【語源】日本釈名 (23) 人事(由基主基・音・欲・鹿嶋立・餞・謙など)

由基主基
「由基」は天の神を祭り、「主基」は地の神を祭る。「ゆき」は「ゆはひきよまる」の意。「すき」は「ゆきにつぐ」と云意。「すき」は「次」也。地神の祭りは天神の祭につぐ也。『釋日本紀』に見えたり。
※ 参考:『支那大観と細観(天神地神)』『尾三郷土史料叢書 第4編 参河国名所図絵(由機となる)』『尾三郷土史料叢書 第5編(長樂村)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
殿
軍のあとを「しんかり」と云。「しん」は「しり」也。「あと」の事也。「かり」は「はせゆく」也。又、「しんがり」を「しつはらひ」と云。「しつ」は「しりへ」也。「はらひ」は「あとをはらふ」也。軍にすゝむには、さきかけを「勇」とし、しりぞくには「しんかり」を功とす。
聲
「こえ」とは「きこえ」なり。上を略す。すべて耳にきこゆるを「こえ」と云。
音 ヲト
「ね」は「て」也。声の出る也。「ね」と「て」と通ず。鳥のね、虫のね、笛のね、琴のね、などの「ね」は、皆其物より出る聲なり。
「おと」は「あたる」也。「あた」と「おと」と通ず。「る」を略す。凡そ、物の物にあたりて聲の出るを「おと」と云。風のおと、波のおと、瀧のおと、車のおと、斧のおと、ばちのおと、などの類也。一説「おと」は「うつ」と云義也。萬の物うちて聲出る也。「うつ」と「おとゝ」通ず。「ね」と「おと」ゝ各名にくる所かはれり。聲は惣名也。

名乗
「のる」は「告る」也。我が名を人に告る也。
夢
「ゆ」は「ゆふへ」也。下略也。「め」は「見る」也。「み」と「め」と通ず。ゆうべに見る也。一説「いねみ」也。「い」と「ゆ」と通じ、□ と「め」と通ず。「ね」を略す。
※ □は欠字。『広文庫 第19冊(夢)』によると、「『み』と『め』と通ず」。
欲
「ほつする」とは「ほりする」也。こえにはあらず。「よく」は音也。「ほり」は訓也。『萬葉』に「欲」の字を「ほりする」と訓ぜり。仙覚が曰、「ほり」とはねがふことば「みまくほり」など云がごとし。今案「ほしき」と云も同意なり。
※ 「仙覚」は、鎌倉時代の万葉学者。
※ 「みまくほり」は、見まく欲り。「まくほり」は、…たいと思う、…することを望むという意。まく欲りす。万葉集に、
見まく欲り我する君もあらなくに
なにしか来けむ馬疲るるに
鹿嶋立
「たびのかど出」を云。神功皇后、新羅を攻給ふ時、鹿嶋・香取の二神、まづ道途し給ひしより云ことば也といへり。

熱
火通るなり。
尿 イハリ
「湯まる」也。小便は、腹中より出るゆへ、あたゝかにして湯のごとし。「はり」は「ふる」也。大小便するを「まる」と云。『日本紀』に「くそまる」といへり。「はり」と「ふる」と通ず。「まる」は「もる」也。「もり出る」也。「いばり」とも云。「ゆ」と「い」と通ず。
糞
「くさき」也。「さ」と「そ」と通ず。「き」を略す。一説に「くさる」也。
膝行
「居ながら去」也。「さる」は「行」なり。「しさる」は「退去る」也。
戴
「いた」は「ひたい」也。「ひ」と「い」と通ず。下の「い」を略せり。「たく」は「抱」也。物をとりて、ひたいにあげていだく也。此意をもつて頭上にあがるをも通じて「いだゞく」といふ。
巴
「とも」は「友」なり。「共」也。「ゑ」は「絵」也。三相ともなへる絵也。
餞
たびにゆけば、のれる馬のはな、其かたにむくゆへに、たびたつ人に物をおくるを「はなむけ」と云。「馬のはなむけ」と云事、歌書に多し。略して「はなむけ」と云。
謙
「へり」は「減」也。身の「たうとき」と「かしこき」をへらして、人にくだる也。へりくだるは萬の善の本なり。萬善これよりおこる也。わが身をあしきと思へば、ひたもの善にすゝむゆへなり。
※ 参考:『古事類苑 第38冊(謙)』(国立国会図書館デジタルコレクション)

矜
「ほこる」は「おごる」也。位のたかきと、ざえのあるとにおごり、自満してへりくだらざるを云。「ほこる」は、よろづの悪の本也。萬悪これよりおこる。いましむべし。へりくだるのうらなり。わが身をよきとおもひてほこれば、ひたもの悪におちいるもの也。
※ 「ざえ」は、学識、教養のこと。
※ 参考:『小学修身口授書 : 新撰』(国立国会図書館デジタルコレクション)
戰
「たゝきあふ」也。「き」「あ」のかへし「か」也。
靜■ (■は扌+癶+虫)
箏のことをしずかにひくを「すががき」とい□。「しづ」のかへしは「す」也。「しづかがき」也。「早がき」に對せり。
※ □は欠字。
※ 「すががき」は、清搔き。
※ 「對せり」は、対せり。
相撲
「すまひ」は「相撲」のこえ也。もとより和語にはあらず。相撲の音は「さうぼく」なるを、通音なれば和語となして「すまひ」と訓ぜり。「さう」のかへしは「す」也。「ぼく」は「まふ」の音に通ずる。故に「すまふ」と云。朴を訓じて「はうの木」と云がごとし。傳じて「すまひ」と云へば全く和語となる。音を傳じて和語とする例、別にもあり。
※ 「はうの木」は、ホオノキ。朴の木。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖
