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世界経済見通し下方修正の整理と今後の心構え


 2025年4月22日、IMF(国際通貨基金)が世界経済の見通しをアップデートしました。「IMFの予想なんて当たらない」、「当たり障りのないことばかり言っている」との見方もあるかもしれません。
 一理ありますが、多くの人が見ている予測でもあり、市場のコンセンサスに近いという意味では、チェックしておいて損はありません。この記事では、2025年1月時点の予想から何がどう変わったのか、特にトランプ政権の関税政策の影響を踏まえつつ説明します。

 なお、今回のIMFの見通しは4月時点までの情報をもとに作成されたものです。中国に対する追加の関税や、それに対する報復として中国が課す関税といった情報は、まだ織り込まれていません。

世界経済の見通し

 まずは世界全体の動向から。1月時点では2025年の成長率が+3.3%、2026年も+3.3%という見通しでしたが、今回は2025年の成長率が+2.8%、2026年が+3.0%に下方修正されました。これは、2020年に新型コロナウイルスのパンデミックで-2.7%となった年以来の最低水準です。
 つまり、トランプ政権の関税政策の影響で、少なくともこの程度は世界経済の成長率が落ち込みそうだという状況になってきているわけです。

アメリカ

 続いてアメリカの2025年の成長率は+2.7%から+1.8%に、2026年も+2.1%から+1.7%に大幅な下方修正となりました。一方で消費者物価指数の見通しは、2025年が+1.9%から+3.0%、2026年が+1.5%から+2.5%に上方修正されています。これは関税による物価上昇が、消費を冷やし、それが経済全体の成長を抑えるというシナリオを示しています。

ユーロ圏

 ユーロ圏全体では、2025年が+1.0%から+0.8%、2026年が+1.4%から+1.2%と、全体としては意外に小幅な修正にとどまりました。ただ、国ごとに見ると違いが見えてきます。

ドイツ

 ドイツは2025年が+0.3%から0.0%へ、2026年が+1.1%から+0.9%へと修正され、最も大きな影響を受けた国の一つです。とはいえ、ドイツは財政拡大でインフラ投資を進める見込みがあり、経済を支える要素も存在します。それを織り込んでもこの水準まで引き下げられたというのは、関税の影響の大きさを物語っているでしょう。

スペイン

 一方でスペインは、2025年の見通しが+2.3%から+2.5%へと上方修正されています。観光業中心であるため、貿易戦争の影響が比較的軽微であることに加え、2024年10~12月期のGDPが予想を上回ったことが背景にあります。

イギリス

 イギリスは、2025年が+1.6%から+1.1%、2026年が+1.5%から+1.4%に下方修正されました。イギリスはすでに財政が厳しく、これ以上の財政拡大は難しい状況にあります。また、昨年秋以降、成長率を押し上げるような新たな政策も出していません。それでも、ユーロ圏と比べれば相対的には高い成長率を維持しているという見方もできます。

カナダ

 カナダは、2025年が+1.6%から+1.4%、2026年が+1.8%から+1.6%に下方修正されています。3月にアメリカがカナダに対して関税を引き上げるという話が出た際、「もう少し厳しい数字になるかも」と思っていましたが、+1.4%であれば、耐えられる範囲ではないでしょうか。

メキシコ

 一方で、アメリカのもう一つの隣国であるメキシコは大幅なマイナス修正を受けました。2025年は+1.4%から-0.3%に、2026年は+2.0%から+1.4%に引き下げられ、今回の見通しの中で最も大きな下方修正となっています。

日本

 日本については、2025年が+1.1%から+0.6%、2026年が+0.8%から+0.6%に下方修正されています。実質賃金が緩やかに上昇してきているものの、関税による物価上昇がそれを打ち消すという見方がされています。
 
インフレ率の見通しは、2025年が+2.0%から+2.4%、2026年が+2.0%から+1.7%とされています。IMFの見通しは日銀など各国の中央銀行関係者も参照しており、日銀も見通しを下方修正してくる可能性が高いです。そうなると、利上げのタイミングは後ろにずれ込むことになるかもしれません。

中国

 中国は、2025年が+4.6%から+4.0%、2026年も+4.5%から+4.0%に下方修正されています。この程度の修正で済むのか、そもそも最初の予想が高すぎたのではという意見もありますが、あくまで一つの参考値として受け止めるべきでしょう。

インド

 インドは、2025年が+6.5%から+6.2%に、2026年が+6.5%から+6.3%にやや修正されています。アメリカとの貿易関係がある程度ある中で、関税の影響は受けつつも、依然として主要国・新興国の中では最も高い成長率を維持する見通しです。

総括と今後の心構え

 ここまでIMFの見通しを見てきました。4月5日以降に出た関税関連の新情報を考慮すれば、中国・アメリカの成長率はさらに下方修正される可能性があります。
 貿易摩擦がエスカレートすることで状況がさらに悪化するシナリオもあれば、貿易交渉がまとまり、関税が引き下げられるような展開になれば、一気にマイナス影響が解消される可能性もあるでしょう。実際、トランプ大統領の一声で状況ががらっと変わる可能性がある以上、これらの予測はあくまで参考ととらえるのが妥当でしょう。

悲観論

 最近は世界経済を悲観的に見ている人が多くなってきたと私は感じています。もちろん、不透明な状況で楽観的になりすぎるのは良くありませんが、少し悲観的に偏りすぎているようにも見えます。トランプ政権の関税は、率だけでなく対象範囲も予想以上に広がっており、市場が動揺するのも当然です。しかし実際には、90日延期が決まったり、ムニューシン財務長官が中国との対立緩和について言及するなど、既に引き戻しも始まっています。

 元々、まず脅して交渉に持ち込むというスタイルは想定されていたため、必要以上に悲観的になりすぎるのもまたリスクと言えるでしょう。どちらに転んでも対応できるように、冷静に構えておくことが重要です。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


ご参考

トランプ政権の今後の見通し
 トランプ政権の関税政策がもたらした今回の株価下落。それは単なる一時的な市場の反応ではなく、アメリカ経済の構造的な問題や格差、そして政治のあり方にまで波及する重大な出来事です。

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