【語源】日本釈名 (34) 木(榧・柳・柴・山茶・黄楊・橙など)

榧
柴をたきて、けふりを以て、蚊をふすぶれば、よくしりぞく。蚊遣火にふく故に「かやりの木」と云べきを略せり。「妄榧」は、朝鮮のこえ也。
※ 「ふすぶれば」は、燻ぶれば。煙をたてれば、くすぶればの意。
※ 参考:『俳諧歳時記栞草 秋・冬・雑の部 増補改正(榧)』『博物図教授書 : 附・問答法 附,問答法2(榧)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
楠
「くすぼる木」也。此木は、香のつよくくすほる物也。
※ 「くすぼる」は、燻ぼる。くすぶる。
茘枝
「れいし」の唐音也。「り」は「れい」と通じ、「ち」は「し」と通ず。「い」は「ち」の引音也。
※ 「引音」は、言葉の間に「い」「う」「ん」の音をはさんで、声を長く引いて発音すること。
莽草
「あしきみ」と云意也。俗には「櫁」とかく。「しき」は「あしき」也。「あ」を略す。「み」は實なり。しきみの実は、毒あり。くらへば、人をころす。故に悪き実なり。小児をいましめて、くらはしむべからず。
木槿
是は、音を轉じて訓とせり。「むく」は「もく」と通じ、「け」は「きん」と通ず。
※ 「轉じて」は、転じて。
柳
「いやなが」也。「い」を略す。「が」と「ぎ」と通ず。柳は生長しやすきものなる故に「長くなる」といふ意也。
鷄冠木
葉のかたち、かへるの手に似たり。「かへる手」と云を略して「かへて」と云。

柴
下葉也。ひきく木を云。「下なる木の葉」也。中を略せり。又、草の萊草は下にしく葉なるべし。
※ 「ひきく」は、低く。参考:『普通読本字解(矮小)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
とびらの木
除日に、民家の扉に此木の枝をさせば、疫鬼をはらふ。中世、俗に云へり。扉に指ゆへに名づく。俗には「とべら」と云。『順和名抄』には「とひら」と訓せり。
※ 「除日」は、大晦日のこと。
幹
「木足」也。木の本を「こあし」と云。「あし」は「もと」なり。
ひこはえ
木根に、ちいさき枝はへいづるを「ひこはえ」と云。「ひきはえ」也。「ひきくはゆる」也。又、説、孫の子を「ひこ」と云がごとし。ちいさきを云。
※ 参考:『俚言集覧 下明治33に−を 増補(ひ)』『故実叢書 安斉随筆(ヒコ)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
楚
「すは」は「末」也。「末枝」也。
山茶
「あつばの木」也。上を略す。つはきの葉はあつし。
櫻
「さくる」也。其木の皮、おのづから立ながら、よこにさくる物也。「ら」と「る」と通ず。
柘榴
音を用ひて訓とす。
榛
此木の葉は、てまりの葉ににて、しばめり。

五棓子
「しぶし」の上略也。其気、しぶし。
黄楊
「つゆき」也。此木、梅雨の時、其葉黄になりて、其後又青くなる。「つ」は「つや」也。「げ」は「き」と通ず。「黄」也。
杏子
唐音也。
銀杏
銀杏は「一葉」也。銀杏はこと木にかはり ●● せすして各一葉有。
ゆづり葉
諸木は、其葉、秋冬おつ。此木、歳の内にはおちず。はる迄、古葉有て、ことしのわか葉おひとゝのひて後、古葉おつ。わか葉にゆづりておつるゆへ、名づく。一説、其葉のくき、弓弦の如しと云。此説、しかるべからず。「弓弦葉」と『万葉』にかけるは、訓おなじきゆへなり。
※ 「わか葉」の「葉」は「柴」のように見えますが、大正時代の辞書『広文庫』の翻刻に合わせて「葉」と読みました。参考:『広文庫 第19冊(ゆづりは)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
李
「すきもゝ」なり。其かたち、もゝににて、味すし。
こけら
「木のけつりくづ」を云。「こ」は「木」也。「けら」は「けづる」なり。「つ」を略す。「る」と「ら」と通ず。
櫧子
「かたし」の中略也。其木、かたし。
黄檗
黄肌なり。はだへ、黄なり。
※ 「はだへ」は、肌。はだのこと。
五加木
「うこ」は「五加」の唐音也。和語にあらず。
胡桃
「くる」は「呉」也。『延㐂式』には「呉桃」とかけり。呉国より来れる実なり。
※ 「延㐂式」は、延喜式。

核
「さね」は「小根」なり。木の実のさねは、其内にはや小根生するもの也。柿のさね、栗のさね、蓮肉など、こゝろみ見るべし。
※ 「さね」は、果実の種。
※ 「蓮肉」は、蓮の実のこと。
梨
「なし」は「中白」なり。梨のみは、皮あをく、なかしろし。
橙
ほぞに、臺二かさなるゆへに、名づく。ほぞに、臺かさならざるを「かぶす」と云。「かふす」と名付しは、其皮のほしたるをもちいて、蚊をふすぶれば、蚊さるゆえに名づく。
※ 「ほぞ」は、果物のへたのこと。
※ 「臺」は、台。
※ 「ふすぶれば」は、燻ぶれば。煙をたてれば、くすぶればの意。
※ 「かぶす」は、臭橙。
※ 参考:『少年博物志 第1帙 第2-4編(橙)』『普通植物(ダイダイ 臭橙)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
紅葉
秋の田のいねのもみあかくなりたるより出たることばなるか。「ち」は「田地」なるべし。
※ 「いねのもみ」は、稲の籾。
■ (■は木+厶+大+久)
ふゆさむきとき、魚を一所に多くあつめとらんれうに、木のえだを水中に入おくをいふ。魚のふしかくるゝやうに木を水につけをくなり。
※ 「あつめとらん」は、集め捕らん。
※ 「れう」は、漁。
※ 「ふしかくるゝやうに」は、伏し隠るるように。
※ 参考:『ことばのその 4のまき(ふしづけ)』『大日本国語辞典 第5巻 修訂(ふしづけ)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
棣棠花
山にありて、其花のいろ款冬のごとし。日本に、むかしあやまりて「款冬」を「やまふき」とよめり。

木欒子
「もくらんじ」を轉じて「むくろじ」といふ。訓にあらず。
※ 「轉じて」は、転じて。
空木
其中うつろなればなり。卯の花は、うつぎの花なり。
榎
「もえの木」なり。凡の木、皆、もゆされども、此木よくもえて、けぶりすくなく、けぶり目に入て、いたまず、たき火にあたりてよき木なり。
※ 「けぶり」は、煙。
桐
しば/\きれば、はやくさかえ大になるゆへ「きりの木」といふ。
朴
「ほく」の音を轉じて、「ほゝ」と訓じて和語とせり。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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