【語源】日本釈名 (27) 蟲類(蟻・螽・螢・虵・蟷螂・蝦蟆・恙など)

虫
「虫」は「蒸」也。湿熱の気むして生ず。
※ 参考:『古事類苑 第49冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)

蟻
「あつまり」也。おほくあつまる虫也。中の二字を略す。
※ 参考:『広文庫 第2冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
螽
「いねかむ」也。稲をかむ虫也。「か」と「こ」と通ず。「む」を略す。
螢
「ほ」は「火」也。「たる」は「垂」也。「垂」は下へさがりたるゝ也。
蝉
「せみ」は「せん」也。「む」と「み」と通ず。音を以訓とす。此類多し。
※ 「以」は、以て。
虵
『順和名抄』曰、「『兼名菀』云一名は「反鼻」。今案、是音を以て訓とせしなるべし。或「はむ」の意なるか。
※ 「兼名菀」は、中国南北朝から唐の時代の類書『兼名苑』。
※ 「虵」の読み「へみ」は、ヘビのこと。
※ 「はむ」は、食む。
※ 参考:『大日本仏教全書 150』(国立国会図書館デジタルコレクション)
蝮
是亦、「反鼻」の音を以、名とせるか。若しからずは、人をはむ故なづけしならん。
※ 「はむ」は、食む。
蚊
「かむ」也。人のはだへをかむ虫也。「む」を略す。
※ 「はだへ」は、肌。はだのこと。
蚤
「のむ」也。人の血をのむ虫也。
虱
「しらのみ」也。「の」を略す。色白くして、人の血をのむ虫也。
蟷螂
人のいほをしりて食ふもの也。『順和名』には「いほむしり」と訓ず。
※ 「蟷螂」の読み「イホシリ」は、イボジリ。疣毟。かまきりの古名。
※ 「人のいほをしりて食ふ」は、カマキリに疣をかじらせて治すという俗信のことと思われます。
※ 参考:『古事類苑 第49冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
蝦蟆
かへるは外にすつれば、又もとの所に必かへるもの也。
※ 「かへる」は、蛙。
※ 「すつれば」は、捨つれば。

蟾蜍
「ひき」は「ふく」也。「ふくるゝ」也。ひきかへるは、人ふるればふくるゝ物也。ふくるゝかへる也。是ももとの所にかへる物也。
※ 「ふくるゝ」は、脹るる。
蜈蚣
其手、左右にむかへり。「むかひ手」なり。
恙
「つゝ」は「土」也。「ち」と「つ」と通ず。「か」は「かむ」也。上古の人の家なき時は、穴に居て野にをる故に、土中より虫出て人のはだえをかむ。今何れの虫と云事をしらず。但、一物にはかぎるべからず。あまたの虫をさして云べきか。『尓雅翼』と云書には「上古草居してへびをうれふ」といへり。理まことにしからん。
※ 「尓雅翼」は、南宋の羅願が著した『爾雅翼』のことと思われます。
※ 参考:『広文庫 第13冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
蜘蛛
「かむ」也。音相通ず。虫をかむもの也。人をもかむ事あり。醫書に見えたり。一説に「こもる」也。「こ」と「く」と通ず。「る」を略す。いゑをこしらへてこもる虫也。又、「くものい」は「いと」なり。くもを「さゝがに」と云。「さゝ」は「小」なり。小くして、かたちかにのごとし。
※ 「くものい」は、蜘蛛の囲。蜘蛛の巣のこと。
※ 「さゝがに」は、細蟹。蜘蛛のこと。
水母
目なき故に「くらき」也。「き」と「け」と通ず。古語にも「水母に目なし、蝦を目とす」といへり。
蚯蚓
「み」は「目」也。相通ず。目のかたちあれども見えず。故に、●ゝずと云。

蜻蛉
「かける」也。飛かける虫也。蜻蜓は飛羽也。
※ 参考:『古事類苑 第49冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
蜂
「はりさし」也。「し」と「ち」と通ず。
※ 参考:『古事類苑 第49冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
蚍蜉
ひをむしは、朝に生じて夕に死す。「日おはるむし」なり。
蝙蝠
「蚊を欲する」也。「ほりする」は「このむ」也。「欲」の字を「ほりする」と『萬葉』によめり。此物、蚊をこのみて食す。
※ 「ほりする」は、欲りする。
※ 「欲の字をほりすると『萬葉』によめり」について、いくつか掲載します。
見まく欲り わがする君も あらなくに
なにしか来けむ 馬疲るるに 大伯皇女
見まく欲り 思ひしなへに かづらかけ
かぐはし君を 相見つるかも 大伴家持
古の 七の賢しき 人どもも
欲りせしものは 酒にしあるらし 大伴旅人
蜥蜴
「井をもる」也。村民の井の中にある虫也。此虫、井にあれば水きよしと云。又、「守宮のしるし」とは是にあらず。家の壁にある「やもり」の血をぬる事なり。
※ 「守宮のしるし」 参考:『続燕石十種 第2』『新撰俳諧辞典 増訂』(国立国会図書館デジタルコレクション)
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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