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インド株の下落要因とインド経済の今後の見通し


 インドの主要株価指数であるNifty 50は、2月も下落し、5ヵ月連続の下落となりました。これは1996年以来、約29年ぶりのことです。昨年9月のピークからの下落率は15%に達し、この期間のパフォーマンスは世界最悪となっています。
 昨年10月ごろからインド経済の厳しさが指摘されており、2月にはさらに詳しいデータが発表されました。この記事では、最新のインドの経済動向について解説します。

Nifty 50指数は、インドを代表する株価指数で、インド・ナショナル証券取引所に上場する銘柄のうち、時価総額、流動性、浮動株比率 等の基準を用いて選定した50銘柄の株価を時価総額比率で加重平均し、指数化したものです。

日本取引所グループ

インドの株価と為替の推移

 インドの株価は2024年9月末から2025年2月末にかけて、主要指数が下落しました。

  • Nifty 50:14.1%下落(9月の最高値からは約15%の下落)

  • SENSEX指数:13.1%下落

インドSENSEXとは
インドのムンバイにあるボンベイ証券取引所(BSE:Bombay Stock Exchange)に上場している同国を代表する主要30銘柄で構成される時価総額加重平均の株価指数のこと。インドを代表する株価指数で、1978~79年を基準値(100)として算出されています。「BSE Sensex」(Bombay Stock Exchange Sensitive Index)とも呼ばれます。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券

 この期間中、インドの株式市場は世界で最も悪いパフォーマンスを記録しました。また、為替市場でもインドルピーが下落し、10月以降5ヵ月連続で下落。ドルに対しては4.2%の下落幅となりました。

出所)Reuters(2025/3/3)

 株価と為替の両方が低迷していることから、インドの金融市場全体に厳しい状況が続いていることがわかります。

インド経済の成長率

 2025年2月28日に発表された2024年10–12月期の実質GDP成長率は前年同期比+6.2%となり、事前予想の中央値と一致しました。7–9月期の+5.6%を上回り、経済の回復が確認されました。インド経済に対する厳しい見方が広がる中で一定の安心感をもたらしました。

  • 民間消費:+6.9%(前期の+5.9%を上回る)

  • 政府消費:+8.3%(前期の+3.8%を上回る)

  • 農業生産:+5.6%(前期の+4.1%を上回る)

  • 輸出:+10.4%(前期の+2.5%を大幅に上回る)

 農村部の雇用拡大政策が影響し、農業生産が伸びました。輸出の増加も経済回復を後押しする要因となっています。

消費者物価の動向

 1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+4.3%となり、12月の+5.2%から低下しました。インドの物価は食料品価格の影響を大きく受けますが、特に野菜の価格が下落したことが物価安定の要因となりました。

インドでは1人あたりGDPが3,000ドルに満たないため、多くの消費者が収入の大部分を食品に費やしています。このため、食品価格の変動がインド経済全体に与える影響は非常に大きく、日常生活の負担が増加しています。

インド経済の現状と成長率鈍化の要因
  • 野菜価格の前年比上昇率

    • 12月:+26.6%

    • 1月:+11.4%(10月には+40.2%まで上昇していました)

 このところ天候不順などの影響で野菜価格の上昇が続いていましたが、1月はようやく落ち着きを見せました。

 先月ニコニコchでインド株とインド経済の悪材料について解説しました。中央銀行の金融政策、通貨安と資本の流出、その背後にある金の取引、金融課税などを説明しました。一旦公開終了にしていましたが、そこからインド株が大きく下落したということもあり、その動画を再公開しています。1カ月前に出した動画ではありますが重要なポイントは変わっていないので十分参考になるかと思います。

インド経済のリスク要因

 一方で、新たなリスク要因として、アメリカの「相互関税」政策が挙げられます。インドはアメリカに対して大きな貿易黒字を持っており、アメリカからの輸入は少ないものの、輸出は大きな割合を占めています。

インド共和国(Republic of India):主要貿易相手国
(1)輸出 米国、UAE、オランダ、中国、シンガポール、英国、サウジアラビア、バングラデシュ、ドイツ、イタリア(日本は第24位)
(2)輸入 中国、ロシア、UAE、米国、サウジアラビア、イラク、インドネシア、スイス、シンガポール、韓国(日本は第12位)

外務省

 インドは製造業中心の経済構造ではないため、貿易摩擦の影響は中国ほど大きくはならないと見られていますが、それでもアメリカの関税強化はインド経済にとって悪材料であることは間違いありません。関税が導入された場合、インドの株式市場の重しとなる可能性があるでしょう。

インドの経済成長の見通し

 インドの経済成長率は依然として相対的に高い水準にありますが、過去と比較すると伸びが鈍化しています。

  • 2010年代の成長率平均:6.6%

  • 2020年代の成長率平均:5.2%

 インド政府が目標とする8%成長の達成は難しくなっています。成長余地はまだあるものの、インドは大きな格差や民族問題を抱えており、経済成長の恩恵を受けていない地域が多いのが現状です。

格差是正に向けた政府の政策

 そこで、選挙で苦戦したモディ政権は、農村部や低所得層を意識した新たな支援策を発表しました。特に農業部門の支援を強化し、生産性の低い100の地域で1,700万人の農民に対する支援策を打ち出しています。農作物の買取制度の整備や、農業ローンの条件緩和などが含まれています。
 また、低所得者層への支援策として、年収12.75万ルピー(約22万円)以下の給与所得を無税とする制度を導入しました。これにより、最大3,000万人の過処分所得が10万ルピー(約20万円)増加すると見込まれています。

 消費を刺激する政策ではあるものの、これが実際に成長率の向上につながるかは不透明です。

インド経済の今後

 インド経済は今後も成長を続ける見通しであるものの、これまでのような右肩上がりの成長は難しくなっていると考えられます。
 経済成長とともに、民族問題や格差の問題も表面化しやすくなり、政治的な不安要素も増えていく可能性があります。インドの健全な発展にとっては避けて通れない道と言えるかもしれません。インド経済はそうしたフェーズに入ってきたと私は見ています。


ご参考

インド共和国

中央の紋章はチャクラ(法輪)と呼ばれる仏教のシンボル。3世紀頃のインドの神殿の柱に飾られていたもので、24の車軸は1日の時間を表している。初代首相のネールが全世界の自由と平和を目指して働き続ける新生インドのシンボルとして、この図柄を採用した。オレンジ色はヒンズー教、緑はイスラム教、白は両者の和解と平和を表している。 

東京都立図書館

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