【西遊旅譚/司馬江漢】(16)生月島にて鯨納屋を見る
『西遊旅譚』は、江戸時代後期、蘭学者で絵師の司馬江漢が記した長崎旅行記。行く先々の史跡名所、風土、なかでも長崎で見聞する支那船、オランダ船、出島、まぐろ漁、くじら漁などは挿絵も多くとても楽しい読み物です。天明八年(1788年)四月二十三日に芝門を出発。全五巻。
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夜半出て、鯨の背にのぼる。


鯨切解圖 此所を三崎と云
鯨、大腸を剪とき、鰯、又、其餘の魚かつて不見。小海老といへる小魚有のみ。また、鯨鯢(をくじら、めくじら)といふ。
万力車(シヤチ捲のこと)七ヶ所に在。大綱を以て捲きる。
※ 「圖」は、図。
※ 「其餘」は、そのほか。
※ 「鯨鯢」は、くじらの雌雄のこと。「鯨」は雄くじら、「鯢」は雌くじら。参考:『大日本国語辞典 巻2(鯨鯢)』『倭名類聚鈔 5(鯨鯢)』(国立国会図書館デジタルコレクション)

ケイ島 見ユル

骨(ほね)納屋 と云有

此島にて、所漁の鯨鯢、五品あり
世美鯨 上品
味美。大なるものは十間。油弐百樽を出す。柔にして得やすし。
長須鯨 中品
味淡。初●●にして、顕ハシ 海上ニ 後 入テ 底ニ 走ル。
坐頭鯨 中品
サク剛にして、又、得やすし。味同シ 長須ニ
児鯨 下品
剛猛にして得がたし。舟を破る。
鰯鯨 下品
得る事、稀なり。鯨の名にして●鰯にあらず。
右各象異也。予、見所のものは、世美、坐頭の二品迄、其餘は不 見。
※ 「柔にして得やすし」は、誤読しているかもしれません。
※ 「サク」は、誤読しているかもしれません。



鯨のひれと云「ヒレ」にあらず
口中に有 歯の如し 則「エラ」なり

※ 「ベツタウ」は、別当と思われます。


坐頭鯨 腹の方、うねり有。
此へん、こぶ/\あり。


長須鯨
長須、坐頭 腹子、大さ九尺
其餘、世美、児鯨 腹子、八寸より一尺五六寸
總而、鯨は卵生(たまご)にあらず。かたちを生り。●一●なり。交ときは人のごとしと云。
※ 「總而」は、総而。

児鯨
灰色にして、連銭文あり。口中歯あり。其余歯なし。阿蘭陀書中にウニコルの説あり。夜国の産にして、鯨魚の類なり。其色灰色にして連銭の紋あと云。
児鯨はウニコルノ類ならんや。口のさきに白き髭あり。
※ 「連銭」は、銭を並べた形の文様のこと。「連銭文」は連銭紋。
※ 「ウニコル」「ウニコルノ」は、一角のことと思われます。参考:『西洋医事集成宝函 巻7-9(一角)』(国立国会図書館デジタルコレクション)

『博物図教授法 動物之部 2版』
※ 「夜国」は、北極に近い国のことと思われます。

鮪見樓
魚来る時、樓の上に坐す者、旗を出す。立櫓の舟、其印を見て、口網を引閉。
※ 「口網」は、籠などの出入り口を閉じる網のこと。参考:『大日本国語辞典 巻2(口網)』(国立国会図書館デジタルコレクション)


竹二本をつるゝ
※ 「つるゝ」は、誤読しているかもしれません。


是は貝より生じたるものにて肉のいきものにしてうごく。
此貝、坐頭鯨の腹の方につくせ貝。大きさ圖の如し。
生胭脂肉色
貝の色白し
※ 「圖」は、図。

坐頭鯨の鰭、皆肉にして骨なし。
切口 切口皆油肉 白

此瀬貝は、世美鯨の頭、又、尾鰭につく。

岩のセイと云ものにて貝なり。海岸の岩に生ず。漁夫取て喰ふ。

此虫、世美鯨にあり。瀬貝の間にあり。虱と云。
坐頭鯨の鰭、又、尾のさきに付瀬貝なり。
貝の色白し。足のごときものを出す。肉色にしてうす赤色なり。

※ 「瀬貝」 参考:『漫游見聞録 上(瀬貝)』『通商彙編 6(瀬貝)』(国立国会図書館デジタルコレクション)

肉納屋の圖
竈十八にて油を煎す。筧にて庫の内へ流す。鯨十間許のもの、油二百樽を出す。




骨納屋の圖 又、腸納屋あり。


参考:『西遊日記』(国立国会図書館デジタルコレクション)
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