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【小説】「騙される快楽」第四話

第四話

 あの頃の「根拠のない自信」はどこへ行ってしまったのだろう。経験値が増えるのと同時に、慎重さも増していく。お月見用フラワーアレンジメントの黄色いピンポン菊を月に見立て、梅酒と月見そばを一人楽しんだ。

 仕事は相変わらず低迷していた。「ウーマンズアイ」九月号発行から二週間が経ち、かろうじて同じ時期の先月分の売り上げ部数を僅かに上回っていた。売り上げ結果が発表されると、霧島編集長は各部署を回って来る。編集長の姿が見えたので、その場に居合わせた全員が起立して編集長に一礼した。それぞれの仕事内容に対して助言をいただく耳の痛い日となっている。
「莉子さん、ぎりぎりセーフです。でも、このまま売り上げ部数が伸び悩むと廃刊です。何か新しいカンフル剤になるような特集をした方が良いでしょうね」

 霧島編集長の眼光は鋭かった。
「はい、編集長。どんな取り組みが良いと思われますか?」
 以前なら真っ向から否定して、反感を買っていただろう。素直な反応に我ながら驚いた。
「編集部だけで雑誌を創ろうとせず、読者を巻き込んで一緒に作っている感じを出した方がいいのでは?」
「読者と一緒に作る?」
「そうです。今は、『体験』や『日常』を売って、自分の暮らしに役立ててもらう時代なのです」
「処方箋、でしたよね? 検討してみます」

 「『体験』や『日常』を売る・・・・・」確かに、そういう他社雑誌を見たことがある。公募して選んだ読者モデルにインフルエンサー的役割を与えて半径2Kmくらいのことを記事にさせて掲載している雑誌。顔写真や暮らしぶり、お勧めスポットなども載せて、ファンも同じように体験できる。そして、その体験したことが自分の日常に反映されていく流れだ。そういう類のことが読者に受けることはとてもよく分かる。
 でも、二番煎じではだめなのだ。もう少し工夫をしなくてはいけない。何か良いアイデアを探さなくては。この案を企画に乗せることができれば、霧島編集長との亀裂も少しは改善されるような気持ちがしたのだ。

 トップと関係を崩したまま会社で働くことがどんなに気を遣い、エネルギーを消耗させるか、この二年間で嫌というほど感じている。親密な間柄から、一気に下降線を辿り亀裂は入ったままだ。成功させるためには、自分のアイデアだけでなく、誰かの考えを聞いてみた方がいい。それも読者に近い立場の意見を取り入れる方がいいのだろう。
 ふと、蓮さんの顔が浮かんだ。ウエブアプリケーションを作る仕事をしているので、良い視点を与えてくれそうだという期待感が芽生えた。

 この日の帰りの電車は、珍しく座席に座ることができた。窓から見える景色はいつもと違ってまだ明るく、夕日が差している。高層ビル群を、朱色の光が包んでいく様子は、これから訪れる暗闇の孤独から人々を守るための結界であるかのように見えた。これまで私は、蓮さんに自分の職業のことなど個人的な話を伝えていなかった。もう少し、信頼してみようという気持ちが芽生えた。早速携帯を取り出すと、メッセージを送った。

《こんにちは。相談があります。私は「ウーマンズアイ」という雑誌の記者をしているのですが、売り上げ部数が伸び悩んでいます。上司から新しい特集をしたらどうかと提案されました。読者が参加できるような企画、何か良いアイデアはないでしょうか?》
 すると、すぐに返信が届いた。
《その雑誌、書店やコンビニで見たことあります。すごいね、莉子さん。読者と一緒の新しいアイデアですか? 対象年齢が僕らくらいの女性だから、例えば、雑誌のウエブページに皆さんの夕食の一枚を載せてはどうでしょう? 明日の夕食の参考になりますよ。それにたくさんの人が気軽に参加できそうでしょ?》

 丁寧な返信に好感をもった。確かに、夕食を写真でアップするくらいなら、たとえ特別な情報をもっていなくても気軽に、多くの人に親しんでもらえる企画になるだろう。
《蓮さん、素敵なアイデアをありがとうございます》
《どういたしまして。僕は、莉子さんの夕食が見たいだけですよ。真っ先にあなたの写真をチェックします》

 特有のユーモアは、海外で育ったからだろう。感情表現がストレートでこちらが照れくさい。
 明日、編集長に伝えたら、喜んでくれるだろうか? そう思った瞬間、霧島編集長に対して「認めて欲しい」とまだどこかで思っていて、期待している気持ちがあることに気付いた。


 翌朝、私はドアの前でノックすることをためらっていた。もしも、アイデアを一蹴されたらどうしよう? そう思うとなかなかノックする気になれなかった。持参したプレゼンファイルの端を何度も捲っては閉じた。
「あれっ? 莉子さん。どうぞお入り下さい」
 背後から、いつになく温和な雰囲気の声が聞こえた。後方を振り返って会釈をし脇へ避けると、霧島編集長が木製の重厚なドアを開けた。深々と一礼して編集長室に入った。霧島編集長は広いデスクの肘掛け椅子に座り足を組んだ。窓から降り注いだ朝日で、後光が差しているかに見えた。
「あの、昨日アドバイス頂いた件を考えてきました」

 何を言ったらいいのか一瞬、頭が真っ白になった。ファイルを抱きしめたまま深呼吸をした。
「じゃあ、説明してもらおうか」
 プレゼンファイルの向きを直して、編集長に手渡した。ドアの前でいじっていた端は捲れたままだ。
「こちらの提案書を作ってきましたので、お読みください」
 私は霧島編集長がページを繰るのに合わせて、プレゼンを進める。ところどころ声が震えてしまう。威圧的な眼光の鋭さに負けじと、説明を続ける。

 誰でも気軽にウェブ版の「ウーマンズアイ」に参加できるように、夕食の写真と短い説明をアップするコーナーを作ってはどうかということ、それが雑誌と連動するように投稿された作品の中から良いものを数点、次号の雑誌に掲載するという特典について説明した。他社雑誌の企画と被らないように留意した点についても触れた。
「夕食の写真を送る際に、何か縛りは設けないのかな?」
 試されていると感じ、咄嗟に答えた。
「そうですよね。何も縛りがないとばらばらで比較することも難しいので、週ごとに料理のお題を掲げてみるのが良いと思います。例えば今月の第一週は挽肉を使ったお手軽料理、第二週は豚バラ肉を使ったお手軽料理、第三週は白身魚を使ったお手軽料理、第四週はおもてなし料理のように、お題があった方が楽しめますよね」

 編集長は呆れたように、小さく溜息をついた。
「ねえ、莉子さん。うちはね料理雑誌じゃないんだよ」
 編集長の声が低く響いた。右繭はつり上がっている。怒らせるつもりなんて全くなかったのに・・・・・・。
「食材の縛りは料理雑誌に任せればいいでしょ。僕たちの雑誌は、そこじゃない」
「はい、すいません・・・・・・」
 気まずくなった私は、深々と一礼して、編集長室から逃げるように退室した。

 自宅に戻った私は、蓮さんに今日の出来を報告した。
《莉子さんが悲しいと僕も悲しいです》
 この一文を読んだ途端、私の涙腺はゆるんだ。心を閉ざしたくなるような出来事があった時、誰かが優しく話を聞いてくれるのは救いだ。鉄の扉を閉じようとした瞬間に届いた蓮さんのメッセージが、扉の隙間が僅かに開いたままストップを掛けてくれた。やわらかい感情が心から湧き出してくる。あたたかい陽だまりのようなその言葉に、心を包まれた。

 「ピロン」写真が送られてきた。蓮さんの娘さんなのだろうか? セーラー服を着たかわいらしい女の子。とても朗らかな笑顔で微笑んでいる。
《僕の大切な娘なんです。別れた妻からようやく親権を譲ってもらうことができました》
 どのように返信して良いのか戸惑った。これまで、プライベートな話まで踏み込んだことがなかった。考えている間に次のメッセージが届いた。
《彼女はケーキが好きです》

 「ピロン」次はケーキと飲み物の写真だった。
《これは週末に僕と娘が作った。コミュニケーション大事です》
 やわらかそうなシフォンケーキに、生クリームといちごソースが添えられていた。
《親子の絆を大切にされてるんですね》
《彼女が元気に成長すること、僕の願い》
《元気が何よりです》
《もう遅い。おやすみなさい。甘い夢を見てね》
《仕事の話を聞いて下さってありがとうございます》

 突然、会話が途切れるように感じるのは、彼が英語で思考しているからなのだろう。私は蓮さんの娘さんの写真をもう一度眺めた。とても素直に育っている雰囲気が伝わってきた。仕事のことを、同僚以外に相談することなんて今までなかった。私の話をきちんと聞いてくれるこの人に、いつか会ってみたいと思った。

 翌朝、重い足取りで電車に乗る。霧島編集長は、夕食の写真を投稿すること自体には反対していなかった様子だ。ということは、料理雑誌と被らない縛りを設ければ良いということなのか? 例えば「ここぞという仕事の前に食べたい一品」とか「クレーム対応した日に食べたいデザート」とか、仕事の場面と関連づけてみるのはどうだろう? 

 仕事上の出来事や感情と結び付いたものにすることで、料理雑誌との差別化を図ることができるのかもしれない。前向きに思考できるのは、きっと蓮さんのおかげだ。私は、携帯を取り出して蓮さんから送られてきたかわいい娘さんの写真を眺めた。

 出社すると自分のデスクに荷物を置いて、すぐに編集長室に向かった。彼は、早朝出勤であることを知っている。ノックをすると中から返事がした。
「失礼します」
「莉子さん、連日早朝からの御出勤ありがとうございます。何か?」
 編集長はデスクチェアに腰掛けて、重々しく足を組み替えた。
「はい、昨日の件ですが、夕食の写真投稿のしばりは、『ウーマンズアイ』が働く女性を応援している雑誌であることから、『ここぞという仕事の前に食べたい一品』『クレーム対応した日に食べたいデザート』など仕事の場面と関連づけてみる案を考えました。自分の仕事上の出来事や感情と結び付けたものにすることで、料理雑誌との差別化を図ることができます」
「それだね! 莉子さんやってみてよ」

 霧島編集長の笑顔を久しぶりに見た。こんな風に笑う人だったのだ。私はとびきりの返事をして退室すると、すぐに或る部署へ向かった。
 オンライン制作部署のスタッフに経緯を説明し、新たなコーナーの制作をお願いした。
「そのくらいなら、すぐにできますよ」
「おっ! 頼もしい。さすがだね、工藤くん」
 工藤くんが「ウーマンズアイ」ウェブ版に、「夕食アイズ」を新設してくれた。簡単に写真が挿入できて、コメントを書いて投稿できる仕組みだ。  

 第一回のお題は「仕事運をアップしたい時の夕食」とした。早速アカウント名で昨夜の夕食を自ら上げてみた。いわゆる、サクラというヤツだ。誰かが投稿しているのを見ると、安心して自分も投稿してみようと思ってくれるだろう。そして優秀な工藤くんは、ウェブ版「ウーマンズアイ」を見た人が、新コーナーに気付いてくれるような誘導の仕掛けまで作ってくれた。今日の夕食を何人の人が投稿してくれるのか、気持ちが高ぶった。

 早速、デスクで昨日の夕食をアップした画面を紹介すると、同僚の溝口さんが新しいコーナーの門出を祝してくれた。
「木村先輩、良かったですね」
 彼女は微笑みながら、向かいの席からソーダ味の飴を三つ手渡してくれた。その味は、いつもよりもシュワシュワ感が弾けていた。

「私も今晩の夕食をアップしてみますね。『仕事運をアップしたい時の夕食』はやっぱりステーキかな!」
「ステーキとは豪華ねえ。楽しみにしてる」
「すっごい上手に撮りますから、三倍豪華に見えますよ」
 物撮りは、ライトの当て方が命だと力説してくれた。
「溝口さん、インスタのフォロワー数がすごいんでしたね」
 彼女は「うふふ」と笑いながら退社して行った。時代に乗るのが上手なのだ。三十代半ばでもう結婚もして子供も一人設けている。完璧な人生設計が眩しく思え、自分がなんだか惨めに思えた。

 先ほど投稿したばかりの昨日の普段着の夕食を削除した。帰りに食材を買って、今晩の夕食を投稿しよう。溝口さんのステーキをライバル視する訳じゃないけど、せめて見窄みすぼらしく見えないようにしたいのだ。華やかな彼女からしたら、私は何も持たない痛い五十代なのだから。恋人も、子供も、一緒に住む親友もいない淋しい一人者に映っているに違いない。
 帰りの電車でつり革に掴まりながら携帯で料理アプリを覗いた。『仕事運をアップしたい時の夕食』は旨辛チキンにしよう。最寄り駅付近のスーパーで手羽先を買って帰ることにした。

 帰宅すると、手羽先にすぐ下味を付けることにした。コチジャン、ケチャップ、料理酒に、チューブにんにくと鶏ガラスープを混ぜ二十分くらい漬け込むことにした。その間に、着替えをして、韓国のりを散らすだけの簡単チョレギサラダを作った。下味の付いた手羽先に、片栗粉をまぶして油でからっと揚げていくといい香りが漂った。

「今日は、缶ビールだ!」
 心の声のつもりだったが、一人暮らしの部屋に響いた。缶ビールは、泡の比率を意識しながらグラスに注いだ。一人で乾杯をする前に、忘れずに料理の撮影をした。テーブルには、フラワーアレンジメントも写り込むように配置した。

 溝口さんのアドバイスを思い出して、デスクライトを持ち込んで明るさを足して撮影した。確かに実際よりもよく写っている。美味しそうにしか見えない。満足感が高まった。コメントには「料理の辛味成分が自分を奮い立たせ、仕事運をアップさせてくれる」と入力してすぐにアップした。旨辛な味にビールがたまらず、一人の宴はほろ酔いで楽しく進んだ。

 程なく、私の「夕食アイズ」の写真にイイネが付いた。投稿ページを開くと、アカ名は違うけれど、コメントの雰囲気から蓮さんではないかと思った。続いて、DMが届く。 
《あなたの夕食の写真に最初にイイネを付けた人は僕》
《ありがとうございます》
《旨辛チキンがおいしそう! 一緒に乾杯したい》
《いつか、ぜひ》
 と送るとしばらく返信がなかった。一時間ほどして、蓮さんからDMが届いた。

《莉子さんに自分のこと伝えたい。僕は、大切な娘の親権を奪い返すためにある勉強会に参加しています》
《勉強会?》
《今週土曜日、本当はあなたを食事に誘いたい。でも投資セミナーがある。また、今度にしよう》
《投資セミナー?》

 FX投資セミナーの案内が送られてきた。明後日の十七時から十九時と記されている。
《僕は、このセミナーのおかげで損をしなくてすんだ》
《蓮さん、セミナーの後、食事に行きませんか?》
《僕は嬉しい! 莉子さんも良かったら、セミナーに参加してみませんか? きっと莉子さんの記事のトピックスに、役立つと思います》

 一瞬戸惑ったものの、FXには興味がある。
《難しそうですけど、参加してみます》
《では、莉子さんの分も申し込みます》
 思い掛けず、食事の約束をすることになった。鼓動は速まり、頬が朱色に染まっていくのが分かる。実際に会ってみたら「思っていた人と違う」などと言われたらどうしよう。不安が押し寄せる。残っていたビールを一気に飲み干した。
 縁があれば繋がっていけば良い。縁がなければ一度会うだけでも構わない。それでも今週末が待ち通しい。私に足りなかった「投資の分野」を一緒に勉強してくれる人を発見したのだ。今からでも遅くないのかもしれない。   
 少しでも老後のための課金に備えておくことができれば安心だ。蓮さんは、実際に利益を出しているのだというのだから有効な手段なのだろう。

 翌朝は、満員電車がどんなに密集していようと、とても清々しい気持ちでいられた。今週末の食事の約束が私を勇気付けていた。
 会社に着くと、同僚の溝口さんが、待っていましたと言わんばかりに携帯の画面を見せてきた。溝口さんの昨日の夕食の写真を「夕食アイズ」に投稿してくれたのだ。熱々感とジューシーさを感じるステーキに、色とりどりの野菜が添えられている。
「これは素晴らしいわ」
 心から言うと同僚の溝口さんは、嬉しそうだった。
「このステーキの赤身がちょうどよく写るようにしたんですよ」
 得意気に話してくれた。インスタでも相当目立ちそうなプロの仕上がりだった。
「この旨辛手羽先は、木村先輩だとして、こっちの写真は誰でしょうね?」
 蓮さんの上げたガパオライスだった。パプリカの赤や黄色がとても美しく、スープやサラダまでついて、まるでお店並の実力だ。蓮さんのそういうところが好感をもてるというか、尊敬してしまう。
「誰かしら? 工藤くんが新コーナーを目立つようにしてくれたおかげね」
「男性っぽいですよね。ひょっとしてシェフだったりして」

 なんとかごまかすことができた。今朝の時点で、私と溝口さんと、もう一人しか投稿していないので悪目立ちするのだ。数日のうちに、もう少し増えるに違いないと確信した。アクセス数が他のページより良かったからだ。
 次の特集の準備がとてもはかどる日だった。「老後に住みたい場所ランキング」各リサーチの一位の都市に取材依頼の目星をつけた。そして、片っ端から電話をして熱意を伝えた。すると、東京と静岡の移住者にアポを取ることができた。北海道については、まだ予算がつくかどうか微妙なところのため、まだ動いていない。東京と静岡に取材に行く日は来週だ。老後に移住を始めた現地の人に直接話を聞いて生の情報を届けたい。

 自宅に戻ると、「夕食アイズ」用にきちんと一人分の料理をした。良い習慣だ。蓮さんも見てくれると思うと、少し背伸びをした盛り付けとなり、結果として食べる自分の満足度もアップしている。
 今週中は「仕事運をアップしたい時の夕食」だ。同じテーマでも毎日、献立を変えて投稿している。題名のある料理のレパートリーが増えつつある。  
 今日は見栄えはいいが簡単な料理で済ますことにした。帰りにスーパーでサーモンの刺身とアボカド、錦糸卵を購入。御飯を適度な酢飯にして、円形に盛り付け、サーモンや錦糸卵、家にあったきゅうりと三つ葉を添えて、薔薇の花びらを模した華やかなちらし寿司を作った。

 ものの十分足らずで完成した割に、写真映えするところが嬉しい。勿論、「仕事運をアップしたい時の夕食」にぴったりのメニューとなった。投稿すると、すぐに蓮さんからのイイネが付いた。そしてコメントではなくDMが送られて来た。
《莉子さん、土曜日楽しみです。FX投資セミナーも申し込み完了!》
《ありがとうございます》
《莉子さんは僕の大切な人とセミナー講師に御紹介しましたよ。もし希望あるなら、セミナーの際に講師の説明を受けながら初FX投資をして頂くことできます。その際に、オンライン口座が必要になる。事前に準備があるとスムーズです》
《分かりました。蓮さんが一緒なら心強いです》

 オンライン口座の開設は、危険を伴うことを知っていたのでこれまでやってこなかった。でも蓮さんが一緒なら安心だ。彼は仕事柄、投資のことに詳しいらしいから。
 翌日、仕事から帰ると、オンライン口座開設の手続きを恐る恐る行った。同僚の溝口さんも「わざわざATMに行かなくて便利」だと言っていた。私が考えていたよりも安全なもので、案外みんな使っているものなのだと知った。 




尚、この物語は「詐欺行為」を肯定するものではありません。