【語源】日本釈名 (41) 雑器(鐘・一枚・盥・舩・澪標・釜・鍋など)

甑
「かしき」也。飯をかしく器也。「か」と「こ」と通ず。
※ 「かしく」は、炊く。
鋸
「のこ」は「残」也。のこきりにて木をきれば、くづ残ル也。
鋤
田をすくゆへに名づく。
鐘
「高音」也。上を略す。一説に、金にて作れるゆへ「かね」と云。前説よし。
行器
「外行」也。「い」は「いく」也。「ゆく」と通ず。物を入てほかへゆく器也。
錐
「木に入る」也。「る」と「り」と通ず。
湯桶
「ゆ」は訓也。「桶」は音なり。「ゆおけ」と訓によみ、或音にて「たうとう」と云べきを、訓と音とをまじえて「ゆたう」とよむ。是を「ゆとうもじ」と云ふ。此類、猶多し。是、後代のあやまり也。上代にはかやうの詞なし。
※ 参考:『古事類苑 器用部2』(国立国会図書館デジタルコレクション)
鎖袱
又、「叩子」とかく。其かたち、牡丹のつぼみに似たり。或曰、南蛮のことば也。「鎖袱」は『皇明世法録』にいづ。
※ 参考:『倭訓栞 : 増補語林 下(ぼたん)』(国立国会図書館デジタルコレクション)『皇明世法録』(国立公文書館デジタルアーカイブ)
小挟
「はせ」は「はさむ」也。「さ」と「せ」と通ず。
※ 「小挟」は、鞐(小鉤)のことと思われます。こはぜかけに懸け合わせる小さな爪のようなもの。足袋のこはぜなど。参考:『大日本国語辞典 巻2(こはぜ)』(国立国会図書館デジタルコレクション)

■露 ■は乖+土
「ぎ」は「葱」也。「ほうし」は「帽子」也。欄干のはしらのかしら、ひともじの実のかしらのぼうしのごとし。一説、「ぼうし」は「宝珠」なり。
※ 「ひともじ」は、一文字。葱のこと(女房詞)。
一枚
「一まい」也。「ひら」は「平」也。河内国枚方、枚岡などにも「枚」の字をかく。「牧」の字をかくはあやまり也。『日本紀神武紀』にも「八十枚」とよめり。
閘
「出る樋」也。ため池の内より外へ水の出る樋也。
柵
「石籠」也。上略也。「からみ」とは「からぐる」意。水をふせがんとて石をからむを云。
※ 「からぐる」は、絡ぐる。
※ 参考:『大日本国語辞典 巻2』(国立国会図書館デジタルコレクション)
盥
「てあらひ」なり。
鈎瓶
「つりあぐるへいじ」也。下略也。
※ 「へいじ」は、瓶子のことと思われます。徳利の古称。
※ 参考:『大日本国語辞典 第5巻 修訂』(国立国会図書館デジタルコレクション)
臼
「うつ」也。米をうつなり。「つ」と「す」と通ず。
網
いとをあみて、作るものなり。
舩
「ふ」は「ふかき」也。下略也。「ね」は「へ」と通ず。「うかへる」也。上下を略す。「ふかきにうかへる」也。
〇 舳は「まへ」也。舩の前也。
〇 艫は舩の後也。故に「とも」と云。
〇 柁は舟の行くすぢを正しくする木也。「かぢ」は「こぢ」也。左右にこぢゆる也。
〇 櫂は「かく」也。水をかきて、舟をやる木也。

〇 帆は「のぼる」也。檣にのぼる也。
〇 父舵は「おもてかぢ」也。右に舟をやるを云。母舵は「左かぢ」也。ひだりに舩をやるを云。「とり」は「ひたり」也。「と」と「た」と通ず。上略也。「柁」の字を「かぢ」とよむは、日本にてよみつけたる也。「かぢ」は舩の尾なれば、「梶の」字を用るにや。「梶」の字、からの字書には「かち」の意なし。
〇 碇石「かゝり」也。『萬葉』には「重石」とかけり。古は石をいかりとす。「かゝり」は舟のとまるを云。又、水底の物にかゝりてうごかざるをいへるか。「碇」は舟を留むる器なり。
〇 游艇は、本舟にあらざる故に名付。子城を端城と云の類也。
〇 舼 たかせ たかくしてせばき舟也。
〇 ■(■は舟+帯)うすく長き舟也。「平」也。「た」はうつほ字なり。
※ 「から」は、唐。
※ 「うつほ字」は、空字。
※ 参考:『色葉字類抄 中(舼)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
匜
『順和名』の注に「半挿」とかけり。柄ありて半は其内をさしはさむといへり。
※ 参考 匜、半挿。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『和漢三才図会 卷三』
尺
「物さし」也。「竹はかり」也。はかりは物の長短をはかる也。竹にてつくれり。寸は刻也。一寸、二寸は一刻、二刻也。
■ (■は篗+朋)
いとをくる器也。糸のみたれたるをわくるなり。一説、「く」は「く」の音を轉じて訓とせり。
※ 「轉じて」は、転じて。

桶
蘓魴曰、水を升にくむ器也。今案、「おけ」は「うけ」也。升にうく也。
𥧄
「火たき」也。三字各相通ず。賤民の「ほたけ」と云も相通ず。「すびつ」は「炭びつ」也。
杵
「き」は「つき木」、「ね」は「根」也。つく所は根の方也。又、「きゞ」とも云。「きゞ」は「つき木」也。
澪標
「水のふかき所のしるしに立るみを木」也。『源氏物語』にもあり。但、其はじめ、水のふかき所に石をつきて、しるしとせしなるべし。「みを」は「水のふかき所」を云。「つくし」とは「筑石」也。
䚨
鷹の具也。「繳」の字をも用ゆ。「へ」は「はゑ」也。「はゑ」のかへしは「へ」也。「はゑ緒」也。「はゆる」とは「いとを長くはる」をいふ。
※ 参考:『言海 百六拾版(へを)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
笏
「笏」のこえは「こつ」也。「しやく」は和訓也。或説に「こつ」の音、「骨」と同じければいみて「尺」といふ。「笏」を以、物の長短をはかる故に「尺」の音をかりて訓とせりと云。『和名抄』に曰、長さ一尺六寸、ひろさ三寸、あつさ六分也。但、日本には位によりて長短あるべし。
※ 参考:笏

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『和漢三才図会 卷三』

釜
『順和名抄』には「かなへ」と訓じ、又「まろかなへ」と訓ず。「かなへ」は食をにる器なり。「鼎」は「あしかなへ」と訓ず。足あるを「鼎」と云。かまはかなへのまるきを以名づくるなるべし。
※ 参考:『古事記神名略解』(国立国会図書館デジタルコレクション)

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『小学生徒便覧』
鍋
「かなへ」を略せる名なるべし。
輪
「まる」也。「ま」と「わ」と通ず。又「まはる」也。『万葉集』に「廻」の字、「囘」の字をも「わ」とよめり。浦囘などかけり。
筆者注 ●は解読できなかった文字、□は欠字を意味しています。
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