「聖地だからできる」で終わらせない。オガール祭りで感じた、地方が見習うべき公民連携の姿勢
こんにちは!宮本です。
地方で経営不振に陥っている温泉やサウナの経営を引き継ぎ、再建・運営をしています。
三重県いなべ市で、交付金を活用した温泉再生プロジェクトのいなべ阿下喜ベースに取り組んだことをきっかけに、現在は、都市経営プロフェッショナルスクールに入学。11期生として、行政リテラシーや公民連携(PPP)について学びを深めています。
今日は、公民連携の事例として日本で一番有名ともいえる、岩手県紫波町の「オガール」までやってきました。年に1度の「オガール祭り2026」、同時開催の「スポーツ環境デザインサミット」を体感するためです!

名古屋から岩手への移動というと「大移動」のように感じるかもしれませんが、僕の住む三重県いなべ市からだと、実はかなりアクセスがいいんです。
いなべ市(車:50分)➡ 名古屋小牧空港(フライト:60分)➡ 花巻空港(車:30分)➡ オガール
トータルの時間距離は、なんと約2時間30分!僕のグループ会社のオフィスのある埼玉県の大宮に行くよりも、よっぽど早くて楽に移動できます。
今回も、地方創生やまちづくりにおいて「ハコモノではなく、人が集まる仕組みをどう作るか」に悩むすべての方に向けて、現地で掴んだ生のヒントをレポートします。
そもそも「オガール・プロジェクト」とは?
オガール・プロジェクトは、民間企業(岡崎正信さん)が岩手県紫波町で15年前から取り組んでいる、補助金に頼らない「公民連携(PPP)」の先駆的なまちづくり事業です。
町有地だった駅前の土地に、役場や図書館、民間テナント(産直・ホテル・バレーボール専用体育館など)が組み合わさった複合施設と、美しい芝生広場が広がっています。今でいう「都市型公園」の先駆的事例とも言える場所です。
書籍もたくさん出版されているので、まだ知らない方はぜひ読んでみてください。
表には出ない「泥臭い裏側」が明かされた、スポーツ環境デザインサミット
今回はオガール祭りに合わせ、「スポーツ環境デザインサミット」というシンポジウムも同時開催されていました。
紫波町(人口3万人/バレー・サッカー)、北広島市(人口5万人/野球)、野沢温泉村(人口3千人/スキー)という、スポーツを軸にした地域活性化に取り組む3つの地域が合同で行うディスカッションです。人口規模も取り組む競技も異なるエリア同士による、非常に珍しい座組の討論でした。
今回のテーマは、《スポーツを「コンテンツ」から「コンテキスト」へ。》
単なるイベント(コンテンツ)としてのスポーツではなく、まちの文脈(コンテキスト)としてどう根付かせ、新たなエコサイクルを創り出すのか。広島、野沢温泉、そして紫波のリーダーたちが一堂に会し、これからの日本のスポーツ環境をデザインする熱い議論を交わします!
✔注目の登壇者
• 小川 太郎 氏((株)ファイターズスポーツ&エンターテイメント開発本部 エリア開発部 部長)
• 川村 裕樹 氏(北広島市副市長)
• 上野 雄大 氏(野沢温泉村 村長)
• 河野 健児 氏((株)野沢温泉企画 代表取締役)
• 鎌田 千市氏(紫波町長)
• 岡崎 正信((株)オガール 代表取締役)
• 松田 裕雄 氏(モデレーター:Waisportsジャパン代表)
このサミット、まずは登壇者全員が「日本酒で乾杯!」してからスタートします。トーク中も随時日本酒が注がれていくスタイル(笑)。だからこそ、すでに世の中に広がっている綺麗な情報ではなく、あらゆるプロジェクトの「リアルな裏側」が次々と明かされていきました。
登壇されていた自治体側の方々は、皆さんしっかり実務を経験してから当選された首長や、その右腕として最前線で実務を回している方ばかり。そのため、綺麗事の「成功談」よりも、「何がどう大変だったか」という泥臭い話に華が咲きます。こうした場所でしか聞けない生々しい話が多く、感心させられることばかりでした。

特に記憶に残ったのは、北海道北広島市のスタジアム(エスコンフィールド)建設の裏側です。
工事期間中にコロナ禍が直撃した当時、「職人さんから陽性者が出たら、現場が止まり、工期が伸びる」ことが最大の懸念だったそうです。工期が伸びれば人件費が膨らみ、工事費用が莫大になってしまう。そこで北広島市は、予算を組んで職人全員のPCR検査を実施。「絶対に納期を伸ばさない」という強い意志で取り組んだとのことでした。こうした行政の「覚悟の伴走」こそが、ビッグプロジェクトを支えているのだと痛感しました。
「稼がないはずの芝生広場」が、稼ぐ引力の中心になる
サミットが終わると、いよいよ芝生広場でオガール祭りがスタートします。会場を出ると、広場に建てられた巨大テントにはすでに人が溢れ返り、出店やキッチンカーが活気に満ちていました。


平日の17時スタートにもかかわらず、200人は入るであろう巨大テントは早々に満席。飲食店やキッチンカーには長い行列ができています。
特に印象的だったのが、鯖を1匹丸々炭火で焼く「サヴァ祭り実行委員会」のブース。これは、これまで紫波町に関わったことのある行政職員や民間の有志たちによる「ボランティア出店」なのだそうです。大好評で、なんと30分待ちの列ができていました。

また、屋内にはキッズエリアや輪投げなどの出店もオープンしており、家族連れでも安心して楽しめる環境が整っていました。
本来であれば「稼がない空間」であるはずの芝生公園が、これほど多くのエリアから人を集め、圧倒的な熱気の中心地になっている。その光景には、ただただ感動させられました。
民間が主役で生む熱量と、それを黒子として支える行政
僕はこれまで多くの公民連携事例に携わってきましたが、自治体側から持ちかけられる「民間の力を借りたい」という話のほとんどは、単なる「民間への丸投げ」か、自分たちのメリットしか考えていないやり取りばかりです。正直、ただの受発注業務であるにもかかわらず、実績作りのために無理やり「公民連携」「官民連携」という名前を付けているケースも少なくありません。
しかし、今回のオガール祭りは全く違いました。
民間が主導してクリエイティブな企画内容を考え、自治体は「予算を組んで実施する領域」と「民間でサービスを提供する領域」を見極め、それらがシームレスに融合していたのです。
巨大テントの整備や、お祭りのチケットを「ふるさと納税」の返礼品として販売する仕組みなど、まさに「自治体にしかできない役割」を完璧に全て全うしている姿に、深く感心させられました。

オガール祭りで本質的に学べるのは、「民間主導の提案に対し、自治体は徹底して支える側に回っている」という構造です。主役はあくまで民間であり、自治体は黒子。
血気盛んな自治体職員ほど、「自分も関わりたい」という想いから主導権(イニシアティブ)を取りたがってしまいがちですが、民間の業務範囲にまで行政が口を挟むのは、現場を硬直させるだけです。(それをやりたいのであれば、役所を辞めて民間へ転職してからやるべき、とすら僕は思います。)
おそらく、これまでオガールに視察に来た多くの自治体は、「芝生を中心にした建物を綺麗に整備すればいい」「民間の人気テナントを入れれば流行る」といった、ハードや表面的な要素だけを真似しようとして失敗してきたのではないでしょうか。 我々の現場に視察に来るメンバーを見ても、議員や設計コンサル、建築会社がメインで、実際に現場をまわす「運営会社(プレイヤー)」が不在であるケースがよくあります。
地方創生の現場でいま最も求められているのは、みずからリスクを背負いながら現場を泥臭く運営する「民間のリーダーシップ」です。
オガールのあの圧倒的な賑わいを自分の地域で再現したいのであれば、まずは「地元でまだ埋もれている、本気の運営会社(プレイヤー)」を見つけ出すこと。そして、そのプレイヤーと一緒にオガールを視察すること。
ここから始めることこそが、本当の意味での「公民連携」の第一歩なのだと、今回の視察を通じて確信しました。
僕も、都市経営プロフェッショナルスクールの先輩と、お揃いのオガールのタンブラーを買いました!この熱量を、自分の現場にも持ち帰って活かしていきます。

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