見出し画像

スーダン内戦の整理とUAE支援の構図


 スーダン内戦は2023年から続いていますが、2025年10月には戦闘の激しいダルフール地方の病院で500人を超える人々が虐殺されたという報道も出てきていて、ますます悲惨な状況になってきています。23年以降すでに死者の数は15万人を超え、国連の推計では1,100万人以上が家を失って難民になったとされています。国によってはガザの報道が多くなることもあって、スーダンの内戦はあまり報道されていませんが、世界の中では同じくらい悲惨なことが進行しているということになります。

 このスーダン内戦で政府軍と戦っているRSFと呼ばれる軍事組織がありますが、このRSFがかねてからUAEの支援を受けていると言われています。日本ではほとんど触れられませんが、欧米のメディアではかなりの頻度で報道されている内容です。この記事では、スーダン内戦とUAEの関係について、背景を含めながら解説します。

出所)ngo-jvc.net

 最初に申し上げておくと、この内戦においてUAEが悪いと言いたいわけではありません。どっちが正義・どっちが悪という単純な図式では語れないのが現実で、背後には大国の思惑が複雑に絡み合っているという視点が必要です。

政府軍とRSFの武力勢力の対立構造

 スーダン内戦をわかりやすく整理すると、対立しているのは政府軍とRSFという2つの勢力です。

政府軍

 まず政府軍ですが、これは表向きこそ政府側を名乗っているものの、2019年に長期政権を敷いていたバシール元大統領がクーデターによって失脚した後、暫定政権を樹立して民主的な大統領選挙を行うという流れになっていたところに、武力で介入して権力を奪った組織です。政府の組織というより、力で国を我がものにした武装勢力という方が正確かもしれません。この政府軍を仕切っているのがブルハンと言われている人物です。

RSF

 一方のRSFは、ある意味でそれよりさらに厄介な存在と言ってもいいかもしれません。バシール政権の時代にはダルフール紛争という悲惨な戦争が続いていましたが、この紛争で最も過酷な虐殺行為などを行っていたのがジャンジャウィードと呼ばれる民兵組織です。国際社会からも非難されるような残虐な行為があったとされていて、紛争後このジャンジャウィードはバシール政権から準軍事組織として格上げされ、その時にRSF(ラピッド・サポート・フォース)と呼ばれるようになりました。

 余談ですが、先日フランスの銀行BNPパリバが制裁違反によって賠償金の支払いを命じられたというニュースがありましたが、これはまさにこのダルフール紛争の時代にBNP銀行がバシール政権と金融取引を行っていたという問題です。つまり、今回の内戦の背景には長い歴史があり、大国を巻き込んだ資金・権益の流れが深く根付いているということが分かります。

UAEがRSFを支援していると言われる理由

 なぜUAEはRSFを支援していると言われているのか。

 その大きな理由の1つが「金の取引」だとされています。スーダンは昔から金の産出国で、ダルフール紛争で力を持ったRSFは国内の金鉱山を掌握し権益を確保しました。これをお金に変換する方法としてUAEへの輸出が使われているとされ、RSFの幹部の親族がUAEを拠点に運営している会社を通して取引が行われていると見られています。UAEには合法と違法の境界が曖昧なプレイヤーも多く存在し、ブラックマーケットも含め金取引の中心地になっているという指摘もあります。

 UAEがRSFと関わっているのは金だけが目的ではありません。アフリカでのプレゼンス拡大という狙いも大きいと見られています。スーダンはアフリカ大陸の東側にあり地理的にもUAEと近く、イスラム圏の国ということでUAEとしては以前から影響力を強めていきたい地域でした。バシール政権時代から欧米が制裁姿勢をとっていた時期でも、UAEは裏でバシール政権への投資を続けてきたと言われています。スーダン国内の利権をUAEが多く握っていると言われるのはこういった背景によるものです。

スーダン共和国首都ハルツーム
出所)外務省

 さらに、ロンドンの中東専門メディア「ミドルイーストアイ」などによれば、中国製の武器がUAE経由でRSFに渡っているとの報道もあります。政府軍の方が兵力も物資も優位だったはずなのに、2年以上にわたって戦闘が継続している現状を見ても、軍事支援を受けていると考えるのが自然だとされています。輸送ルートはソマリア経由と報じるメディアもあり、極めて複雑なネットワークが存在していることがうかがえます。

出所)middleeasteye.net

政府軍の支援

 ちなみに政府軍側を支援しているのはエジプトとトルコです。

 トルコは2020年代に入ってアフリカでのプレゼンスを急速に拡大していて、2025年にはアフリカとの貿易額が400億ドルを超える見通しと発表されています。この中には武器輸出も多く含まれていると見られていて、スーダン内戦もその影響下にあると言っていいでしょう。
 エジプトについては同じイスラム圏でスーダンからすれば昔から兄貴分のような存在で、政府軍の支援として兵を派遣したこともあります。

ロシアの立場

 さらにロシアは政府軍とRSF両方と取引をしていると言われています。

増え続ける難民と世界の無関心

 こうした背景を踏まえると、スーダン内戦が単純な国内問題ではなく、大国の利権・思惑の衝突の舞台になっていることが見えてくると思います。欧米が手を引いていた地域でもあり、日本で報道される機会は極端に少ないですが、日々悲惨な状況は続いています。人口5,000万人のうち1,100万人以上が家を追われているという数字は、世界的に見ても異例です。この難民の波が近隣国に押し寄せていて、飢餓や医療崩壊の問題も深刻化しています。

 アメリカの世界でのプレゼンスが落ちてきく中で、UAE、トルコ、ロシアといった国がプレゼンス拡大を狙い、その狭間でスーダン内戦が続いているといった構図とも言えるでしょう。その裏側で犠牲になっているのは一般の市民であり、難民として生活基盤を奪われている人々だということは忘れてはいけません。

 シリアの難民問題は、単なる数字ではなく、一人一人に人生があります。ハッサン兄弟との思い出は、私にとって難民問題を考える大切なきっかけとなりました。

シリア難民の現状と私の身近なシリア難民の話

 世界で何が起きているのか日本では見えにくい部分でもありますが、こうした国際情勢も引き続き注視していきたいと思っています。


ご参考

人口減少において何が問題なのかというと、国の存続や国際社会でのプレゼンス維持に関わる点です。UAEには約6万人の軍隊がありますが、これはすべてUAE国籍者で構成されています。隣国イエメンでの内戦や、海を隔てたイランの存在を考えると、国防は非常に重要です。

UAEの出生率低下に見る中東の少子化問題

サイトマップ(目的別)はこちら

いいなと思ったら応援しよう!