【語源】日本釈名 (31) 草(竹・紅・菜・蓮・葱・菖蒲など)

草
くさ/\おほき也。
竹
「高き」なり。「け」と「か」と通ず。筍は、旬日の間に長じて高き事、天にそびゆ。是、草の中いと高き物也。
※ 「旬日」は、十日間のこと。じゅんじつ。
※ 参考:『古事類苑 第50冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
矍麥
花のかたち、いろ/\うつくしくして、愛すべければ「撫し子」と云。又、さかり久しき故に「とこなつ」と云。「唐なでしこ」は色々あり。「石竹」と云。「やまとなでしこ」は紅一色にして大なり。
※ 参考:『広文庫 第14冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)

紅
「くれのあゐ」也。『和名抄』にも「くれのあゐ」と訓ず。『萬葉』にも「呉藍」とかけり。「くれ」は「呉」也。紅花は呉國よりわたりて、其葉、藍の如くなれば「くれのあい」と云。「のあ」の反は「な」也。
臙脂
「延丹」也。紅花をのべたる丹也。「丹」はあかきを云。
茅花
「ちはな」也。「さ」と「ち」と通ず。「ち」は「ちがや」也。「ちがや」とは、血のいろの如く赤きゆへ也。「かや」とは、かりてやねをふくなり。又「つばな」を「尾花」とも云。けだものゝ尾の如し。
※ 「かりてやねをふく」は、刈りて屋根を葺く。
※ 参考:『古事類苑 第50冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
小竹
凡、小さなる物を「さゝ」と云事、まへにしるすが如し。『萬葉』に「小竹」とも「細竹」ともかけり。
艾
「もえぐさ」也。「え」を略す。
凝菜
「こゞる藻」也。「ふと」の反「ほ」也。「ほ」と「も」と通ず。
※ 「凝菜」の読み「コゝロブト」は、心太。テングサのこと(ところてん)。
しのぶ草
「岸生草」也。「き」を略す。「にほ」の反は「の」なり。
葦
「あし」は「はし」也。「はじめ」也。草木のはじめ也。『直指抄』

蔓
「つらなる」也。草のくき長くつらなる也。「つらなる」とは「つゞく」也。「な」を略す。「ら」と「る」と通ず。
藟
「つゞくかづら」なり。「く」と「かづ」とを略す。長くつゞくかづらなり。
葛
「かつら」は「ながつる」也。上略なり。「る」と「ら」と通ず。
菜
およそ、草のくらふべき物を「な」といふ。「菜」は「なむる」也。草のなむべき物なり。「なむる」は「くらふ」也。「むる」を略せり。又「菜」は「品」也。しな/\多し。上を略せり。
卷栢
岩檜葉なり。岩に生る檜の葉に似たる草なり。
筍
竹の苗なり。
蓮
蜂巣也。蓮房の形、はちのすによく似たればなり。「はす」は中略也。俊頼の説にもかくいへり。
※ 「俊頼」は、源俊頼のことと思われます。歌論書『俊頼髄脳』の著者。
葱 ヒトモジ
「き」とは「きたなき」也。其臭、くさくきたなし。「ひともじ」と云は、葱の訓「き」の字、一字なるゆへ名づけたる也。
胡葱
「やせたるき」也。「あさ」と「やせ」と通ず。「つ」はうつほ字なり。「き」は「ひともじ」也。
※ 「うつほ字」は、空字。
蓍
「神にとふ」也。「み」と「め」と通ず。「か」を略せり。「蓍」をとるは、人のなす事の吉凶いかゞあらんと、うたがはしき事を神にとふなり。くじをとりて吉凶を神にとふがごとし。一説「かめと」ともなり。亀卜のたくゐなり。
※ 「蓍」は、マメ科の多年草メドハギのこと。昔は蓍萩の茎を占いに用いたそうです。

莖
「く」は「草」也。下略也。「き」は「かたき」也。上略也。「くき」は草のかたき所なり。
菊
むかし、日本に菊なし。故に『萬葉』には菊の歌なし。後にもろこしよりわたりし時、音を用ひて訓とし、哥にも「きく」とよめり。又「かはらよもぎ」と云。
※ 「哥」は、歌。
菠薐
唐音也。
葶藶
「夏無」也。此草、秋生じ春さかへ夏かるゝ故、秋冬春はありて夏はなき也。「なつ」の「つ」の字、清濁通用す。和語に例おほし。
すゝき
「血つき」なり。すゝきのくきに、あかくして血のつきたる如くなる所あり。「ちつ」と「すゝ」と通ず。一説に、秋すゝしき時、穂にいづる故、名づく。「し」を略せり。
竹實
「自然粳」也。竹のみなり。仏書に出たり。こえを用ゆ。うへずして自然に生ずる「うるしごめ」也。竹の実は其味「粳米」のごとし。

萵苣
其根、甚ちいさし。他草にかはれり。
菖蒲
「あや」は「あざやか」也。「め」は「見ゆる」也。他の草より色うるはしくあざやかに見ゆる也。「せきしやう」の事也。花さくあやめは「渓蓀」「はなあやめ」と云。
※ 参考:『古事類苑 第50冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
木賊
「と」は「砥」なり。木をみがく砥草なり。又「とぐくさ」也。
蒜
「に」は「にほひ」也。下を略す。「にく」は「にくむ」也。「む」を略す。にほひあしくして、にくむべし。
韮
「に」は「にほひ」也。「ら」は「きらふ」の上下を略す。にほひあしくして、きらふべし。
木通
「あけび」は「あかみ」也。其実あかし。「か」と「け」と通じ、「み」と「び」と通ず。
酸漿草
此草に「蝥」と云虫おほくつく。
冬瓜
「かも」は「氊」也。『順和名』に「かも」と訓ず。毛むしろ也。冬瓜に毛あり。氊のごとし。故に名づく。
※ 「氊」は、氈の異体字。
蓴
「ぬ」は「沼」也。「なは」ゝ「縄」也。沼の内にありて、くき長くして縄の如し。
※ 「蓴」は、ジュンサイのこと。
百合
「ゆすり」と云意。「す」を略す。くき高く、花大にしてゆする也。「ゆする」とはうごくをいふ。
※ 参考:『古事類苑 第50冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖
