米国債投資と保有に関する質問と回答
先日、下記の質問をいただきました。
「老後の資金として貯めてきたお金で、米国債を満期まで持ち切るつもりで購入したんですが、その後、アメリカの債務の状況が大変なことになっているということを知りました。アメリカがデフォルトなんていうことが、本当にあるのでしょうか。 今のうちに損を覚悟で売ってしまった方が良いか、真剣に悩んでいます。ドル安、金利上昇、債券安になるのでしょうか」
こうした質問は定期的にいただきますが、今回は真剣にお答えしたいと思います。重要なポイントは以下の3つです。
1.デフォルトとは何か
2.アメリカがデフォルトする可能性はあるか
3.投資のリスクと今後の見通し
1.デフォルトとは何か
まず「デフォルト」という言葉の正しい意味を確認しましょう。
デフォルトとは、債務の返済が契約通りに行われない状態を指します。これは必ずしも債券が無価値になるという意味ではありません。多くの場合、以下のような状況が考えられます。
元本や利払いの遅延
一部の返済のみが行われる
デフォルト=完全に無価値になる、という誤解が多いですが、実際には「一部でも返済されるケース」がほとんどです。
デフォルトという言葉を「破綻」や「紙屑になる」というイメージで使用しているのだろうと思いますが、言葉の選び方が適切ではないという気がしています。
過去には、ベネズエラやジンバブエのように経済危機に陥り、通貨価値が大暴落した事例があります。しかし、これらは「通貨の価値が下落した」ということであって、デフォルトとは厳密に異なる状況です。
2.アメリカがデフォルトする可能性はあるのか
アメリカの財政赤字や債務拡大は事実ですが、アメリカがデフォルトする可能性は限りなく低いと考えられます。その理由は2つあります。
理由1: アメリカは自国通貨建てで借金をしている。
アメリカが発行する国債は米ドル建てです。そして、アメリカは通貨発行権を持っているため、いざとなれば通貨を発行して返済することが可能です。「手元資金がないから返済ができない」という状況にはなりにくいのです。
理由2:信用格付けは依然として高い。
大手格付け会社の評価を見ると、アメリカ国債は依然として高い信用力を維持しています。
ムーディーズ:「AAA」(最上級)
S&P:「AA+」(1段階引き下げ)
フィッチ:「AA+」(1段階引き下げ)
格付け会社の評価が絶対ではないにせよ、こうした高い評価は「デフォルトの可能性が低い」ことを示しています。もちろん、格付け会社の評価も信用できないと思う方もいるかもしれません。しかし、自分で分析が難しいのであれば、格付けを1つの参考にするのは合理的です。
3.投資のリスクと今後の見通し
ドル安の可能性
アメリカの財政悪化が進めば、ドル安が進行する可能性があります。長期的には、米ドルの価値が緩やかに下落するシナリオも考えられます。ただし、「ドルの暴落」という極端なシナリオは現実的ではありません。
米ドルは世界の基軸通貨であり、多くの国がドル建てで取引を行っています。また、中国をはじめとする国々が、米ドルに連動した通貨管理をしているため、米ドルが暴落すれば、これらの国々の経済にも大きな打撃が及ぶことが考えられます。
ドル依存は続く
人民元での原油取引が始まることや、BRICS諸国による新通貨の議論など、脱ドル化の動きは注目されています。しかし、これらがドル覇権を脅かすためには、金融市場の根本的な構造改革が必要です。
債券価格の変動
米国債の価格は金利の動向に大きく影響されます。金利が上昇すれば、債券価格は一時的に下落します。

しかし、満期まで保有する場合は、途中の価格変動を気にする必要はありません。元本と利息は契約通りに返済されるからです。
例えば、30年物の長期債では、一時的に価格が3割下落することもあります。しかし、それを「暴落」と捉えるかどうかは投資家の理解次第です。債券価格にはその程度の変動があるものだと理解した上で投資することが大切です。
もし急な暴落に見舞われても、慌てて損切りをするのではなくて、淡々と買い増しをしていくことが、長期的にはそれがリターンを高める可能性があるということです。
まとめ
米国債を長期的な資産形成の手段として購入したのであれば、途中の価格変動に一喜一憂する必要はありません。むしろ、慌てて売却してしまう方がリスクが高いと言えます。
投資を行う際はきちんと調べて納得した上で投資することが非常に重要です。そして、投資後に不安に感じた時は、情報を整理し、冷静に判断するよう心がけましょう。
ご参考
元本を確保したいと考える個人投資家も多く、その選択肢を否定するものではありません。現物債券に投資する場合、特に社債については十分に分散投資を行うことをおすすめします。
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