【観音霊験記 西国巡礼】第二十一番丹波国穴穂寺/辰女

『観音霊験記 西国巡礼二十一番丹波国穴穂寺 辰女』

觀音靈驗記 西國順禮二十一番 丹波國穴穂寺
かゝる世に むまれあふみの あなうやと
おもはでたのめ 十こゑひと声
※ 「穴穂寺」は、穴太寺のこと。
※ 「むまれあふみの」は、生まれあふ身の。
※ 「あなうや」は、あな憂や。
※ 「十こゑひと声」は、とこえひとこえ。

辰女
亀山の城下なる金谷某の下女 辰は、常に此佛をふかく信じて、この御寺までは一里半もあるに、毎月の御縁日には参詣をかゝさず、乞食、犬猫までにもよく食をあたへ、慈悲ふかき者なりしが、

その頃、世間一統の疫病にふして、十死一生の苦をせしが、ある夜、主人、家内を見廻るとき、辰女のふしどを伺へば、光明かゞやくがゆへ、ふしぎなることゝ、急ぎ辰をおこしければ、辰驚き目を覚して、主人にむかひ
「あら有難や、たゞ今、夢に穴穂寺のものなるとて、私が口へ柳の枝もて、鉢の水を □ ぎ給へば、苦みたちどころに癒たり」
と語り、その翌日より食づきて、間もなく全快に及びしゆへ、いよ/\信心していのりければ、末安楽の身となりしは、誠にありがたき御利益なり。
※ 「穴穂寺」の読み「イ」は、「ほ」だと思うのですが、見えるままに「イ」としました。あなほでら。
※ 「全快」の読み「ほんぶく」は、本復。病気が全快すること。

※ 参考:『西国・秩父・坂東百観音霊験廻拝記』『西国三拾三所観音霊験記図会』『西国三拾三所観音霊験記図会』『西国三拾三所観音霊験記図会』(国立国会図書館デジタルコレクション)
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