【女大学宝箱】(37)源氏物語⑦宿木/東屋/浮舟/蜻蛉/手習/夢浮橋

宿木
やどりきと 思ひいですは このもとの
たびねもいかに さびしからまし
東屋
さしとむる むぐらやしげき あづまやの
あまりほどふる あまそゝぎかな
浮舟
たちばなの こじまもいろは かはらじを
このうき舟ぞ よるべしられぬ
蜻蛉
ありと見て 手にはとられず みれば又
ゆくゑもしらず きえしかげろふ

手習
身をなけし なみだの川の はやきせを
しがらみかけて たれかとゞめし
夢浮橋
法のしと たづぬるみちを しるべにて
おもはぬ山に ふみまよふかな
源氏物語は、一条院の宮上東門院へめつらしき双紙や侍ると尋させたまへば、官女紫式部に仰つけられければ、式部、石山寺へこもりて、此事を祈り申、おりしも八月十五夜の月、湖水にうつりて心をすみわたりたるまゝに、先、すまあかしの両巻をつくりそめしより、残の巻々心にうかび出ける也。さる故に、すまの巻に「今夜は八月十五や」とあり。式部は観世音の化身なりと申也。
そも、光君と申は、源氏七歳の御時より学文し給ひ、何ことも得給はすといふことなし。その頃、高麗よりはかせわたりて、此君のかたち光かゝやきて、うつくしくおはしけるに、めてゝ「光源氏の君」となつけ申也。
源氏六十帖と申せとも、巻は五十四帖あるは、ふかき心あるとしるべし。
※ 「上東門院」は、一条天皇の中宮 藤原彰子の院号。じょうとうもんいん。
※ 「すまあかしの両巻」は、須磨明石の両巻。
※ 「つくりそめし」は、作り初めし。
※ 「源氏六十帖と申せとも」は、源氏物語六十巻説のことを指しています。
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