ベトナム経済と高速鉄道計画の行方
サムネがカッコ良くなったというコメントを頂きました。これまで、サムネが怖いとか、散々厳しいご意見を頂いていました。でも今日のはまぐれだと思いますhttps://t.co/Ru7SXK4mTx
— 【世界経済情報】モハPチャンネル (@MohaP_WorldNews) August 18, 2025
ベトナムで長らく議論されてきた南北高速鉄道計画に、再び注目が集まっています。共同通信系のアジアメディアの報道によれば、国営建設会社タンロン社が日本の新幹線技術を導入することを提案しました。総事業費は670億ドル、日本円にしておよそ10兆円規模に達する巨大プロジェクトです。中国やフランスも関心を示しており、国際的にも注目度の高い案件となっています。

この南北高速鉄道は、ハノイからホーチミンまで国土を縦断する全長1,541キロに及ぶ壮大な計画です。細長い国土を抱えるベトナムでは、これまで長距離移動は航空機が主流でした。高速鉄道の整備によって経済効率の向上や地域間交流の活発化が期待されています。

出所)外務省
過去の頓挫と費用負担の壁
実はこの計画は2010年頃にも浮上しました。当時、日本の新幹線方式を採用する方向で話が進みましたが、巨額の建設費用を理由に共産党が承認せず、立ち消えとなりました。ベトナム経済の規模からすると、総事業費は国内総生産(GDP)の17%に相当する巨大投資であり、容易に踏み切れるものではありません。
ベトナムは通貨「ドン」を用いており、1円が約180ドンに相当します。
ベトナム社会主義共和国:通貨
ドン(Dong)
桁の多さから旅行者が戸惑うことも多い通貨ですが、これは歴史的に高いインフレに苦しんできた名残です。ベトナム戦争後の混乱、カンボジアや中国との対立、経済封鎖を経て、長期間にわたり通貨価値が下落しました。1986年にドイモイ政策が始まってもインフレは収まらず、90年代に通貨改革を実施した経緯があります。
通貨の交換レートの桁が多い国のほとんどが、こうした通貨の暴落、経済危機に見舞われた経験を持っています。
こうした歴史を持つため、ベトナム政府は「身の丈を超える投資」には慎重です。これまで高速鉄道計画が進まなかった背景には、このような経済的トラウマも影響していました。
インフラ整備の遅延リスク
近年になって経済成長が進み、国家財政にも余裕が生まれてきたことから、高速鉄道計画が再び議論されるようになりました。2027年に着工し、2035年の完成を目指す案も浮上しています。しかし、過去のインフラ建設の実績を振り返ると、予定通りに進むかは疑問視されています。
ホーチミン市で日本の支援により建設された地下鉄「メトロ1号線」は、当初計画から10年遅れて2024年にようやく開業しました。2号線も大幅な遅れが見込まれています。ハノイのメトロでは、中国やフランスの支援による路線が完成しましたが、こちらも大幅な工期超過が発生しました。行政手続きの長期化、土地収用の遅れ、資金の未払い、中央と地方の権限の対立などが原因とされます。高速鉄道も同様の問題に直面する可能性は高いでしょう。
ベトナム最大の商業都市であるホーチミン市では、慢性的な渋滞を緩和するため、都市鉄道1号線(19.7km)が、独立行政法人国際協力機構(JICA)による円借款事業により整備され、2024年12月に開業を迎えました。本事業では、当社が持つO&Mの知見を同路線の運営会社であるホーチミン市都市鉄道1号線運営会社(HURC1)に提供し、開業後の安定的な鉄道運営をサポートします。
実際、ホーチミンメトロの建設では工期の遅れにより追加費用が発生し、日立製作所などの参画企業が損害を受けました。240億円の追加請求を巡って現地当局と裁判に発展した事例もあり、国際企業にとってはリスクが伴う投資であることを示しています。
高成長を続けるベトナム経済
一方で、ベトナム経済の成長力は目を見張るものがあります。2024年の実質GDP成長率は7.1%とインドを上回り、近年はアジアでもトップクラスの成長国となっています。2020年代平均でも5%を超え、中国の代替生産拠点として世界の製造業の移転先となりつつあります。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の恩恵を最も享受している国の一つとも言われ、今後も成長余地は大きいでしょう。
主要都市では建設ラッシュが続き、25年前の中国を思わせる雰囲気があります。インフラ投資は依然として大きな需要があり、高速鉄道のような巨大プロジェクトは国家の成長戦略と直結しています。
外交関係と技術選定の行方
高速鉄道計画の実現にあたり、どの国の技術を採用するのかは大きな焦点です。ベトナムは一帯一路構想に参加し、中国と一定の協力関係を保っていますが、歴史的には戦争や侵略の経験もあり、距離感は微妙です。一方、フランスは旧宗主国として近年関係を強化しており、2024年にはマクロン大統領が訪越し90億ユーロ規模の投資を表明しました。
日本との関係も古く、17世紀の朱印船貿易の時代にはベトナム中部ホイアンが交流の拠点となりました。世界遺産の町並みの中には「日本橋」と呼ばれる橋が今も残っており、両国の長い歴史的つながりを物語っています。
ホイアンはクアンナム省北部トゥボン川河口に位置するかつての貿易港です。16世紀末から17世紀にかけて国際貿易港として繁栄し、日本人商人たちが居住し、「日本街」を作っていました。
このようにベトナムは複数の国との関係を考慮しながら、高速鉄道のパートナーを選ぶことになります。日本の新幹線技術が採用される可能性は依然として高いものの、中国やフランスの動きも見逃せません。
今後の行方
ベトナムの高速鉄道計画は、経済成長のシンボルであると同時に、国際関係や国内ガバナンスの課題を映す鏡でもあります。巨額投資の規模、行政手続きの遅延リスク、外国企業との摩擦など、課題は山積みです。しかし、実現すれば地域経済に大きな恩恵をもたらすことは間違いありません。
果たして日本の新幹線技術が選ばれるのか、それとも中国やフランスが巻き返すのか。ベトナムの未来を左右する巨大プロジェクトの行方に、今後も注目が集まるでしょう。
ご参考
JICAと金融市場との意外な関係
意外に知られていませんが、JICAは国際協力事業を行うための資金の一部を債券発行によって調達しています。
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