ペリエとボルヴィックに見る世界の水問題
先日、エチオピアで巨大なダムを建設していることに関連して、水を巡る争いが発生している現状について解説する記事を公開しました。こうしたダム建設によって水を巡る争いが起こるのはもちろんですが、アフリカではそもそも綺麗な水にアクセスできない人々が多く存在しており、水資源を巡る争いがさまざまな場所で発生しています。この事実については、多くの方がすでにご存じかと思います。
しかし、世界で起きている水問題はアフリカだけに限った話ではありません。実は世界中のさまざまな国で、多種多様な水に関する問題が発生しています。例えばイギリスでは、水道インフラの老朽化と水道会社の経営危機が問題になっています。この記事ではこうした問題以外にも、世界の水問題にはどのようなものがあるのか、その一部をご紹介したいと思います。
フランスの水ビジネスとペリエの問題
ヨーロッパで水のビジネスといえば、何と言ってもフランスが有名です。ペリエは日本でもお洒落なレストランなどで提供されています。このフランスの水ビジネスですが、近年さまざまな問題を抱えています。

ペリエなどの水事業を手掛けているのは、フランスの大手食品・飲料メーカーであるネスレです。ネスレの水事業の規模はおおよそ50億ユーロ、日本円にして約8,000億円にのぼるとされています。しかし、2025年5月にはネスレが不振の水事業を売却する方向で動いているとの報道も出ており、苦しい状況が続いているのです。
ペリエの歴史
では、そのペリエはどのような問題を抱えているのでしょうか。ペリエはスパークリングナチュラルミネラルウォーターのブランドで、もともとは自然の状態で炭酸を含んだ湧き水でした。ペリエが飲まれるようになったのはナポレオン3世の時代、1863年にミネラルウォーター事業が許可された頃まで遡ります。現在のペリエは水と炭酸ガスを別々に採取し、自然の湧き水と同程度の炭酸濃度になるよう人工的に調整して製造されています。
ペリエの問題
しかし、ペリエが今抱えている問題は、水質汚染とガバナンスに関わる問題です。ことの発端は2020年、従業員の内部告発によって、ミネラルウォーターの規制に違反した製造工程が明らかになったことでした。このとき発覚したのは、工業用の二酸化炭素を使用していたことや、基準値を下回る濾過されたミネラルを購入していたという事実です。つまり、天然のミネラルウォーターとして販売していながら、実際には違法な方法で人工的に作られた商品だったということです。
さらに2024年には、ペリエの7つの水源のうちの1つから排泄物の痕跡と見られる細菌が検出され、200万本が回収される事態となりました。当初は大雨の影響だと説明されていましたが、その後の調査でそれだけが原因ではないことが分かります。フランスの食品安全庁が2023年に実施した調査では、20年以上前に使用されていた農薬の痕跡も検出されたのです。これにより、製造工程だけでなく水源そのものの水質にも問題があることが判明しました。
ペリエの対策と信頼回復の懸念
現在は濾過などの処理方法は規制に従って行われ、ペリエは安全性に問題はないとしていますが、水質に対する不安は完全には解消されていません。この問題は今後も続くとみられています。フランスは世界最大級の農薬使用国ともいわれており、長年にわたり使用されてきた化学物質が分解されず地下に残っている可能性があります。通常は水を含む地層が深いため問題ないとされますが、豪雨時には汚染される恐れがあるのです。
ペリエは1990年代にもベンゼンが検出され、世界で1億6,000万本が回収されたことがあります。こうした歴史を振り返れば、今回の問題も決して初めてのことではないといえます。
ネスレが水事業の継続は難しいと判断し、売却を検討している背景にはこうした事情があるためです。しかし、仮にオーナーが変わったとしても水質の問題を根本的に改善するのは容易ではなく、信頼回復は簡単ではないかもしれません。
ボルヴィックの水源枯渇の懸念
フランスの水問題としてもう一つ挙げられるのが、ボルヴィックの水源の問題です。ヨーロッパでは硬水が多い中、ボルビックは軟水で、日本人には飲みやすく愛用している方も多いでしょう。日本はもともと軟水が主流なので、ヨーロッパの硬水に違和感を覚える人が多く、ボルヴィックはその点で好まれています。

しかし近年、ボルヴィックの水源が枯渇するのではないかという懸念が強まっています。季節や気候の影響だけでは説明できない水の減少が観測されており、一部の専門家は汲み上げ過ぎが原因で水源が減少している可能性を指摘しています。地下水は地中に蓄えられたものを抽出して利用しますが、蓄えられる量を超えて組み上げ続ければ、いずれ枯渇してしまいます。世界中に販売されている現状を考えれば、これは当然の結果ともいえるでしょう。
シンガポールの水問題と輸入依存
ここまでフランスの水問題について説明しましたが、別のタイプの水問題を抱える国もあります。その代表例がシンガポールです。シンガポールはもともと水資源をほとんど持たず、国土も狭いため大きな河川がありません。そのため、長年にわたり水の多くをマレーシアからの輸入に依存してきました。
しかし、マレーシアから値上げを要求されることや、安全保障上のリスクがあることから、2000年代に入り輸入依存からの脱却を目指し始めます。海水淡水化プラントを建設し増強したほか、雨水を集めて貯水・利用できるよう国全体を水源とする取り組みを進めました。また、水の再利用も積極的に進めています。
それでも、現状では5割程度をマレーシアからの輸入に頼っており、完全な自給には長い時間がかかると見られています。シンガポール政府の計画では、マレーシアからの輸入を完全になくせるのは2061年とされています。
水問題を考える
このように、世界のさまざまな地域で水に関する問題が起きています。水問題はアフリカだけのものではありません。飲み水だけでなく、シャワー、食器洗い、洗濯など、私たちの生活のあらゆる場面で水は欠かせない存在です。この記事でご紹介したのは世界の水問題のほんの一部に過ぎませんが、今後私たちは様々な形でこうした問題と向き合うことになるでしょう。世界で起こっていることが、いずれ日本でも起こる可能性は十分にあります。
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