【語源】日本釈名 (43) 虚字(現・幻・須・美・酸・苦・甘など)

顯
『直指抄』曰、「あらけはるゝ」也。
※ 参考:『倭訓栞 : 増補語林 上』(国立国会図書館デジタルコレクション)
浮沈
「うく」の「う」は「上」の義。「しつむ」の「し」は「した」の義也。
後
「しり」は、人のうしろにあり。「へ」は、やすめ字也。
前
「見え」也。「み」と「ま」と通ず。「まへ」は見ゆる。「うしろ」は見えず。
後
「う」は「うら」也。「しろ」は「しりへ」なり。
悉
毎 事なり。「く」は助字なり。
現
「うちつ」也。「ち」と「つ」と通ず。「うち」は「内」也。過去と未来は、外なり。現在は、内也。下の「つ」は、やすめ字なり。「うつし心なき」と云も、「うつゝなき」と云も、うつゝの時のたゝしき心なきを云。うつしのしは、うつほ字也。一説に、「うつゝ」は「うつる」也。人の世にある間は、時刻、ひたすらうつりゆきて、しはしもとまらず。此義も亦通ず。
※ 参考:『広文庫 第3冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
幻
「見ほろほす」也。「み」と「ま」と通じ、下の「ほ」の字を略す。「まほろし」とは、かりそめに目に見えて、まことにはなき物なれば、やがてきえうする物を云。ねさめなとにもかやうに見る事有。病によりても見る。或、怪によりてみる事も、まれには有べし。やがてきゆる故に、見ほろぼすと云意也なり。
※ 「ねさめ」は、寝覚め。
※ 参考:『御文明燈鈔 下』(国立国会図書館デジタルコレクション)

すく
田をかへし、髪をけづり、紙をこすを、皆「すく」と云。「すく」は「すくふ」也。魚をすくふが如く也。紙をすくは、楮汁をすたれにてすくふ也。
須
「なすへからく」也。上を略せり。「なすへからく」とは、もとめてなすべしと云意。先「なすべからく」とよみて、後に「べし」とよむ。前後あはせて、意にねかふなり。字書にも、「須は意ノ所 欲也」と見えたり。一説、「すべからく」の「す」は、「須」の字の音也。他の「べし」の字にまぎれざるがために、先すことよむと云説あれど、さにはあらず。
※ 「先すことよむと云説あれど」の「すこ」は、誤読しているかもしれません。
※ 参考:『真宗全書 第27巻』(国立国会図書館デジタルコレクション)
干
「日」より出たる語なり。
臭
腐より出たる意也。くさりたる物は、くさし。「し」は、やすめ字なり。

美
「うむ」也。「うむ」は「熟する」也。草木の実の熟したるは、うまし。食のよくにえ熟したるも、うまし。「む」と「ま」と通ず。「し」は、助字也。一説に、「うまし」は「あまし」也。あまき味あれば、うまし。あまからざれば、味あしゝ。「あ」と「う」と通ずと云。此説、前後本末、ちがへり。熟たるものは、必あまきゆへに、あまきとは、うまぎと云意也。「うまき」は「本」也。「あまき」は「末」也。然れば、「うまき」は母語にて、「あまき」は子語也。子語を以て母語をとくべからず。
酸
「すゑたる味」也。食のすゑたるは、必すし。
苦
「にかし」は「にくし」也。「く」と「か」と通ず。にがき味は、にくむべし。
甘
「あまき」は「うまき」也。「うまき」は「熟」也。草木の実の熟たるは、あまし。一説、「あまし」は「おもし」也。味のあまきは、陰に属しておもし。地黄、甘草あめなとの味は、おもし。前説よし。

辛
「いかる」也。「い」を略す。からき味は、はけしくて、人の「いかり」のごとし。一説、「からき」は「かろき」也。からき味は、陽に属して、かろし。たで、からしの類、味かろし。
鹹
「しは」と「しほ」と通ず。塩の味なり。「はやし」は、「面はゆ」「まばゆし」などの「はやし」と同しはつる意。いやがる也。水に塩の味あれば、いやに思ふ意也。
況
「いふに及ばず」といふ意。
灮
「火来」也。又、「日来リ」也。「きた」のかへしは「か」也。日と火のかげのこなたへ来る也。
行末
「行末」の略なり。
約
「つゞまやか」は、「ちゞまる」意。ひろくせずして、ちゞむる也。「ち」と「つ」と通ず。「やか」は、形容のことば「こまやか」「たをやか」の「やか」と同じ。
濃
「細なる」也。あつくしげきを云。色のこきをいふも、こまやかなる也。「うすき」の「うら」也。「うすき」は「うとき」なり。
香
「かくはし」也。「ほむる」意。「く」と「う」と通ず。
滞
「とゞまりこほる」也。「こほる」は「とけざる」也。
筆者注 ●は解読できなかった文字、□は欠字を意味しています。
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