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トランプ政権のロシア制裁と50日後の世界経済


 2025年7月14日、トランプ大統領は、NATO諸国からウクライナに対して、数十億ドル相当の最新兵器を提供することを表明しました。その中には、ウクライナが以前から強く希望していた地対空ミサイルシステム「パトリオット」も含まれています。さらに、これまで送付を避けてきた攻撃用兵器についても、送ることを排除しない姿勢を示しています。

出所)Reuters【2025/7/14】

 また、ロシアが50日以内に停戦に合意しなかった場合には、「セカンダリー・タリフ(二次的制裁)」を課すとも発表しています。関税率は100%に設定される予定で、実際に発動された場合は非常に大きな影響を及ぼすと見られています。

戦争集結への姿勢の変化と強硬路線への転換

 もともとトランプ大統領は、「ウクライナ戦争はすぐに終わらせる」と繰り返し発言してきました。しかし、大統領に就任してから半年が経過しても、戦争が集結する兆しは見えていません。
 当初は、ウクライナを突き放すような姿勢を取ったり、ロシアに歩み寄るような態度を見せていましたが、ロシアがその姿勢に応じなかったことから、最近ではむしろトランプ政権はロシアに対して強硬姿勢を見せてきています。今回のように、より高機能な兵器をウクライナに提供するとともに、二次的制裁を発動するという、ある種の「脅し」とも取れる政策に踏み切ったわけです。

ロシアと取引する国への制裁

 今回の二次的制裁について簡単に説明しておきますと、ロシアと直接取引をしている国に対してアメリカが関税を課す、というものになります。これまでもアメリカはロシアに対して制裁を科してきましたが、ロシアはそれを回避し、他国と取引を続けるようになっています。そこでロシアと取引する「第三国」に対しても制裁を行うのが、この二次的制裁ということになります。

影響を受ける国々

 このロシアに対する二次的制裁が発動された場合、当然、ロシアと貿易を多く行っている国々が大きな影響を受けることになります。特に、ロシアから原油や天然ガスを大量に輸入している国々が、アメリカに対して高額な関税を支払わなければならなくなるということです。

中国とインド

 大きな影響を受けるのが中国とインドです。2023年のデータでは、中国の原油輸入元のシェアは、1位がロシアで19%、2位がサウジアラビアで15%となっています。そしてインドに至っては、同年の原油輸入元の1位がロシアで、実に32%を占めています。原油に関しては、この2カ国がロシアに大きく依存している状態にあります。
 
現在のところ、制裁対象となる品目は明らかにされていませんが、ロシアにダメージを与えるという目的からして、原油が対象に含まれる可能性は高いと見られています。そうなると、中国やインドがアメリカから追加関税を課されることになる可能性が高まります。

日本

 もしこの制裁の対象が天然ガスにまで拡大された場合、日本も影響を受けることになります。財務省関税局のデータによれば、2023年時点で日本の天然ガス輸入元は、1位がオーストラリア(42.6%)、2位がマレーシア(15.0%)、3位がロシア(8.9%)となっています。
 急にロシアからの輸入を停止したり、他国からの調達を増やすというのは簡単なことではありません。したがって、天然ガスまで制裁対象になった場合、日本もアメリカに対して関税を支払うことになりかねず、負担が増える可能性があります。

出所)税関

ヨーロッパ

 ヨーロッパも同様です。多くの国がロシアから天然ガスを輸入しているため、彼らも関税引き上げの対象となる可能性は十分あります。トランプ政権が日本やヨーロッパの顔色をうかがって関税を控える、というようなことはあまり期待できません。このまま50日という期限を迎えると、日本や欧州にも現実的な影響が出る可能性は高いです。

トランプ政権のロシアとの交渉

 今回の動きで何が重要かというと、トランプ政権がロシアに対して「本気で交渉しろ」と明確なメッセージを出してきた、という点です。これまでも、トランプ政権は「ウクライナ戦争を終わらせる」と口では言ってきましたが、具体的な期限や条件を明示することはありませんでした。
 今回は、「50日以内に停戦に応じなかったら制裁を発動する」と、明確なラインを引いてきたわけです。このこと自体が、かなり踏み込んだ対応であり、これまでの姿勢とは違った強硬な構えを見せているということになります。

停戦に応じない場合どうなるか

 仮に、ロシアがこの50日以内に停戦に応じなかった場合、どうなるのかという話ですが、ここで二次的制裁が発動されれば、世界経済に与える影響は無視できないものになります。
 中国やインドに100%の関税がかかるとなると、それらの国々がロシアからの原油や天然ガスの輸入を続けることは難しくなります。すると、他の供給国に需要が殺到してエネルギー価格が再び高騰する、という事態が想定されます。さらに、制裁対象が広がれば、日本やヨーロッパにも影響が及びますから、エネルギー安全保障の面でもかなり厳しい局面を迎えることになります。

 2022年にウクライナ戦争が始まり、2023年からはハマスとイスラエルの戦争が始まりました。

戦争拡大に見る30年の国際情勢の振り返り

 こうした混乱を見越して、ロシアが交渉のテーブルに着く可能性もあるとは思います。しかし、これまでのロシアの対応を見ていると、アメリカの脅しにすんなり屈するというタイプではないですから、そう簡単には進まないでしょう。

トランプ政権の真意

 トランプ政権の動きの背景には何があるのかというと、やはり「外交カード」としての制裁という側面が大きいと思います。
 トランプ大統領としては、再選後の外交成果を一つでも早く形にしたいという思惑があります。バイデン政権時代の「戦争を長引かせる方向の支援」とは一線を画して、自分は「戦争を終わらせる大統領だ」と明確に打ち出す狙いもあるでしょう。
 これまで、ウクライナ支援にはやや消極的だったトランプ政権が、ここにきてウクライナに最新兵器を提供すると言ってきたのも、その一環と見ることができます。

50日後の世界経済に注目

 今回の動きは一言で言うと「トランプ政権の対ロシア政策が大きく変化した」ということになります。これまでのように曖昧な態度ではなく、明確に「50日以内に停戦しないと制裁」というリミットを設けたことで、世界に向けて非常に強いメッセージを出したと言えるでしょう。

今後の見通し

 今後、ロシアがどう対応するのか、そして中国やインドといったロシアの主要貿易国がどう動くのか、さらには日本やヨーロッパがどこまで巻き込まれるのか。すべてが50日後に大きく動く可能性があります。まさに、国際社会の命運を左右するタイムリミットが設定されたということになります。引き続き今後の動きについてアップデートしていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。


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ご参考

 情報との付き合い方、日本経済の置かれている状況、トランプ政権とアメリカ経済のこと、力を失っていくイギリス経済、中東経済のこと。今の時点での私の考えをまとめて本にしました。

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