『洛陽牡丹記1卷附天彭牡丹譜1卷』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「舒元輿」は、唐の詩人。
※ 「牡丹賦」は、舒元輿が著した書。
※ 「牡丹榮辱志」は、丘璿が著した書。『牡丹榮辱志』(CiNii)

白六サキヨリ エンシクマ
『開元遣事』
牡丹は、花木の妖也。明皇の時、沈香亭の前 木芍藥盛に開く。一枝両頭、朝には深碧、暮には深黄、葉粉く、晝夜の間、香艶異。帝の曰く、此 花木の妖也。賜 楊國忠に 。
※ 「開元遣事」は、五代十国時代に編纂された『開元天宝遺事』のことと思われます。参考:『開元天宝遺事』(国立公文書館デジタルアーカイブ)
※ 「明皇」は、唐の玄宗皇帝のこと。
※ 「沈香亭」は、玄宗が政務を行った興慶宮に作られたあずまやで、周囲には牡丹が植えられていたそうです。
※ 「晝夜」は、昼夜。
※ 「楊國忠」は、唐の政治家、楊国忠。玄宗皇帝に寵愛された楊貴妃の親類にあたります。
※ 参考:『本草通串 第19』『草木栽培書』(国立国会図書館デジタルコレクション)
筆者注 ●は解読できなかった文字、□はパソコンで表示できない漢字を意味しています。
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