投機筋の円買いの動向とポジション解消の行方
昨年の夏には、円キャリートレードの影響で、円を売る動きが活発でした。円キャリートレードとは、金利の低い円で資金を調達し、それを金利の高い通貨に交換して運用する取引のことを指します。このため、市場では円売りの流れが続き、円安が進みました。しかし、現在はその流れが逆転し、円を買う動きが目立つようになっています。この記事では、その背景と今後の見通しについて詳しく解説します。
円買いの動向を示すCFTCのデータ
円の買いが進んでいるかどうかを判断する指標の一つに、米商品先物委員会(CFTC)が公表している「投機筋の為替先物ポジション」のデータがあります。このデータは、実需とは関係のない投機的な取引、つまりヘッジファンドなどが円を買い持ち(ロング)しているのか、売り持ち(ショート)しているのか、そしてそのポジションの規模を示すものです。

このデータによると、3月11日時点で円のポジションは売りと買いを相殺した結果、133,902枚の買い越しとなっています。1枚は10万ドルを指しますが、このデータは市場全体の取引を網羅しているわけではないため、絶対的な金額よりも、過去のデータと比較してどの程度の水準かを見ることが重要です。
そして、この133,902枚という買い越しは、過去最高の水準となっています。つまり、円の値上がりを期待して円を買い持ちしている投機筋が過去最高に増えているということです。
円売りから円買いへ
昨年7月には、円の売り持ちが18万枚を超え、過去最高となりました。このときは、円安が進むと予想する投機筋が多く存在していたことを示していました。しかし、現在はその状況が逆転しています。今年1月7日時点では20,189万枚の売り越しだったものが、2月4日時点で18,768枚の買い越しに転じ、その後急速に買い持ちが増加し、3月4日には133,651枚の買い越しまで拡大しました。わずか1か月ほどの間に、急速な円買いの動きがあったことがわかります。
こうした投機筋は、比較的短期間で動く傾向があるため、何かのきっかけでこのポジションが解消されると、大規模な円売りが発生する可能性があります。つまり、急激な円安が進むリスクがあるという見方も出てきます。
昨年の動きの振り返り
昨年の夏の動きを振り返ると、2024年7月2日に投機筋の円売り持ちが18万枚を超えていたとき、ドル円は161円台でした。しかし、その後このポジションが解消され、円の買い戻しが進む中で、9月半ばにはドル円は140円程度まで円高・ドル安となりました。そして、9月末時点では投機筋の円買い持ちは6万枚となっていました。このように、投機筋のポジションが大きく動くと、為替相場に大きな影響を与えることが多いということです。
円買いの影響
現在、投機筋の円買い持ちが過去最高に達していることから、今後このポジションが解消されると、円売りが発生し、円安が進む要因となる可能性が指摘されています。そのため、市場参加者の間では、この13万枚以上の円買い持ちがどのように動くのかに注目が集まっています。

今回特に注目すべき点として、2月の急激な動きが挙げられます。1月28日時点では959枚の売り越しだったものが、3月4日には133,651枚の買い越しに変わりました。つまり、1か月ほどの間に約14万枚もの円買いが進んだことになります。
この間、ドル円の動きを見ると、1月28日には155.54円だったのが、3月4日には149.79円となり、5.75円の円高・ドル安となりました。単純計算すると、投機筋の円買い持ちが1万枚増えるごとに、約43銭の円高になったことになります。
円買いの影響の振り返り
昨年夏のデータと比較すると、2024年7月2日にはドル円が161.44円だったのが、9月24日には143.23円まで下落し、18.21円の円高となりました。この間、投機筋の円買いポジションは25万枚増えており、1万枚あたり約73銭の円高が進んだ計算になります。
この比較から、現在の円買いの影響は昨年の夏場に比べて円高の進行が弱いことがわかります。
NISAによる海外投資の影響
この理由の一つとして考えられるのが、NISAを利用した海外投資の影響です。2025年1月時点で、新NISAが始まって以降、ファンドへの資金流入が最も多くなったことが分かっています。円高が進む中で、日本の個人投資家が海外資産を購入する動きも見られており、これが円売り圧力となっている可能性があります。つまり、投機筋の円買いが進む一方で、日本国内からの円売りの流れが円高を抑える要因になっていると考えられます。

もし、このNISAによる円売り圧力が続いている状況で、投機筋の円買いポジションが解消されると、円安が加速するリスクが高まるかもしれません。つまり、円高要因と円安要因がせめぎ合う中で、投機筋のポジション解消が大きな影響を与える可能性があるということです。
今後の見通し
今後、どのような要因でこのポジションの解消が進むかについては、日銀の金融政策や米国のFOMC(連邦公開市場委員会)、さらにはトランプ政権の政策など、さまざまな要因が考えられます。
引き続き投機筋の円買いポジションに変動があれば、解説をしたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
ご参考
為替の影響
日銀の政策には為替の影響も大きいと考えられます。日銀は公には「円安だから利上げを行う」とは言いませんが、実際には円安が進むと日銀幹部が「利上げに前向き」な発言をするケースが増えています。
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