【語源】日本釈名 (21) 人事(敬・学・拙・愚・祓・祝など)

敬
「うやまふ」は「いやまふ」也。「い」と「う」と通ず。「いや」とは「弥」也。幾重にもかさねてねんごろに心を用るを云。拝をするにも、再拝するの類也。「まふ」は助字也。
※ 「再拝」は、二度繰り返して礼拝すること。
學
「ま」は「誠」也。「なふ」は「ならふ」也。まことをならふ也。正真のごとくにせんとならふ也。小児の手をならふがごとし。かきにせて正真の手本のごとくにかゝんとならふ也。
※ 「手をならふ」は、手を習う。手習い。文字を書くことを習うこと。
※ 「かきにせて」は、書き似せて。
真似
「ね」と「に」と通ず。まことをにする也。
※ 「にする」は、似する。
樂
「たのし」とは、「た」は「手」也。「のし」は「のぶる」也。今も俗に「のぶる」を「のす」と云。手をのべて舞ば、心たのしむ也。
※ 参考:『古事類苑 第38冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
懲
「こほる」也。おそるゝ意。「ほ」の字を略す。
守
「目もる」也。「め」と「ま」と通ず。目をはなたずもるなり。「もる」とは、器に物をもりてうしなはざるやうにたもつ意也。たからを人のとらざるやうに、目をはなたずまもるがごとし。
※ 参考:『国語国文学講座 第9』(国立国会図書館デジタルコレクション)

戒
あしき事をいむと云。悪事をつげて禁ずる也。
※ 「あしき事をいむ」は、悪しき事を忌む。
懐
「なれちかづく」也。略語也。家に来りてなれ近づく也。
威
「おどす」は「おどろかす」を略せり。
教
「おしえ」は「おさえ」也。人の悪きをおさへて、よきことをしらしむる也。
政
神武天皇より開化天皇までは、禁中に天照大神の神体を安置し奉らる。是、神勅によれり。朝廷にて天照大神の祭をつかさどれる人、即ち天下の政務を行ひし故、「政」を「まつりごと」ゝ訓ず。
天祚
「寶祚」也。天使の御位を云。神器とも云。「あま」は「天」也。たうとふ意。「つ」はやすめ字。「ひつき」は「日次」也。「日次」とは深秘の義あるべし。愚賤の者、みだりに朝廷の御事をたはやすく申さん事、いともかしこければ、もだし侍べる。
※ 「天祚」の読み「アマツヒツキ」は、天つ日嗣。皇位を継承すること。
※ 「寶祚」は、宝祚。皇位のこと。
※ 「たうとふ」は、尊ぶ。
※ 「たはやすく」は、たは易く。容易に、気軽に。
※ 「もだし」は、黙し。
詔
天子のおほせを云。「みこと」は「御言」也。「のり」は「つぐる」意。「宣」の字を「ものる」とよむ。「のたまふ」也。中臣祓に「のりわけて」と云へるも、のたまひわくる事也。
※ 「中臣祓」は、宮中で六月と一二月の晦日に、けがれを清めるために行なった神事。中臣祓という呼称は、中臣氏が代々司ったことに由来するそうです。
※ 「のりわけて」は、『中臣祓』のなかの「法別天」のことと思われます。参考:『八部太祓大成 増補』(国立国会図書館デジタルコレクション)

曰
「のり給ふ」也。「のる」は「つぐる」也。一説「のへたまふ」也。
奉
「たつとみまつる」也。捧は「さしあぐる」也。
拱
「こまぬく」は、両手を左右の袖の内にたがひにさし入て、袖につらぬくを云。高麗人来りてせしを見て、名づくと云。今も高麗人は人にむかへば、先必ずこまぬく也。是、人をうやまふ禮也。
舉
「こ」は「こと/\く」也。「そる」は「そろふ」也。「る」と「ろ」と通ず。下を略す。
※ 「こと/\く」は、ことごとく。
拙
「つてなし」也。「て」と「た」と通ず。「さて」は「傳」なり。傳授の事を云。萬の事、師の相傳鳴き事は、つたなきもの也。「つなたし」とは下手なるを云。
愚
「おろそか」也。「そ」を略せり。道理にうとくして、おろそかなるを云。
跪
膝をまげて、地につくる也。
跨
「あと」は「足」也。「こふ」は「越る」也。あしこゆる意。またがる也。
欺
「あなどりそむく」也。「さ」と「そ」と通ず。心には善悪をしりながら、善を悪と云、悪を善と云は、其人をあなどりて我が本心にそむく也。「あざむく」とは「だます」也。人をいつはり、たぶらかすを云。

持
「手もつ」なり。
詠
言を引長むる也。「眺」は「長く見る」也。意かはれり。
孕
「はらにふくむ」なり。
疲
くたびれて、のどかはくもの也。「つ」は「津液」なり。「かるゝ」は「かはく」也。津液かはく也。
祓
「身すゝぎ」也。「す」と「そ」と通ず。一説に、身のけがれをのぞく也。祓除と云意也。又、「はらひ」とは心身のけがれをはらふなり。「みそぎ」も「はらひ」も同事也。
※ 「祓除」は、災いを除いて穢れを払うこと。
祝
「のつと」は「のりこと」也。のたまふ言也。神ののたまふ言を人につぐるを云。
※ 参考:『国文註釈全書 第3編 訂再版』(国立国会図書館デジタルコレクション)
宿直
「殿居」なり。君の宮殿に番をしておる事也。昼夜にかぎらず。
惜
「あたらし」とは「おしむ」也。ふるき物はおしむにたらず。新しき者はふたゝびあたらしくならねば、尤おしむべし。花のあらたにひらけたるなどもおしむべし。うつろひたるは、おしむにたらず。少年の光陰おしむべきが如し。只、人はふるきを用ゆ。うつはものはあたらしきがよし。
※ 「うつはもの」は、器物。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖
