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【観音霊験記 西国巡礼】第三番粉河寺/渋川左太夫

出典:国立国会図書館デジタルコレクション
観音霊験記 西国巡礼第三番粉河寺 渋川左太夫

觀音靈驗記くわんおんれいげんき 西國さいこく順禮じゆんれい だい三番さんばん 粉河寺こかはでら
  父はゝの めぐみもふかき 粉河寺こかはでら
    ほとけちかひ たものしきかな

渋川しぶかは左太夫さだいふ
左太夫さだいふ河内かはちものにて、ひとり大病たいびやうにうちふし、医藥いやく百計なにくれつくせどもしるしなく、父母ふぼかなしみにたへかねて、大悲だいひ施無畏せむい一心いつしんしんじければ、不圖ふと十四五のわらべきたりて、やまひをたづねけるゆゑ、加持かぢたのみければ、わらべとりあへず千手陀羅尼せんじゆだらによみおしえけると、にはか苦痛くつうまぬがれしゆゑ、ちゝよろこびて、わらべ財寶ざいほう布施ふせしけれども、さらうけず。

※ 「施無畏せむい」は、観世音菩薩のこと。
※ 「不圖ふと」は、不図ふと。はからずも、という意。
※ 「加持かぢ」は、神仏の加護を受けて災いをはらうこと。
※ 「千手陀羅尼せんじゆだらに」は、千手観音の功徳を説いた経のこと。

たゞ病人びやうにん箸紙はしがみとりて、「われ紀州きしう粉河寺こかはてらもの」といひてれり。其後そのゝち本腹ほんぶくしければ、父子ちゝこつれそのところをさま/\たづねけれどもれず。ひともなき草庵さうあんやすらひて、終夜よもすがらあんじけるところ、不思議ふしぎ仏間ぶつま光明こうみやうかゞやきしに、おどろ近寄ちかよりれば、千手せんじゆ御手おんて箸筒はしづゝかゝりたれば、さて以前いぜんわらべこの御佛みほとけましませしかとふかたつとびて、参詣さんけいすること四方よもにひろまり、つひ伊都郡いとのこほりをんな大信者だいしんしやとなりて、住宅すまゐ御寺みてらとせしより、灵驗れいげんいよ/\あらたなり。

※ 「本腹ほんぶく」は、本復ほんぷく。病気が全快すること。


※ 参考:『西国・秩父・坂東百観音霊験廻拝記』『西国三拾三所観音霊験記図会』『西国三拾三所観音霊験記図会』(国立国会図書館デジタルコレクション)


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