【語源】日本釈名 (40) 雑器(枕、扇、砧、松明、俵、箱など)

枕
「ま」は「あたま」也。上を略す。「くら」は「座」也。物をおく所、座する所を「くら」と云。「あたまをおくくら」也。
鏵
音を用て訓とす。「鍬」を「くは」とよむも「鏵」よりおこる。
櫛
神代よりの語也。御髪をけつるものなる故に「くし」といへり。
扇
「あふぐ」ゆへに「あふぎ」と名づく。「あふく」と云ことば有て後、扇いできたる故也。扇の「かのめ」今は「かなめ」と云。古哥には「かにのめ」とも「かのめ」ともよめり。大蔵卿行宗家集に見えたり。上に出て蟹の目によくにたり。略して「かのめ」と云。『源平盛衰記』にも「かのめ」とかけり。
※ 「古哥」は、古歌。
※ 「かにのめ」は、蟹目。扇の要のこと。
※ 「大蔵卿行宗」は、平安時代後期の歌人 源行宗のこと。
歌集『行宗集』に次の歌があります。
蟹のめの 離るるたびに いとどしく
君が心の うしろめたさよ
※ 参考:『大日本国語辞典 あ-き(かにのめ)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
注連
「いましめ」也。是をはりて、出入をいましむる也。
鈴
其音すゞし。
輿
「腰」也。腰のたかさにかく故也。「腰輿」也。「あげこし」は、其後の制なるべし。
蓋
「ふた」は「二」也。底と別の物なれば「二」なり。

籮
「ふかき籠」也。
※ 参考:『古事類苑 第41冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
籠
「かご」は「かこみこむる」也。又、「ことも」云。「こ」は「かこ」の上を略せり。
※ 参考:『古事類苑 第46冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
苫
「とま」は「とまる」也。人のとまる所を、ふくものなり。
※ 「ふく」は、葺く。
薦
「こもる」也。こもを以はりかこひて、物をこむるなり。
札
『順和名』には「ふみた」と訓せり。「み」を略せり。「た」は「板」也。ふみをかく板なり。
簟
「竹席」也。桃竹にてあめるむしろ也。
鎌
「か」は「草をかる」也。「ま」は「まがる」也。其かたち、まがれり。
胡床
「あがるくら」也。「くら」は人の㘴する所也。人のあがりて㘴するくら也。
鼓
皮にて両のはたをつゝむ。
※ 参考:『古事類苑 第37冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
匙
杓子を云。物をかきとる意。かき也。
※ 参考:『古事類苑 第46冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
茶匙
和訓にあらず。音也。茶をすくふ匙也。今は茶をすくふものを「さし」と云。
砧
「きぬいた」なり。きぬをうつ板也。

杖
「つくゑだ」なり。
紲
犬などの類、かふけだものを引くつなを云。「ひきつな」なり。上を略す。
※ 「かふけだもの」は、家畜のことと思われます。飼う獣。
※ 参考:『広文庫 第6冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
梭
「きぬ」をおる器也。ぬきのいとをいれて、両へなげわたしてとぶ故、「飛」と云意。「と」を略す。又、きぬのたての中をくゞるゆへ、ひそまる意。
※ 「ひそまる」は、潜まる。
松明
「たきまつ」也。「い」と「き」と通ず。又、「ついまつ」とも云。「つぎまつ」なり。「つい」は「つく」なり。故に「続松」ともかく。又、「手火」なり。手にもちてともす火なり。『日本紀神代上巻』に「秉炬」を「たび」とよめり。「手火」なり。今も邊鄙の人は「たい」と云。
※ 「秉炬」は、禅宗の言葉で、火葬のときに火をつける僧の役名。ひんこ。参考:『大日本国語辞典 巻1(下火)』『大日本国語辞典 巻4(秉炬)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 参考:『古事類苑 第47冊』『国史大系 第7巻』『日本紀講義 神代巻 第1』(国立国会図書館デジタルコレクション)
經緯
「たて」は「立」なり。「立」は「すくにとをる」也。「ぬき」は「つらぬく」也。たての糸をよこにつらぬく也。
※ 「すくにとをる」は、直ぐに通る。
行李
もろこしの書に、たびに持行物を「行李」と云。和俗、「つゝら」にてあみたる器を「行李」と云も、此意なり。「こり」と云は、あやまり也。たびにゆく装物を「一行李」「二行李」などもいへり。
※ 「もろこし」は、唐土。
※ 参考:『故諺字典 : 文学淵源(行李)』『支那小説戯曲文鈔釈 続』(国立国会図書館デジタルコレクション)
魚笥
「うをを入る笥」也。又、水上にうかべて魚を入る器をも「うけ」と云。「浮」也。

蒲笥
「かまにてつくれる笥」なり。今はわらにて作る。
俵
「つゝむわら」也。「つ」と「た」と通ず。「つむ」を略す。米をつゝむわら也。日本にて「米苞」を「俵」と云。からの書には「俵」の字に米苞の注なし。
※ 「から」は、唐。
※ 参考:『古事類苑 第41冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
沓
「くだす」也。「す」と「つ」と通ず。中略也。堂上にあげずして、くだすもの也。
履
「足下」也。足の下にあり。
斧
「あな」也。斧には穴ありて、柄を入る所あり。「あな」と「おの」は通ず也。
筏
「浮棚」なり。「うき」と「いか」と通ず。「な」を略せり。
箱
「ふた籠」なり。「ふた」の反は「は」なり。箱には必「ふた」あり。「こ」は「籠」なり。
瓶
酒を「かもすもたい」なり。「も」と「め」と通ず。下を略せり。
※ 「もたい」は、甕。
環
「手をまく」なり。
簾
「す」は「すく」也。竹をあみて、其あいだすけり。「たれ」はのきにかけて、下へたれさがる也。「みす」は「御簾」也。「こす」は「小簾」なり。「こまかなるすだれ」なり。
※ 参考:『古事類苑 第46冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
筆者注 ●は解読できなかった文字、□は欠字を意味しています。
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