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50. ほころびタンシチュー

 彼女を好きになった男性たちは皆姿を消してしまうという噂。でもチャーミングな彼女を前にしたら大抵の男は前に進んでしまう。彼もその一人だった。
 ついに部屋にお呼ばれし彼は歓喜した。ケーキとワインと花を手にチャイムを鳴らす。その指先も踊っている。ドアが開いた瞬間良い匂いが彼の鼻をジャックする。
 「シチューだね」彼は挨拶より先にそう言ってしまった。彼女は笑って「今日は特別な日だからタンを入れてみたの」照れつつもどうだ!という顔をする。そういうとこ、と彼女を抱き寄せてプレゼントを渡す。
 「さっそく」蓋を開けると目の前が湯気でいっぱいに。我慢できず彼は熱々のシチューを頬張る。コクがあり野菜も柔らかい。何よりもタン、口に入れると綻びとろけなくなった。いつの間にか鍋のシチューの表面が波打ち回り始め真ん中にブラックホール状の穴が空いた。その中におかわりしようとした彼のとろけた舌が吸い込まれ、次の男が来るまで煮込まれ続ける。

#毎週ショートショートnote #ほころびタンシチュー

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