"I wanna get back where you were" ファーストガンダム半スピンオフ作戦『テムよ…』 SCENE 13
話を戻します。雨宿りが偶然を呼び、少女(ララァ)と短く言葉を交わしたアムロは、父のもとに再び向かいます。
さて、昨日の場所にやはり父はいました。まじかー、まじでここなのかー。信じたくなかった、と思います、アムロ。多分会話はちょっと前からあったっぽくてその途中から、まずテムさんのセリフ。
「…うーんそうか、私しゃ嬉しいよ、お前がガンダムのパイロット…」
やはりそうです、父さんはアムロがガンダムのパイロットと知ってていろいろ聞いてきたりあの回路を渡してきたわけではありませんでした。この日アムロは改めて父に、今は自分がガンダムのパイロットだと告げてみたわけです。知ってるか知らないかで、帰ってくる答えは違ってきますからね。結果は、知らない、でした。いやー知らんのかー。
しかもこれ、アムロが戦地で戦ってるってことなのに、やっぱり父さん、アムロを心配してくれません。アムロそっちのけですぐさま、
「昨夜(ゆうべ)渡した部品は、どうだった?!」
と聞いてきます。
戦地に出てること自体で心配はしてくれないんだけど、ふと気になりました。あの回路をガンダムに取り付けて試せとはいったけど、操縦してるのがアムロだってなると、万が一あの回路がちゃんと動いてくれてないと(万が一じゃなくて動かないけど)直接息子に迷惑をかけることになる。それは申し訳ないぞ、と。アムロにとってはあまり嬉しくない心配の仕方です。
だいたいアムロは、あれを渡されたことは、忘れたことにしたかった。あれは悪い冗談と思いたかった。なので、またしても本気で聞いてきてることに戸惑いを隠せず、小さな声で「え?」と言うのが精いっぱい。
「ほら!お前に渡した新型のメカだ、え!あれは絶大な効果があっただろ?ん?アムロ。」
いやあ、マジなのか…。あれで絶大な効果って、あれで新型ってそりゃないよー。だいたいジオンのモビルスーツを参考にって、どのモビルスーツのこと言ってんだよ。時代はいまやモビルアーマーだぜ。まいったなー…。
もうここは大人対応しかありません。
「え?えぇ…そりゃもう…」
はい!間髪入れず「そうかぁ、うまくいったか、はっはっは…、ようしやるぞやるぞ、じっくり新開発に打ち込むぞー、はっはっは…」
そう言って後ろを向いちゃうテム。もうこっちを向いてもくれません。アムロが今そこにいることが全く頭にないって感じです。ぶつぶつ言いながら無造作に机の上をかき乱して、本やら鉛筆やらを机の下に散乱させます。BGMまで突然止まっちゃって、緊張感ただよわせちゃう始末。「と、父さん…」
孤独に図面に身をかがめる寂しいモノトーン演出の父に涙を浮かべ、その場を後にするアムロ。
。。。。
バギーに乗るアムロの助手席は空いていました。対話の成立の仕方次第では、父をホワイトベースに連れて行ってもいい、と考えていたとしてもおかしくありません。ホワイトベースもガンダムも、彼が手掛けたものです。彼にはあの艦に戻る権利があるはずです。今でも。
しかし、彼の方からそれを拒絶してしまいました。わざわざ自分からガンダムのパイロットが自分だと、自分はガンダムと近いところにいると教えたのに。結局昨日と何も変わらなかった。むしろ昨日よりおかしい。今の父は息子である自分のことには興味がない。実際のホワイトベースやガンダムにも。現実に興味がない。
お話には出てきませんが、アムロが小さいころ、サイドの建設を見せてくれたときの彼のまわりには、きっとたくさんのスタッフがいたでしょう。それをまとめる父を、アムロは誇らしく見ていたと思います。そんな姿とはあまりにもかけ離れてしまった父。
幸いここは中立サイド。ここで静かに暮らしている方が、今の父には幸せなのかもしれない。あのときサイド7にザクが襲ってこなかったら、テム博士はそのままサイド7に残って開発を続けることになってたのかもしれません。昨日父が言った、「戦争が終わったら一度地球に帰ろう」というセリフが、そこは本音だとしたら、これを叶えてあげられる未来が来るか、今は分かりませんが、そのときまでは、このままともかく生きててくれてるだけでも。
もちろんこの日のテムさんのセリフや奇行も、オーバーな部分は全て彼による茶番だった可能性もあります。前の日の夜も、テムはアムロに「またおいで」なんて言ってない。アムロが勝手に来ただけです。アムロ、もう分かるだろ、そっとしといてくれよ。あの回路でせめて役に立てたことは嬉しいよ(いや、そんなわけないんだけど。)、でも今の私は、あの場所に戻りたいと感じてはいないし、戻れる状態でもないんだ。
帰りのバギーの中でアムロが思い出してる回想シーン、サイド7での宇宙服の父が自分に向けて言った言葉は、実際の第1話のそれとは若干ニュアンスが違っています。時間が経つと記憶の上書きがされていくものです。アムロにとって、あのときのテムまで厳しい人だったかのように思い始めてもいるとしたら、ちょっと切ない。
そんな思いに気を取られ、バギーのタイヤがぬかるみにハマり、困っているところに通りかかったのがさっきの少女ララァと、なんとシャア・アズナブル。御覧の通り、軍人だ。そう、知っている。
いくら主人公とはいえ、一度にいろんなことあり過ぎのアムロです。バギーを引き上げてもらって、お礼の言葉もそこそこに走り去るアムロ。「どうしたんだ?あの少年…」と、シャアはつぶやきます。ララァは「おびえていたんでしょ」と答えますが、そう答えさせることで、自分を大きく見せる魂胆もありそうな気も…。わかってて答えてあげるララァの方が大人です。しょうがないなあ大佐ったら。やっぱり私がいないとだめね。沼らせないでくださる?
残念、正解は、2時間で帰らなきゃいけないから焦っていた、でした。
SCENE 14 →
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