米中関税交渉の進展とニコニコchの話
2025年5月12日、米中両国がそれぞれ90日間関税を115%引き下げることで合意したと発表され、市場は一気に楽観ムードとなりました。株式市場は大きく上昇し、4月9日の混乱時に見られた「米国売り」や米ドルの大幅下落といった動きも、現在はドル買い戻しへと転じています。
日本時間2025年4月9日午後時点で、日本の債券市場、特に超長期債が急落し、金利が急騰するという異例の展開となっています。これはアメリカの市場動向だけでなく、日本独自の需給構造の問題や証券会社の行動が複合的に影響していると見られます。
4月9日以降、トランプ政権は関税交渉の進展を積極的にアピールしており、市場も徐々に落ち着きを取り戻しつつあります。ただ一方で、「引き続きドルを売ろう」、「アメリカ資産を売ろう」といった声も根強く残っており、米国資産に対する見方は依然として分かれています。
マーケット参加者の声
今回は統計データではなく、私が実際に話を聞いたマーケット参加者の声をもとに説明します。あくまで私の周囲の限られた範囲での情報であり、マーケット全体の総意ではありませんが、機関投資家を中心とした印象をお伝えします。
結論から言うと、市場は一時的に楽観ムードにあるものの、「米国資産を売却し、アメリカ一辺倒だったポジションを分散させよう」という動きは依然として強く、そうした投資家が今も多い印象を受けます。
中国系ファミリーオフィスの動き
その中で特に目立っていたのが、中国系の富裕層の資産を運用する「ファミリーオフィス」の動きです。彼らは非常に大きな資金をドラスティックに動かす傾向があり、アメリカからアジア地域への資金移動を進めているという話をよく耳にします。
ファミリーオフィスとは
初期のルーツは1800年代までさかのぼりますが、当時は成功した初期の起業家の重要な財産を管理するために設立されたと言われています。家族の財政状態を直接又は間接に管理するために、家族によって設立される民間団体のことを指し、多くの場合、ファミリービジネスが成功した結果として蓄積する財産や資産を保有しています。
こうしたファミリーオフィスの資産を管理しているのが「プライベートバンク」と呼ばれる機関ですが、そこの担当者によれば、米国資産の売却が過去30年で最大規模となっているとのことです。そして、新規投資を控える動きも広がっているそうです。
欧州・日本でも続く米国資産の売却
こうした動きは中国系に限らず、欧州でも同様の声が聞かれています。5月12日に日本の財務省が発表した「対外及び対内証券売買契約等の状況」によれば、外国人投資家は4月に8兆2,130億円もの日本株・債券を買い越しており、日本を含むアジア諸国への資金流入が確認されています。
『対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース、週次・月次)』は、財務大臣から指定された銀行等、金融商品取引業者、保険会社、投資信託委託会社、資産運用会社(以下、指定報告機関)からの報告に基づいた、居住者・非居住者間の証券売買契約等の状況について集計した統計です。
実際に欧州や日本の投資家からも「米国から他地域へ資産を移している」との話をよく聞きます。こうした米国資産の分散には、ある共通した傾向が見られます。
米国売りを主導するリベラル派
それは、いわゆるリベラル派の投資家たちが中心になっているという点です。もちろん全体の傾向とは言い切れませんが、私の知人や関係者に話を聞く限り、そのような印象を受けています。
かつて、ESG投資などを重視するリベラル派の投資家たちは、バイデン政権下において「米国を中心とする世界秩序は揺るがない」、「米国資産には依然として魅力がある」という立場をとっていました。米国売りが語られる中でも、むしろアメリカを支持する声が強かったのです。
トランプ政権下でのリベラル派の転換
ところが、トランプ政権に移行し、保護主義的な関税政策が進められると、リベラル派の中で「アメリカ外し」の動きが目立ち始めました。マーケットが荒れるにつれ、「トランプ政権の政策が市場を不安定にしている」、「こうした状況下ではアメリカへの投資は控えるべきだ」という意見が3月〜4以降にかけて急増しています。
実際、米国の政治的リスクや「トリプル安」のような事象もあり、イデオロギーに関係なく、アメリカへの投資を見直す投資家は少なくありません。
欧州や日本の反応と今後の見通し
欧州ではマクロン政権がアメリカへの投資を控えるよう呼びかけるなど、特にリベラル志向の強い政府や機関が積極的に「米国離れ」を進めています。日本でも、リベラルな思想を持つ経営陣が多い機関投資家の間で、「トランプ政権は不確実性が高く、投資しづらい」といった声がよく聞かれるようになっています。バイデン政権下ではBRICS諸国を中心とした米国離れが語られていましたが、トランプ政権では、その主体が「欧米のリベラル派」に移りつつあるのです。
米国資産の代替が存在しない限り、急激な「アメリカ外し」は起こらないと思いますが、新たな米国売りの主導層が出てきたことで、緩やかな動きとして続いていく可能性が高いと私は見ています。
ニコニコchチャンネル1周年のお知らせ
最後にお知らせです。この5月でニコニコch開設1周年を迎えるにあたり、チャンネル名をリニューアルしました。もともとは「モハPここだけの話」という名前でスタートしましたが、「もっと深く学びたい」、「もっと難しくてもいいから経済やマーケットの背景を詳しく解説してほしい」といった要望が増えたことを受けて、チャンネルの方向性をより明確にするため、「モハPチャンネルPLUS」へ変更しました。
ニコニコchでは、テレビやYouTubeでは取り上げにくい経済や金融の本質的なテーマを、時には統計や投資理論を踏まえながら深堀りして解説しています。
5月18日には記念動画も公開予定
さらに、1周年記念企画として5月18日に特別動画を公開予定です。「日本の少子高齢化と今後の経済」という、非常に重くて大きなテーマです。
少子高齢化が進行する中で、日本経済がどのような道をたどるのか、そして私たちが今からどのような準備や考えをすべきなのか。解説します。今後ともよろしくお願いいたします。
ご参考
日本人が日本人のために情報を発信するにあたり、国産のプラットフォームがあった方がいいという思いから、今回ニコニコchのプラットフォームも活用していくことにしました。
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