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中国の消費者物価指数に見るデフレの兆し


 2025年3月9日、中国の2月の消費者物価指数(CPI)が発表され、前年比-0.7%となりました。この数値は市場予想の-0.4%を大きく下回り、明確なデフレ傾向を示しています。ただし、この結果には特別な要因も影響しているため、その点を考慮する必要があります。
 中国の統計データに関しては「信頼性に疑問がある」という意見も根強くあり、私も理解しています。実際の状況よりも良く見積もられている可能性があることを踏まえて考えるべきでしょう。データを振り返りながら、中国経済の現状を分析していきます。

私たちは公表されているデータをもとに戦う必要があります。
 データが実態を表しているかどうかの検討に加え、データが実態をどれだけ表しているのか、どうすれば補正できるのか、何のデータで補正するべきか常に判断する必要があるでしょう。

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消費者物価指数(CPI)

 2月の消費者物価指数(CPI)は前年比-0.7%で、1月の+0.5%から大きく低下しました。市場予想は-0.4%でしたが、それをさらに下回る結果となっています。

市場予想とは

 ここで「市場予想とは何か」という疑問を持つ方もいるかもしれません。市場予想とは、主要な投資銀行やエコノミストが出した予想を、ブルームバーグなどの情報ベンダーが集計し、その中央値を算出したものです。各社によって予想は異なりますが、多くの市場参加者がエコノミストの予想を参考に取引を行うため、この中央値が市場のコンセンサスとして機能することが多いです。

発表された数字そのもので判断するのではなく、市場予想との対比で見ることが一般的です。指数が前月や前年より上昇している、下落しているではなく、市場で予想される数値より高かった、低かったで判断します。市場に織り込まれていないデータ、これが金融市場に影響を与えることになります。

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春節の影響

 今回のCPIの大幅なマイナスには、春節(旧正月)の影響が大きく関係しています。春節の時期には多くの人が帰省や旅行をし、消費活動が活発になるため、通常は物価が上昇しやすくなります。しかし、春節の日程は毎年異なり、その影響が統計上の比較に影響を与えます。
 昨年(2024年)の春節は2月10日でしたが、今年(2025年)の春節は1月29日でした。つまり、今年の1月のCPIは春節需要の影響で前年同月比が高くなり、一方で2月のCPIは前年の春節期間との比較になるため、低く出ることが予想されていました。
 とはいえ、今回のCPIは市場予想をさらに下回る結果となり、中国のデフレ圧力が予想以上に強いことを示しています。

生産者物価指数(PPI)

 消費者物価指数(CPI)と並ぶ重要な物価指標として、生産者物価指数(PPI)があります。PPIは、企業間取引の価格動向を示すもので、将来のCPIに影響を与えるとされています。
 2月のPPIは前年比-2.2%となり、2023年半ばから続くマイナス基調を維持しています。これは、中国の巨大な生産能力が需要を上回り、受給ギャップが生じていることを示しています。PPIのマイナスが続く限り、CPIの回復も限定的なものになる可能性が高いと考えられます。

全人代での経済成長目標と物価見通し

 3月に開かれた全国人民代表大会(全人代)では、2025年の経済成長率目標を前年比5%前後に据え置く一方で、消費者物価の目標を下方修正しました。

出所)Bloomberg(2025/3/11)

 2024年の物価上昇率目標は+3.0%とされていましたが、実際の結果は+0.2%と大幅に未達でした。このため、2025年の物価上昇率目標は+2.0%に引き下げられましたが、現在のデフレ傾向を考慮すると、この目標達成も厳しいと見られます。むしろ、マイナス圏に落ち込むリスクの方が大きい状況です。

貿易統計

 貿易統計も、中国経済の低迷を示しています。

  • 12月の輸出:前年比+2.3%(市場予想+5.9%を下回る)

  • 12月の輸入:前年比-8.4%(市場予想+1.0%を下回る)

 輸入に関しては、春節の影響でデータの評価が難しい面もありますが、全体としては減少傾向が続いています。これは、国内経済の低迷が背景にあると考えられます。
 輸出については、2023年後半から前年比プラスが続いていましたが、今回の伸び鈍化により、頭打ちの兆候が出てきました。特に、アメリカ向け輸出は12月に前年比+15.6%と高い伸びを示していましたが、今回は+2.3%まで鈍化しました。

 これは、トランプ政権時代の関税引き上げを見越した駆け込み需要が12月に集中し、その反動が出たと考えられます。また、欧州でも「脱中国」の動きが強まり、中国の輸出が今後大きく改善する可能性は低い状況です。

財政政策による景気下支え

 こうした経済の低迷を受け、中国政府は2025年に財政赤字をGDP比1%程度拡大し、景気を下支えする方針を打ち出しました。具体的な施策として、以下のような消費促進策が発表されています。

  • 家電(エアコン、洗濯機など)の買い替え補助金の拡充

  • スマートフォンの買い替え補助金の新設

  • 10兆円規模の大手銀行への資本注入

  • 売れない土地や住宅の買い取りに約89兆円を投入

 2024年の財政赤字はGDP比3%程度でしたが、2025年には4%程度まで拡大する見込みです。

中国経済の先行き

 今回のCPIの大幅なマイナスは、春節の影響もありますが、中国経済がデフレ基調にあることを改めて示しています。PPIも長期にわたってマイナスが続き、輸出・輸入の低迷が顕著になっていることから、今後も景気の停滞が続く可能性が高いでしょう。
 一方で、中国政府は財政出動による景気下支えを進めています。しかし、これがどこまで効果を発揮するのかは不透明です。特に、欧米の対中政策が厳しくなり、中国経済が外需の回復を見込めない状況であることが、大きな懸念材料となっています。
 中国経済の動向については、引き続き注目していきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。


ご参考

 データから見えてくるのは、中国への海外直接投資が過去最低水準に落ち込み、中国からの資本流出が記録的な規模に達しているという事実です。さらに、中国企業の投資先がアメリカや北米から中東・アフリカへとシフトし、西側企業は脱中国を加速させていることが確認できます。

データに基づく中国への直接投資急減の整理

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