『ツミデミック』一穂ミチ(著)/2024年上半期候補作にぬるっと入り込んで直木賞(著者談)
一穂ミチ氏は2025年1〜6月、日経夕刊プロムナード欄(毎週火曜日)でエッセイを連載中。2月25日の話は面白かった。
少しだけ引用する。
友人の粋な振る舞いに、自分の「大阪のおばちゃん力」はまだまだだと痛感させられた。そして無印の「おばちゃん」ではなく「大阪のおばちゃん」のほうが何かいいよな、と思っている自分に、これを書きながら気づいた。ブランド感っていうか、地場産品みたいでいいじゃないですか。
「大阪のおばちゃん力」途上中の一穂ミチ氏、2020年過ぎから一般的な?小説を書き始めたとのこと。元々はBL小説の大家で、アニメや実写の映画になった作品もあるらしい。
noteも継続中。宣伝だけではなく「小話」のマガジンもある。
直木賞を受賞した時の様子はこちら(光文社 note)
【選評の概要】https://prizesworld.com/naoki/senpyo/senpyo171.htm
ロングインタビューはこちら(光文社 note)。
感想
いつものとおり、感想という名の短編集備忘を残しておきたい(なので、ネタバレもあり)。
違う羽の鳥
宅配サービスで、ガチャしてみる主人公。
最近、街でウーバを見掛けないけど、こんなサービスをしたら需要があるかも。
「美男美女がお届けする(かも知れません)」
ロマンス☆
「ロマンス詐欺?」と思いきや、亡くなったはずの同級生?
真実は闇の中。
憐光
15年前に死んだ主人公が白骨死体で見つかる。
本人が霊になり真相を知る。
特別縁故者
この物語もそうだが、既婚男性の気が小さい。
独居老人から大切な贈り物。
祝福の歌
半世紀生きてきて初めて実母から聞くハッピバースデー。
登場する女性が年齢に関係なく、皆強い。
さざなみドライブ
ネット繋がりの集団自殺を望む人たち。
殺人を企む同乗者が分かり、みんな生きて行くことに。
雑感
どの物語も、コロナ禍の犯罪短編小説集。
登場人物は少ないが、それぞれの思惑が積み重なりストーリーの厚みが増す。
序盤の短編はバッドエンドだが、終わりに近づくにつれハッピーエンドではなくても「生きて行こう」という気持ちが伝わる物語。読み終わって気持ちが沈む感じはしない。巧みな気持ちの描き方で、場面の雰囲気と空間を感じさせる。
同じ直木賞候補になった作品「地雷グリコ」とは全く系統が異なる小説なので比較するものではないけれど、こちらの方が小説を読み終えた満足感があり、「自分には書けないな」と思わせる短編集。
読後にこのインタビューを読むと著者の思惑どおりに読んだようだ。
MOH
