【語源】日本釈名 (42) 虚字(みやびやか・おぎろ・くだん・あぢきなし など)

直
「あたひ」は「當」なり。「あたひ千金」など云も、千金にあたる也。
出葉
葉の出て草木をわきまへしるがごとく「てにをは」付れば、其意義明らかになる也。
※ 参考:『広文庫 第13冊』『国語学史概説 (続国文学講座)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
則
「すなは」は「すなを」也。すくなる意。「ち」は「みち」也。「すなはち」は「すくみち」也。何の滞もなく、すぐみちに其まゝと云意也。
※ 「すくなる」は、直ぐなると思われます。
※ 参考:『疑問仮名遣 前編』(国立公文書館デジタルアーカイブ)
忽
「たちまち」とは、立所に間ぢかき也。
直
「正道」なり。一説「竪道」也。
恒
「とこ」とは、「常」也。「し」は、やすめ字也。「なえ」は「時」なり。「いなおほせとり」の如く、なえなと云もなく時也。
※ 「恒」の読み「トコシナヘ」は、長常鎭。永く変わらないこと。とこしえ。参考:『大日本国語辞典 巻3(とこしなへ)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「いなおほせとり」は、稲負鳥。参考:『大日本国語辞典 巻1(いなおほせどり)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
都
「みや」は「見やこ」なり。みやこのならひある風雅の體を云。「ひなびたる」と反せり。「び」はやすめ字也。「ひなび」「ふるび」などの「ひ」の字の類也。「やか」は「にぎやか」「ゆほひやか」「こまやか」などの類。形容のことば也。
※ 「風雅の體」は、風雅の体。
※ 「ゆほひやか」は、窈窕。参考:『浮世草紙刊行会叢書 第1巻』(国立国会図書館デジタルコレクション)
賾
「おぎ」は「奥」也。「奥義」也。「ろ」は、つけ字也。「神呂岐神呂美」「むしろ」の「ろ」の字の類也。『萬葉集』に「たふときろ」と云がごとし。易に「探 賾ヲ」とあるも、奥義を求むる也。
※ 「神呂岐神呂美」は、神漏岐神漏美。男女の神々の尊称。参考:『大日本国語辞典 巻1(かむろぎかむろみ)』(国立国会図書館デジタルコレクション)

聊
「いとさゝやかなる」意。「さゝやか」とは「小なる事」也。
淳
「す」は「すく」也。「なを」は「直」也。
※ 「すく」は、直ぐと思われます。
美
「いつくしむべき」也。「いつくしむ」は「愛する」也。『万葉』に「愛」の字を「うつくし」とよめり。「い」と「う」と相通ず。
死
「死」を「なをる」と云。「なを」は「直」也。死したる者は、其身すくみて、直になるゆへなり。
※ 参考:『古事類苑 人部4』(国立国会図書館デジタルコレクション)
自
「おのれから」也。「れ」を略す。「つ」は、やすめ字なり。
衰
「おとる」より出たる詞也。
傾
「一かたにむく」也。されど「かたふく」とかく。
流
長きより出たる ● 也。
件
「くだん」とは、「條目」の事也。「くだり」と云意。文字一行を云。「右件」と云は、右の一ヶ條一くたりと云事也。「くだんのごとし」とは、右の條目の如しと云意。
※ 「條目」は、箇条書きにした法令・規則、または、そのひとつひとつの項目のこと。
青
あほそらをあふけば、其色あおし。あふくあをし、其青ちかし。「く」を略せり。「し」は助字也。「あかし」「白し:の類なり。
※ 「あほそらをあふけば」は、青空を仰げば。

黄
火にごけたる色は「黄」也。「こげいろ」也。「け」と「き」と通ずなり。
赤
「あきらかなる」也。「朱」は「あか」なり。
白
「しろし」也。「よく見ゆる」意。
黒
「くらき」なり。
頗
「すこぶる」は「すこし」と云意。「ふる」は、付字也。「ひたふる」なド云「ふる」と同じ。字書に「頗は小也」といへり。『文選』の註も同じ。「おほかた」など云説、用がたし。「大かた」は「過半」の意。「頗」の字にあはす。
※ 「文選」は、六世紀、梁の昭明太子が編纂した詩文集。
※ 参考:『真宗全書 第27巻』(国立国会図書館デジタルコレクション)
速
「すゝみやか」也。「すゝむ」は「はやき」也。中略なり。「やか」は、助字也。
あぢきなし
「無味気」也。「き」は「け」と通じて、もとよりの和語也。音には非ず。
改
「あらたにする」也。「むる」は、付字也。「とがむる」「とゝむる」の「むる」に同じ。
遍
「あま」は、天のひろくおほひて外なき意をとれり。「ねし」は、助語なり。
※ 参考:『国語学通考』(国立国会図書館デジタルコレクション)

跡
「あしとまる」なり。
恰
「あたか」は「あたる」意。「其物に相あたる」也。「あたる」はものにたとへて、ちやうどよく似たると云事を「あたかもにたる」と云。たとへば、十月のあたゝかなるけしきは、あたかも三月に似たると云。今の俗のことばに「ちやうど三月に似たる」と云がごとし。
味
「あぢ」は「あまき乳」也。乳味は、食のはじめにて、あまきもの也。「あぢわひ」は、「あぢわく」也。「わく」は「分」なり。
約
「せは/\し」は、「せはき」よりいでたる詞也。
文
「あや」は「あざやか」なり。
古
「ふる」は「歴」也。「久しく年ふる」也。「し」は、助字也。
無 墓
『寝覚記』曰、昔の人は父母の墓をいみじくかまゆるを孝養とす。報恩の心ざしなき愚者をはかなしといひそめて、今もおろかなる人を「はかなし」といへり。
※ 「寝覚記」は、一条兼良が通俗平易な修身談を記したもの。ねざめのき。参考:『国書解題 増訂2版』(国立国会図書館デジタルコレクション)『寝覚記』(国文学研究資料館 国書データベース)
區
田間の町あるごとく「各一處々々わかてる」を云。
御
「おさむる」也。「さ」の字と「る」の字を略す。「ん」は即「む」なり。「御」の字、からもやまとも帝王の御事にのみ用ゆ。王者は天下をおさめ給ふゆへなり。又、「み」と訓ずるは、「おむ」の「む」の字、「み」と通ずる故也。
※ 「からもやまとも」は、唐も大和も。
筆者注 ●は解読できなかった文字、□は欠字を意味しています。
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