見出し画像

スウェーデンのロミナ氏、気候変動委員会と対立


 この記事では以前にも紹介したことがあるスウェーデンの環境大臣、ロミナ・ポールモクタリ氏(以下、ロミナ氏)について、最近の動きをアップデートしたいと思います。ロミナ氏、すでにご存知の方も多いでしょう。
 彼女は「環境大臣」と言っても、脱炭素政策を一方的に推し進める立場ではありません。むしろ、行き過ぎた環境政策や脱炭素政策に歯止めをかけ、現実路線へと修正している人物です。

 26歳で環境大臣に就任し、現在29歳。スウェーデンの若手有力政治家の一人です。彼女の人物像については過去の記事でも解説していますので、そちらも是非ご覧ください。

■ スウェーデンのロミナ・ポールモクタリ氏の解説
■ スウェーデンのロミナ氏の中国通販サイト批判

過去の「ロミナ氏」記事

ロミナ氏と気候変動委員会の対立

 最近のロミナ氏の動きとして、注目すべき出来事がありました。スウェーデンには「Climate Policy Council」、日本語で「気候変動委員会」という組織が存在します。この組織は2017年に設立され、政府が掲げる2045年までに温室効果ガスのネットゼロ達成という目標に対して、施策が適切に進んでいるかを評価する独立機関の役割を担っています。

出所)https://www.klimatpolitiskaradet.se/en/

 ロミナ氏が進める政策も、気候変動委員会によって評価される立場にあるのですが、両者は以前から折り合いが悪く、たびたび対立してきました。ロミナ氏は、環境だけを優先するのではなく、安全保障など他の重要な要素も考慮した現実路線の政策を進めています。

アメリカのパリ協定離脱への対応
 過去には、アメリカのトランプ大統領がパリ協定を離脱すると発表した際に、ロミナ氏はEUが引き続き気候変動対策に取り組むことの重要性を強調しました。スウェーデンは環境問題への意識が高い国であり、多くの国民が気候変動対策を支持しています。

スウェーデンのロミナ氏の中国通販サイト批判

洋上風力発電計画

 例えば、バルト海で計画されていた洋上風力発電計画について、ロシアからのミサイルを検知するシステムへの電波障害が懸念されることから、建設を認めない決定を下したこともありました。そして、洋上風力発電の建設プロセスの見直しを提案し、今後も計画を推進する意向を示しました。

 温室効果ガスの削減は重要であると認めつつも、安全保障を犠牲にしてまで推進すべきではないという考えに立っています。

 今年も気候変動委員会は政府施策を評価するレポートを発表しましたが、ロミナ氏はその発表会に出席しませんでした。今回のレポートでは、現在の施策では2045年目標の達成には不十分であると厳しく指摘。特に、2025年7月から予定されているガソリン税の引き下げが排出削減効果を損なうことや、運輸部門と土地(主に森林)部門での取り組みの不十分さを挙げています。これに対しロミナ氏は、政府の政策は適切だと反論しています。

洋上風力発電計画と補助金問題

 また、スウェーデン大手電力会社バッテンフォールが進める洋上風力発電施設計画についても動きがありました。この計画自体は政府によってすでに承認されていましたが、海底送電ケーブルの設置について、設置費用はバッテンフォール社が全額負担するよう求め、補助金の交付は拒否しました。

 天候によって発電量が左右される洋上風力発電に多額の補助金を投入するのは合理的でないというのがロミナ氏の主張です。

 補助金がなければ事業が成り立たないというバッテンフォール社に対して、補助金頼みで事業を進めるべきではないという立場を貫きました。その結果、バッテンフォール社はこの洋上風力発電施設計画の中断を発表しています。

出所)https://group.vattenfall.com/

中国製品への警戒

 ロミナ氏は、環境政策以外でも積極的な発言を続けています。例えば、中国の格安ECサイト「Temu」や「SHEIN」の製品について、人体や環境に有害な物質が使われている可能性があるとして、特定製品について安全性調査を求めています。また、極端に安価な製品が市場に流入することで自国産業が打撃を受ける問題にも懸念を示しており、ノルウェーやデンマークと連携して対応を進める方針です。

移民問題

 さらに、スウェーデン国内では移民問題とギャング犯罪が深刻化しています。最近、アメリカ・トランプ政権がスウェーデンで活動する「フォックストロット・ネットワーク」という犯罪組織に制裁を科しました。この組織は麻薬密売や多数の暴力・殺人事件に関与しているとされ、一部ではイランが関与しているという見方もあります。
 もともとスウェーデンは移民を積極的に受け入れてきた国であり、特に2010年代のシリア内戦以降、イスラム系移民が急増しました。その中で、言語や文化を受け入れようとしない移民との間に分断が生じ、社会問題へと発展しています。ロミナ氏自身も、イランから政治難民としてスウェーデンに渡った父親を持ち、移民の背景を持つ政治家です。現在の保守派中心の政権下で、彼女は様々な逆境に立ち向かっています。

今後も注目

 ロミナ・ポールモクタリ氏は、行き過ぎた気候変動対策や環境政策に対し、現実的な視点でバランスを取ろうとしています。彼女がどのように政策を進めていくのか、引き続き注目していきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

私とロミナ氏
 私は2023年ぐらいからロミナ氏の動向を追いかけていて、発言もフォローしています。スウェーデン語で話しているものが多く、英語の翻訳がない場合もあるため、なかなかロミナ氏の情報を集めるのは大変ですが、これからもフォローしていきたいと思っています。


ご参考

ESG投資規制の影響
 EUはESG投資を推進する過程で、特定の業界に対して極めて厳しい規制を課してきました。その中でも特に厳しく排除されてきたのが、タバコ産業、二酸化炭素を多く排出する業種、そして武器を製造する企業です。

EUの防衛費拡大を妨げるESG投資規制問題

サイトマップ(目的別)はこちら

いいなと思ったら応援しよう!