サウジアラムコ減配とサウジアラビア財政の行方
サウジアラビアの国営石油会社であるサウジアラムコが、2025年3月4日に今年の配当方針を発表し、減配を決定しました。この発表を受け、サウジアラビアの経済に対する懸念が広がっています。
サウジアラビアは石油の国として知られていますが、国家財政はサウジアラムコからの配当収入に大きく依存しています。加えて「ビジョン2030」に基づく壮大な都市開発計画も、この配当を財源の一部としています。そのため、今回の減配は単なる企業の決定にとどまらず、サウジアラビアの国家運営全体に影響を及ぼす可能性があるため注目されています。
サウジアラムコの減配発表
まず、3月4日に発表された配当に関する情報を整理します。サウジアラムコは2025年の総配当額を850億ドル(約12兆7,000億円)と発表しました。これは2024年の1,240億ドルから減少しており、減配ということになります。

減配そのものは市場の予想通りでした。というのも、昨年のサウジアラムコは業績が減少していたにもかかわらず増配を実施していたため、さらに業績が悪化すれば減配は避けられないだろうと見られていました。しかし、今回の減配幅は多くのアナリストの予想を上回るものであり、市場では驚きを持って受け止められています。
売上も利益も減少しているという状況が昨年から続いています。注目を集めたのが、売上も利益も減っている中で配当は310億ドルという高水準を維持したことです。
この減配の影響で、サウジアラビア政府の財政赤字がさらに拡大すると予想されています。
サウジも苦しいhttps://t.co/c8aP1CXGqL
— 【世界経済情報】モハPチャンネル (@MohaP_WorldNews) March 4, 2025
サウジアラビアの財政赤字
サウジアラビアは「オイルマネーで潤っている国」というイメージがありますが、実際にはここ10年ほど財政赤字が続いています。特に、コロナ後の2021年から2023年にかけては、GDP比で2%台の財政赤字が続いていましたが、2024年には3%台まで悪化すると見込まれています。
赤字の主な要因は、社会保障費の増加と原油価格の低迷です。IMF(国際通貨基金)によると、サウジアラビアが国家財政を黒字化するには、原油価格が100ドルまで上昇しないと難しいとされています。
このまま財政赤字が拡大すれば、政府はその資金をどう調達するのかが問題になります。考えられる選択肢としては、国債の発行が挙げられます。昨年もサウジ政府はドル建て国債の発行を増やしており、今年もその傾向が続く可能性が高いでしょう。
サウジアラビア政府にはまだ財政的に余力があると考えられていますが、厳しい状況が続くことは間違いなく、今後の政策運営には慎重な判断が求められます。
「ビジョン2030」の見通し
サウジアラビアが進める「ビジョン2030」には、未来都市「NEOM」をはじめとする大規模な建設プロジェクトが含まれています。このNEOM建設には、1兆5,000億ドルから2兆ドルもの莫大な資金が必要とされています。

サウジ政府は財政負担を抑えるために、政府系ファンド(PIF:パブリック・インベストメント・ファンド)を活用する方法を取っています。
PIFは現在1兆ドル規模の資産を運用しており、保有する株式の配当金をNEOMの資金源に充てることで、国家財政への負担を減らそうとしています。しかし、サウジアラムコの減配により、このファンドに流入する資金も減少する見通しです。結果として、NEOMの資金調達はますます厳しくなるでしょう。
NEOMの進捗
以前から、「NEOMは非現実的なプロジェクトだ」と指摘してきました。その理由は、単に見た目や構想が突飛だからというだけではなく、資金調達の難しさも大きな要因です。
このままでは、計画の縮小や遅延が続くのは避けられないでしょう。サウジアラビアのような権威主義的な国では、最初は「やるやる」と大々的に発表するものの、難しくなると計画が変更されることがよくあります。すでにNEOMは計画を縮小し始めていますが、今後もこの傾向は続くと思われます。
中東の不動産市場
先日、ドバイで計画されている Burj Azizi(ブルジュ・アジジ)という、世界で2番目の高さになる予定の高層ビルについて取り上げました。その後、ドバイの不動産投資に関するリスク について基本的な情報をまとめた記事を公開しました。
中東の不動産市場では、計画通りに進まないことが当たり前であり、詐欺が多いとも言われています。私は不動産の専門家ではありませんが、ドバイの不動産業界で働く人々や投資家たちから話を聞くと、「詐欺が非常に多い」というのは共通した見解です。そして、サウジアラビアの不透明性はドバイ以上だと指摘する声も少なくありません。
競技会場の見通し
こうした状況を踏まえると、サウジアラビアのこの巨大プロジェクトについても、「計画通りに進む」と考える方が不自然でしょう。しかし、2029年の冬季アジア大会、2034年の FIFAワールドカップはすでにサウジアラビアでの開催が決まっており、競技会場の建設は必須の課題となっています。そのため、一部の計画は大幅に変更される可能性があるものの、少なくともスタジアムなどの施設建設は進めざるを得ない状況です。
総括
サウジアラビアの計画に対して厳しい見解を述べましたが、実際のところ 「本当に計画通りに進む」と考えている人はほとんどいないでしょう。そのため、私の指摘に大きな違和感を持つ方は少ないと思います。
ただし、もし本当に「地上300mのサッカー場」、「砂漠の中のスキー場」や「砂漠の中の巨大な湖」、「高さ500mで長さ24kmのビル」が完成したら、その時は私の予想が完全に外れたことになります。その場合、サウジアラビアに行き、実際にそれらを見てレポートする動画を配信しようと思います。

その可能性は極めて低いと思いますが、引き続きサウジアラビアの動向を追いたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
ご参考(サウジアラビア記事のまとめ)
■ サウジアラビアの巨大箱物プロジェクト(2024/4/18)
■ サウジ政府系ファンド、任天堂株式の一部を売却(2024/10/9)
■ サウジアラビア経済と欧米企業の関係(2024/10/27)
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