【女大学宝箱】(17)白川の石売り/矢背の黒木売り

賤の女のわざも都の近邊多し。上粟田、北白川の山の土中、みな白石也。村の人農作のいとまに石工をなし、用にしたがひ、これを切とり用ゆ。それを里の女は馬におゝせて、もてうる也。ゐなかの女のしわざ、魚とり、塩くみ、田かへし、あきなふわざ、薪きり、牛追など、からきことゞもあるなるに、都にもかゝる女のなりわいすることよと、いと哀れなり。
古風の句に
きればちるや 白川石も 小米花

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『女大学宝箱』
※ 「農作」の読みは、「たつくり」(「た」の欠字)ではないかと思います。
※ 「おゝせて」は、負おせて。背負わせてという意。
※ 「しわざ」は、仕業。働きのこと。
※ 「田かへし」は、田返し。田を耕すこと。
※ 「小米花」は、雪柳、または、蜆花のこと。参考:『俳諧発句初まなび』『言海 : 日本辞書 第1-4冊(小米花)(蜆花)』『四季部類大全 増補』『俳諧歳時記栞草 春・夏の部 増補改正』(国立国会図書館デジタルコレクション)

黒木は、みやこの北、矢背、大原、鞍馬のさと人、山に入て、木を伐て、つち穴を山中につくり、四方に伐たる木をつみ、生薪を焼て、ふすべかはかす。故に「くろ木」といふ也。
それを焼たるあとのぬくもりに、塩こもを敷て、病ある人、これに入る。「やせのかまふろ」これなり。
その黒木をつかねて、村の婦、かしらにいたゝき、牛馬におゝせて、京にきたりうるなり。其しんくも生れつきたれば、さのみうしとも、とはぬげなり。
古風の句に
大原は 身もちになるや 小梅の木
※ 「矢背」は、八瀬(京都市左京区)。
※ 「ふすべ」は、燻べ。煙にあてて煤で黒くすること。
※ 「かはかす」は、乾かす。
※ 「焼たるあと」は、焼きたる跡。
※ 「こも」は、菰。まこも(イネ科の多年草)を粗く編んで作った筵のこと。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『女大学宝箱』
※ 「やせのかまふろ」は、矢背の釜風呂。参考:『雅言俗語あすならふ(八瀬の竃風呂)』『京都名勝図絵 下(八瀬里)』『京都名所独案内(八瀬の里)』『京けんぶつ(八瀬の里)』『俚言集覧 中巻(鹽ふろ)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「つかねて」は、束ねて。
※ 「いたゝき」は、戴き。頭のうえに載せること。
※ 「うるてい」は、売る体(様子)。
◇
よかったら過去noteも見てみてくださいね。👀
→ 「百人女郎品定(上)」
白川の石売り、八瀬の黒木売り
● は解読できなかった文字を意味しています。新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖
