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東京や世界の都市開発に見る投資時間軸の短期化


 東京は、世界の主要都市と比べても素晴らしい街だと私は思っています。

 しかし、近年東京で相次いで進行している大型の不動産開発プロジェクトを見ていると、どうにもパッとしないという印象を受けます。麻布台ヒルズなどは「日本一高いビル」と話題になったものの、訪れてみれば人影もまばら。虎ノ門ヒルズも同様で、いずれも人々の記憶に強く残るような存在にはなっていないようです。

出所)azabudai-hills.com

 そして、こうした開発は今後も続きます。東京駅周辺では「東京トーチ」プロジェクトや、野村証券の旧本社があった通称「軍艦ビル」の跡地でもビル建設が進行中。日本橋一丁目や二丁目でも巨大な再開発が行われ、丸の内では三菱UFJ銀行の本社建て替え計画もあります。次々と新しい建物が登場する一方で、全体としての魅力や新鮮味が希薄になっているのではないか。そう感じているのは、私だけではないでしょう。

出所)tokyotorch.mec.co.jp

ヒルズ型再開発の限界

 現在進行中の再開発プロジェクトを振り返ると、どうにも「目新しさ」が感じられません。多くは高層ビルの中にオフィスやホテルが入り、低層階には飲食店やショップ、公園や住宅も併設されている、この「なんでも詰め込み型」の構成は、2002年に開業した丸の内ビルに端を発しています。
 2003年には六本木ヒルズ、2005年には新丸の内ビル、2007年には東京ミッドタウンと、当時は新しい都市像として脚光を浴びたプロジェクトが相次ぎました。ヒルズ族という言葉が生まれ、外資系企業や高級ホテル、芸能人の居住も話題となりました。
 しかし、それから20年が経過した今、新たに登場するビル群には、当時のような「都市の未来像」や「文化の発信地」としての輝きが感じられません。

歴史を壊して未来を築く

 私が再開発に対して懸念を抱くのは、短期的な視点が強くなりすぎているのではないかという点です。
 例えば、現在進行中の「内幸町一丁目セントラルタワー」計画。このプロジェクトは第一生命の旧本社、東京電力、帝国ホテル、そして日比谷公園の一部を含む広大な敷地に、三井不動産が新たな超高層ビルを建設するというものです。

出所)tokyo-cross-park.jp

 この日比谷公園は、1902年(明治35年)に整備された歴史ある場所です。もともと江戸時代の大名屋敷跡に作られた都市公園で、西洋風の花壇や洋食レストランなどが今も明治の雰囲気を残しています。そんな貴重な公園の樹木約1,000本以上を伐採し、再整備するという計画が2023年頃から話題になりました。東京都は「可能な限り移植する」と説明していますが、明治から120年にわたって続いた風景が壊されることは避けられません。

出所)tokyo-cross-park.jp

再開発の短期化

 第一生命の本社ビルは1981年、帝国ホテルは1970年に建設されました。いずれも築40〜50年での建て替えです。こうした短期間での再開発は、このプロジェクトに限ったことではなく、東京全体に広がっています。再開発のサイクルがあまりにも短期化しており、街づくりに「永続性」や「文化的積層」が感じられないのです。
 東京は本来、江戸時代から計算されて作られた都市であり、その設計思想が現代にも影響を与えています。しかし近年の東京には、そのような長期的な都市像が失われつつあるように思えてなりません。

「時間」を忘れた都市開発

 ニューヨークのエンパイア・ステート・ビルは100年近く経っても色褪せず、ロンドンやパリには18世紀の建物がいまだ現役で使われています。
 しかし、近年これらの都市で行われている再開発、例えば、ロンドンのカナリーワーフやシティ地区、ニューヨークのハドソンヤードなどは、日本の新宿や丸の内と大差がないという印象です。
 その原因は建築資材や耐震構造の違いもあるでしょうが、私は資本主義の性質、すなわち「短期的収益の追求」が都市開発を均質でつまらないものにしているのではないかと感じています。投資家はより早く、より高い利益を求める。その要求に応えるため、デベロッパーはコストを削減し、安価な資材を使い、短期間で回収可能な設計を優先する。結果として、都市に長期的な視点が失われてしまう。

都市に「記憶」を残す

 かつて不動産の所有者は、貴族や名家といった長期的な視野を持つ存在でした。彼らは、自らの代だけでなく、子孫や次世代の都市の在り方を考えていました。けれども現代では、あらゆる投資の時間軸が短期化しています。それが都市開発にも波及し、今この瞬間の効率や収益性ばかりが重視されるようになっているのです。
 もちろん東京の再開発には他にも様々な論点があります。ここではすべてを語り尽くせませんが、歴史の流れを振り返ると、都市の開発が明らかに短期志向になっていることは否定できません。120年前に作られた日比谷公園が、わずか数十年で取り壊される。これを残念に感じるのは私だけではないでしょう。

未来の東京に

 私には、六本木ヒルズや麻布台ヒルズのような新しい公園よりも、明治時代から続く日比谷公園が22世紀まで残っている東京のほうが、はるかに魅力的だと感じられます。しかし、現在の資本主義の潮流の中でそれを実現していくのは簡単なことではありません。
 東京は長い歴史のある街であるものの、関東大震災や第二次世界大戦によって古い建物が少なくなってしまったという事情もあります。時間とは、いったん失われれば取り戻せないものです。だからこそ、これまで築いてきたものをもう少し大切にしてもよいのではないか、そう思わずにはいられません。
 この記事では東京の再開発について私の勝手な意見を申し上げました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


ご参考

 緊縮財政の支持者は、将来世代に「借金」を残すなとよく言います。しかし、財布がきれいでも、社会がボロボロであれば意味がありません。文化や社会そのものも、次の世代に残すべき重要な財産です。

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