見出し画像

【生月島捕鯨】勇魚取絵詞(1)生月御崎沖 背美鯨 一銛二銛突印立図

勇魚取絵詞いさなとりえことば』は、江戸時代後期に行われていた肥前国松浦郡生月いきつき島での捕鯨の様子を記した書物です。国立国会図書館デジタルコレクションに収蔵されている『勇魚取絵詞(全三巻)』をコツコツと読んでいきたいと思います。絵も文字もとても美しい作品です。

📖

生月御崎沖 背美鯨せびくじら 一銛ひともり二銛ふたもり つきしるしたつる 圖

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『勇魚取絵詞 [1]

鯨魚、つなかゝりながら、なほのがれんとて、ふねクコミそと浮出うきいでいきつき、うしほふきときわれおとらじとこぎよせ、羽指はざしどもおもてたちあがり、もりひねりて、けんへだゝれるまゝに、投突なげづきすれば、万銛よろづもりくさとくじらたて、一番よろづ、ニ番よろづつきて、ふねしるしたてて、つき/\よろづつくほどに、二三本あるゐは三四本におよべば、鯨、海底にいりのがる。

※ 「生月御崎」は、生月島の最北端に位置する半島状の地域。御崎みさき
※ 「背美鯨せびくじら」は、セミクジラ科に属するクジラ。ヒゲクジラの一種。
※ 「圖」は、図。
※ 「おもて」は、船の船首のこと。

一ノモリ

此時このときよろづつきたる根苧ねそかぐすしらせなどいふ。縄をあまた十尋ひろつぎて、其ひきゆくにまかせ、のばしやるなり。よろづは、生銕なまかねにて、さきかぶらなれば、まがれどもおれず。ひけどもぬけずして、鯨魚いかにすれどものがるゝよしなし。

※ 「あまた」の読み「あまた」は、数多あまた

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『勇魚取絵詞 [1]

さて、ほどなく浮出うきいづもあり、半時ばかり浮出うきいづるもあり。くじらいづれば、おの/\まちつけて、よろづつきたつるに、よわくるしみて、そのうなるこゑ、らいのごとし。

海面かいめんなりて、朱色あけ波浪なみたちさわげり。かく苦痛くつうときにも、性質せいしつ柔和にうわうおにて、就中なかにも背美せびおだしければ、くるひふれふねそこのふこともなし。

二ノモリ

鯨、海中にいりにげゆくまゝに、ふねひきせしたひつゝ、うへあらわるゝたびに、よろづなげつく也。かくてよわらば、剱切けんきりせんと、刃先はさきそろへて、まちまふけたるは、もひゆるばかりおそろし(剣切けんきりとは、くじらつなにまとはれ、もりつかれてよはりたるをて、羽指はざしども、持双舩にのりうつり、ごとにけんをもつてつきつくをいふ也)。

※ 「まゝに」の漢字は、誤読しているかもしれません。
※ 「もひゆる」は、身もひるむという意味でしょうか(もしくは、身も日和ひよる)。
※ 「持双舩」は、捕えた鯨を運漕する船。二艘の船に太い柱を渡して組船とし、その間に鯨を結びつけて岸へ運漕します。持双船もっそうぶね

三ノモリ

くじらせいによりて、つなちかおひよせても、からぬをば、羽矢銛はやもりもてつくおどろきて、つななかにげいるなり。またつなやぶりにげいづるをば、おいかけて羽矢はやつくに、おどろきまど躊躇ためらふ。爰をつきとむるが手柄てがらなりと、おの/\はげみ、褒美ほうびもの をもることなり。

※ 「にげいる」の「派」は、誤読しているかもしれません。
※ 「爰」は、誤読しているかもしれません。ここ。

※ 参考:『日本科学古典全書 第11巻 第3部』(国立国会図書館デジタルコレクション)



筆者注 「 もり(金+守)」という漢字を、「銛」として記載しています。
● は解読できなかった文字を意味しています。新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖