人魚裁判所(609字)|毎週ショートショートnote
人魚裁判所
今まさに、人と魚が争っている。
後に「人魚裁判」と呼ばれ教科書にも載ることになる裁判だ。
種を超えて争われた初めての裁判だった。中立を保つために「人魚裁判所」で行われ、裁判官は、鳥類から孔雀が選ばれた。
きっかけは人間が、象やイルカ、さらには鳥までもが言葉を操ることを知ってしまったこと。人間の好奇心は果てしない。ほどなく翻訳アプリが開発された。
さらに、魚類も独自の言語を持っていることが発見された。
聞かないほうがよかったかもしれない。
知らぬが仏。知るということは、踏み込む覚悟が必要だということを忘れてはいけない。
案の定、魚たちから人間に対する不満が噴出したのだ。
おもに、人間のネーミングセンスにもの申したいというもの。
裁判にまで発展した。これが史上初の「人vs魚裁判」だ。
原告の訴えは切実だ。
「おじさんじゃないもん」
ぱくぱくと口から泡が立ちのぼる。おじさんのひげがぷるぷる揺れて、少し遅れて翻訳機がかわいい声をあてる。
「うっかりとは!失礼な!」とウッカリカサゴ。
傍聴席から小さく笑いがもれる。
キタマクラが呪うような視線でにらみつける。
「偽って呼ばないでくれるかな」とニセクロホシフエダイ。
「そうだ!そうだ!」とタナゴモドキ、マハタモドキ。
「弱くないよ」と小さい声で鰯が言う。
キャットフィッシュ、メガネモチノウオが拍手を送る。
念仏鯛が「ぼくは結構気に入っているよ」と一言。
孔雀が木槌をトンとならして、羽を閉じたところで本日の審理は一旦閉廷。判決は先送りとなった。
今週は難しかった~。今回は特に引きずられちゃいそうなので、先に読むのは封印。これでやっとみなさんの作品が読める🥰
8月も毎週参加を目指しています!
ちなみに、「人魚裁判所」の正式名称は「人類魚類共同高等裁判所」です。
