職人は、木のどこを見ているのか。
滋賀県米原市で100年以上続く建具屋、笹木木工。
住宅の障子や襖、引き戸などの建具をつくり続けてきた会社です。
現在は、三代目と四代目の親子を中心に、建具や木工製品づくりが行われています。
今回は、長く使われることを前提に、どのように木が選ばれているのかをたどります。
◼︎ 木の種類の違い
笹木木工のお二人と、木材の話をしているとき、こんなお話を伺いました。
ひのきを使うと白っぽく、硬さが出る。
杉を使うと赤みが出て、やわらかな印象になる。

そして、杉には中心に近い赤い部分(赤身)と、外側の白い部分(白太)があり、白太はやわらかく、赤身は比較的耐久性がある。
そんな木の特徴や違いを、ひとつひとつ教えてもらいました。
知らなかったことを知ると、木が急に身近になる。そして素直に楽しい。思わず前のめりになって話を聞いていた自分を思い出します。
この記事を書いていて、工場を訪れた日のことも浮かびました。
初めて見る景色、初めて見る製品、初めて聞く話ばかりで、ワクワクが抑えきれず、ずいぶん目を輝かせていたらしく、あとから「すごく楽しそうでしたね」と言われた記憶があります。
丁寧な仕事や、その工夫の背景にある考え方。
見た目の美しさだけではなく、その裏側に、グッと心が動くことってありませんか?
■ 種類だけでは決まらない

ただ、話を聞きながら感じたのは、単なる知識の面白さではありませんでした。
木材の種類や、どの部分を使うかは、設置する場所や使い方によって変わるそうです。
例えば、箱をつくるなら、長くもたせるために赤身を選ぶこともある。建具であれば、水場なのか、日当たりが強い場所なのかによっても選択は変わるそうです。
同じ杉でも、どこをどう使うかで寿命は変わる。
薄くすればするほど、木はクセが出るそうです。そのクセを見極めながら加工する。細く仕上げるなら、それに耐えられる材を選ぶ必要がある。
見た目の美しさだけではなく、10年後、20年後を想像して選ぶ。
木の種類だけでは決まらない。
どの部分を、どの環境で使うのか。
暮らしの中で10年、20年…と使い続けるものだからこそ、ひとつひとつの特性を見極めながら、それぞれに合った使い方を考えていく。
そうした選び方が、長く使い続けられる建具につながっていくのだと思いました。
とある寺院の建具を製作された際には、丸太を選ぶために何度も吉野へ足を運び、サンプルを作っては確かめる、という工程を重ねられたそうです。
一本一本違う木と向き合いながら、そこまで考えて選ぶ。
材料を選ぶ段階から、すでに仕事は始まっているのだと感じました。
■ 「何を支えるのか」から考える
オンラインでお話を伺ったとき、「ソーホース」のオーダーについても興味深いエピソードを聞きました。
ソーホースとは、天板を載せて使う脚のこと。
作業台や展示台としても使われる、シンプルな構造の道具です。
ホームページをご覧になった美術大学生の方から、作品を置く台として製作の依頼があったそうです。
完成したのは、粘り強く、美しい木肌を持つ「みずめ桜」のソーホース。

実はこのご依頼、初めは別の木材でのオーダーだったそうなのですが、話を進める中で、載せる作品の重さや用途を伺い、より適した材をあらためて提案されたとのことでした。
「大切な作品を置くものなので、耐久性もしっかり考えて作らないといけない。万が一、置いて耐えられなかった…となると、作品を壊してしまうことにつながるかもしれない。」
そんなお話もされていました。
「どんな木を使うか」ではなく「どんな使い方をするか」から考える
希望された木をそのまま使うこともできたかもしれません。けれど、用途を考えると、より適した選択があった。
木の知識があるからこそできる提案。
そして何より、使われる未来を想像しているからこその選び方なのだと思いました。
ソーホースは、改良も重ねられているそうです。同じ形をつくり続けるのではなく、そのときどきでより良いかたちへと整えていく。
そこにも、受け継がれてきた技術と、今も育ち続けるものづくりの姿勢が見えます。
■ あらためて見直される木という素材
木材という素材そのものが、あらためて見直されていると言われます。
環境への配慮や、時間とともに変化していく素材を楽しむ価値観の広がりも、その背景にあるのかもしれません。
けれど、木であれば何でも同じというわけではありません。
どんな木を、どの部分を、どんな環境で使うのか。そこまで考えてはじめて、違いが生まれるのだと感じました。
笹木木工の手がける製品は下記サイトに掲載されています。今探している「ちょうどいいもの」が、見つかるかもしれません。ちょっとのぞいてみてはいかがでしょうか?
※ソーホースなど、一部SOLD OUTとなっている製品や、掲載のない製作、建具の製作については、公式サイトよりお問い合わせやご相談を受け付けていらっしゃるとのことです。
取材・執筆:もくにか
木と木工の仕事に関心を持つメンバー3名によるチーム。BIWAプロジェクトの一環として工場を訪ね、その仕事に触れたことをきっかけに、対話を重ねながら取材・執筆を行っています。
