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イタリア経済、メローニ政権の成果と課題


 今年の秋で首相になってから3年となるイタリアのメローニ首相ですが、このところイタリア経済は比較的好調に推移しています。メローニ首相自身も、こうした経済の動きについて「政権の成果だ」と誇らしげに語っていました。
 海外の情報というとどうしてもアメリカのものばかりが目につきがちですが、アメリカだけ見ていれば世界のことが全部わかるというわけではありません。そういう意味で、この記事では足元のイタリア経済やメローニ政権の政策についてアップデートします。

GDP成長率はユーロ圏を上回る年も

 まずはイタリアのGDP成長率から見ていきます。新型コロナのパンデミックが始まった2020年、イタリア経済はマイナス8.9%と大きく落ち込みました。
 しかしその後、2021年・2022年・2023年と3年連続でユーロ圏の平均成長率を上回っています。2024年はさすがにユーロ圏平均を下回る結果となったものの、ドイツがマイナス成長になっていることを踏まえれば、相対的には好調だったと言えるでしょう。

雇用の改善

 このイタリア経済の底堅さを支えているのが、雇用の改善です。イタリアの失業率はここ数年で着実に低下を続けています。メローニ首相が就任したのは2022年10月。当時の失業率は7.9%でしたが、直近のデータ(2025年4月)では5.9%まで改善しています。この水準はリーマンショック前の2007年以来の低さです。
 最も悪かったのは、欧州債務危機後の2014年。当時は財政再建が進む中で失業率が12.9%にまで上昇していました。その後、緩やかな改善を続け、コロナ前には一時10%を切る場面もありましたが、パンデミックによって再び10%台に逆戻り。しかし、その後またじわじわと改善が進んでいます。
 メローニ政権以前からの流れとはいえ、政権発足後も雇用環境が良好であることは確かです。若年層の失業率についても同様に低下が見られています。

外国人観光客と少子高齢化の影響

 失業率の低下要因としては、スペインやギリシャと同様、外国人観光客の増加によって一部の業種で雇用需要が高まっているという側面があります。ただし、ベビーブーマー世代の大量退職という少子高齢化の影響もあり、単純に「良いことづくめ」とは言えない点には注意が必要です。

財政改善

 そうした中、格付け会社のS&Pは2025年4月13日、イタリアの格付けをBBBからBBB+に引き上げました。格付けなんてどうでもいいという意見もあるとは思いますが、債券利回りなどに影響を与えることから、金利低下を通じて経済にプラス効果があるとされています。

機関投資家の多くがリスク管理の一環として格付けを利用しているからです。格付けが変更されることで、彼らの行動にも変化が生じ、市場全体に少なからず影響を与えることになります。したがって、市場動向を見ていくうえで格付けの変化を注視することには一定の意味があります。

米国債の格下げと市場の反応

 S&Pが評価したのは、イタリアの財政状況が安定してきているという点です。コロナでロックダウンを行った2020年、イタリアは財政赤字を大きく拡大し、政府債務のGDP比は154%にまで膨れ上がりました。しかし、その後は経済再開と共に徐々に改善が進み、2024年には135%にまで下がっています。2019年は134%、2022年末時点では138%のため、メローニ政権下でも政府債務は着実に改善しています。

現実路線の政策

 メローニ氏が首相になる前は「イタリアの財政は大きく悪化するのではないか」、「国債利回りが急上昇するのでは」と懸念されていました。実際、首相になる前には財政赤字拡大路線を強く主張しており、EUにも強硬姿勢を見せていました。「EUと対立して補助金がもらえなくなるのではないか」という声も多く聞かれました。

 しかし、実際に政権を担ってからは、言うべきことは言いながらもEUと対立することなく、現実的な政策に転換。2024年の欧州議会選挙の際も、フォン・デア・ライエン氏率いるEU体制を支持する姿勢を示しました。こうした姿勢に対して、EU懐疑派からは「言っていたことと全然違うじゃないか」と批判されることもありますが、全体としては上手くやっているという印象です。メローニ氏は、極端な財政悪化を招くような政策を回避し、現実的な舵取りを行っていると評価されています。

 2022年の総選挙の際には「欧州で最も危険な女」とまで言われていたメローニ氏ですが、そうした懸念は杞憂だったということがはっきりしてきたとも言えるでしょう。

支持率を支える移民政策

 支持率については、もともと首相就任時にあまり高くなかったというのもありますが、現在では一部の調査で上昇傾向が確認されています。この支持率の背景にあるのが、移民抑制政策で一定の成果を上げている点です。
 メローニ政権によれば、2024年中に海を渡ってイタリアに到着した不法移民の数は前年比で6割減、2022年比でも2割減とのこと。2023年は15万7,000人だった移民が、2024年には6万6,000人にまで減少しました。

 成果を上げている政策としては、チュニジアやリビアといった北アフリカ諸国との協力強化があります。移民を海路で運ぶマフィアなどの取締りを、イタリアが資金を出して現地で強化するという取組みです。これに対して欧州の人権団体からは批判の声もありますが、イタリア国内では「これ以上の受け入れは無理」という状況で、こうした政策が支持を集めています。

中国との関係

 もう一つメローニ政権の成果として挙げたいのが、中国の「一帯一路」構想からの離脱です。ただし、離脱をしながらも中国との関係が一気に悪化しないよう、現実的な対応を取ってきた点は評価できます。

今後の展望

 私はメローニ首相を手放しで称賛するつもりはありませんが、これまでの政権運営を見ている限り、かなり現実的で柔軟に対応してきたと言えるのではないでしょうか。
 今後については、アメリカによる関税政策などでイタリア経済にもマイナスの影響が出ることが見込まれています。一方で、ドイツが財政拡大に動いており、その恩恵がイタリアにも波及するという見方もあります。トランプ政権との間でも対話可能な関係を築いており、国際政治の場でも一定の存在感を維持し続けるでしょう。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。


ご参考

メローニ首相はX(旧Twitter)で普段はあまり支持率は見ていないとしつつも、支持してくれている国民に感謝の意を伝え、引き続き政策を押し進めていく意思を示しました。

スウェーデンのロミナ・ポールモクタリ氏の解説

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